今年度の研修の方向性を考える

昨日の日記の続きです。

英語の新人は、充分な経験のある方です。この日は高校1年生の授業を参観しました。
よい表情で子どもたちに接することができる方です。この学校で進めているアクティブ・ラーニングに対しても前向きにとらえています。
子どもたちの反応や答に対して「いいですねー」「そうですねー」と受容することができます。ところが、授業者が質問に対して反応を待っていても、子どもたちはじっとして動きません。授業者が答を言ってくれるのを待っているのです。おそらく、中学校で誰かが答えてくれるのを待っていた子どもたちなのでしょう。仕方なく授業者が説明を始めてしまうので、それで過ぎていってしまうのです。まわりと相談させたりして、まず子どもたちを動かすことを考える必要があります。
「3人称単数現在だから”s”がつきます」といったことを言葉で言って終わりますが、「3人称単数現在は動詞に”s”がつく」という知識を覚えても、実際「3人称」「単数」「現在」「動詞」ということがわかっていなければ使うことができません。“Do you like dogs?” “Yes.” “Oh, you like dogs.” “○○san likes dogs.”というように、一つの動詞を使って”contrast”をつけながら主語を変えて子どもたちと対話する、逆に主語を固定して動詞を変えて対話するといった、言葉として使う場面で確認することが大切です。
授業者は”natural speed”で子どもたちに英語を話しかけますが、それではなかなか聞き取れません。少々遅くてもいいので、子どもたちが理解できることを優先して一言一言、丁寧に話すことを心がけてほしいと思います。
この先生に限らず、英語ではCDや授業者の発声に続いて”repeat”することが多いのですが、文を読む練習なのか、耳で聞いて発音を覚えるのかといったねらいを明確に意識して進めることが大切です。読む練習であれば、師範の音読を途中で止めて読ませなければ、読めるようになっているかわかりません。聞くことを優先するのであれば、テキストはいらないでしょう。同時にすることによって、聞き取れなくても文字から想像する、読めなくても聞くことによって発音できるということになります。それでは、どちらも中途半端になってしまいます。同時にできるのは、ほぼできるようになっている、レベルの高い子どもたちだけです。
子ども同士で、決められたパターンの英文を使って会話する場面では、子どもは言えたことに満足します。言いっぱなしでいいのでテンションが上がります。これはコミュニケーションではありません。自分の言葉が相手に伝わることが大切です。あらかじめ決められた言葉をしゃべるのではなく、相手の言葉を聞かなければ、次の言葉が出てこないような形のやり取りにする必要があります。 簡単な例ですが、”What do you like?” “I like ○○.”に続いて、“Oh, I like ○○, too.” “I don’t like ○○.”を選ばせるといったものです。ここで、必ず”○○”を言うことをルールにすることで、相手の言葉をしっかりと聞き取る必然性が生まれますし、言ってもらうことで伝わったという実感が得られるのです。
“something”を日本語で説明します。言葉ではなくその言葉が使われる”situation”で理解させることが必要です。”something” “anything” “nothing”を”contrast”つけてきちんと理解させる場面がどこかでほしいところです(もちろんこの授業時間内では無理なのですが……)。
現在進行形も日本語で「be動詞+ing」と形を説明します。英語の時制は日本語とはかなり異なったものですから、形式的に説明しても理解できません。これもきちんと”situation”で理解させることが必要です。
結局、授業者の説明時間が多く、子どもたちが英語をしゃべる時間があまりありません。それも、ほとんどが与えられたものを読む、手本に従って繰り返す、覚えた文をそのまましゃべるといったものです。自分が伝えたい”situation”を英語にすることがないのです。どんな拙い文でも、伝えたいことを自分で言葉にすると、子どもたちは英語を「しゃべった」と充実感を持つのです。このことを意識してほしいと思いました。
授業者は、真剣に子どもたちを”active”にしたいと思っていました。素晴らしいことです。この学校の英語では、そういった授業をたくさん見ることができます。他の先生の授業を見ることで、どのようにしていけばよいかわかってくると思います。そのような機会を持っていただくことをお願いしました。

この日は1時間ほど、高等学校全体の様子を観察しました。3年生は落ち着いて学習に取り組んでいます。2年生もよい状態だったのですが、昨年度末と比べるとちょっと集中力が落ちているようにも思いました。一時的なものである可能性も高いので、今後の変化に注目していきたいと思います。1年生は、この時期にしては集中していない子どもの姿が目立ちました。たまたま、講師の方の授業が多かったのですが、これが授業者によるものなのか、今年の1年生の特徴なのかは注意して見る必要があると思います。
昨年からの課題として、この学校で進めている授業改善への動きに講師の方がついていけていないということがあります。今年度は昨年度以上に講師の方が増えているようなので、対応策を考える必要があります。

この2年間で先生方の授業改善への意識は高まってきました。それぞれの授業でいろいろな工夫がみられるようになりました。しかし、まだ一部の教科を除いて、チームや教科としての動きにはなっていません。今後はこういった工夫を共有して、この学校のメソッドとして明確なものにしていくことが必要だと考えます。研修担当の分掌の主任や先生方と相談して、この点を意識して今年度の研修を考えていただくことになりました。

最近は訪問するたびに、何人かの先生が相談に来てくださいます。この日も、アクティブ・ラーニングについて自分の考える方向性でよいのかと相談してくださった方や、実際の場面での具体的な課題についての対応について質問してくださった方がいました。こうした相談に乗ることは私にとってもよい学びになります。充実した1日を過ごさせていただきました。
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