研修の意味を考える

現在、介護関連企業の職員向け冊子を制作しています。介護に関する基礎知識とその企業の介護スタイルが書かれたものです。基礎知識については、専門スタッフに教えていただきながら私が執筆しています。私の専門外のことなのでそれなりに勉強が必要なのですが、これがなかなか面白いのです。いくつになっても新しいことを知ることはワクワクする体験なのですね。
とはいえ、素人の書いた物ですからプロの目でチェックしてもらうことが必要です。そこで3月からの研修は、毎回私の書いたものを皆さんに読んでいただき、意見や感想を聞く場にしました。その上で、その内容に関連して皆さんが日ごろ意識していることや実践していることを互いに話し合っていただき、それをもとに介護スタイルをまとめるのです。

3月、4月は「高齢者の特性」がテーマでした。
「廃用症候群」「脱水症」「低栄養」「認知機能の低下」「高齢者のよくかかる病気」などについて、私の記述をもとに日ごろ意識していることを聞き合って発表してもらいました。
皆さんが日ごろの実務で意識していることは、私のような門外漢にはなかなか気づけないことばかりです。私にとって参考になるだけでなく、参加している皆さんにとっても有益な情報です。仲間の意識していることを聞いて刺激を受けたり、参考にしたりすることはとても大切なことです。日ごろは忙しくて余裕がないためこのような時間をとることができません。研修にはこのような時間を確保する意味があります。

このことは学校現場にも通じることです。先生方は忙しいので、日ごろ授業や学級経営について聞き合う機会がなかなかありません。授業研究などの現職教育はその数少ない機会の一つです。そのことを考えると一部の方が発言するのではなく、できるだけ多くの方が考えを語り、それを聞き合うことが大切になります。私が授業研究のコーディネートを依頼されると、グループで聞き合う場面を入れるようにしているのはこのことが理由です。もう一つ意識しているのは、授業や学級経営について聞き合うのは楽しいことだと思っていただくことです。先生方も子どもたちと同じで、わからないことを聞くのには勇気がいるものです。気軽に聞きあえる関係を職場につくることが大切です。そういう雰囲気づくりも研修のねらいの一つなのです。

私がこの介護関連企業の研修を引き受けたころは、参加された皆さんの口は重く、グループになってもなかなか気軽に話すことができませんでした。しかし、今では部門が異なっていて日ごろ接触の少ない方同士でも、よい表情で互いの考えを聞きあえるようになっています。こういった機会を持つことが意味のあることだとよくわかります。職場のコミュニケーションが大切ということが言われますが、そのためには互いの関係をつくる機会を意図的につくることが必要です。このことは職場だけでなく教室でも同じことです。子ども同士がよい形でかかわり合える場が必要なのです。

自分のホームグラウンドでないところで仕事をすることで、こういったことを改めて意識することができます。よい機会をいただいていることに感謝です。
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