学級会も、大切なポイントは普通の授業と同じ

昨日の日記の続きです。

学級会の授業研究は、若手の2年生担任の学級で行われました。
子どもたちはとてもよい表情で、いい雰囲気の学級です。担任と子どもたちの人間関係がよいことがわかります。
「最高のクラスに向かって」という学級の掲げるテーマを確認して、この日の目標を「一人1回は意見を言う」と設定しました。この目標は悪いことではありませんが、この学級会自体の目標が明確ではありません。学級会を開きたかったのは担任なのでしょうか、それとも子どもたちだったのでしょうか。担任に確認したところ、「最近子どもたちが少し緩んできていると感じたので、子どもたちにもう一度自分たちの行動を考えてほしいと思った」とのことでした。担任の口から説教するのではなく、子どもたち自身で考えてほしいと思い、学級会の形を取ったのでしょう。であれば、子どもたちにもっと学級をよくしたいという気持ちを持たせる場面が必要になります。

最初に、学級のよくなったところを子どもたちに発表させます。よくないことを言わせるのではなく、よいことを言わせるという発想はなかなかです。「悪いところを直しましょう」ではなく、よいところを確認して、「もっとよくするためにどうするとよいかを考えましょう」という展開です。
子どもたちを指名して答えさせます。「3分前着席。三役以外が声かけしている」「どんな行事でも全力で取り組める」「明るい」「切り替えができる」と子どもたちから出てきますが、一つひとつを学級全体に確認しません。すぐに「他にあります?」と進めますが、ここは全員で自分たちのよいところを共有したいところでした。
続いて、「学級のよいところを元に、素敵なキャッチフレーズをつくろう」という課題を提示します。4人グループで相談して一つに決めて発表させます。これはちょっと唐突です。何のためにキャッチフレーズをつくるのかが明確でないのです。担任としては、なかなか発言できない子どもに機会を与えたかったようですが、目標が明確でないため、思いつきで発言します。子どもたちのテンションは上がっていきました。楽しそうにグループで考えたキャッチフレーズを発表していましたので、雰囲気づくりには役に立ったようには思います。

ここで、「今回は、いいところをさらによくするための学級会をします」と子どもにバトンタッチをして学級会が始まりました。「さらによくする」必然性が見えてきません。学級のテーマである「最高のクラス」というキーワードを元に、必然性を持たせる必要があったと思います。4月当初に「最高のクラス」とはどのようなものか具体的にしているはずですから、その確認をして、「いいところをたくさん言ってくれたけれど、最高のクラスになったかな?」と子どもたちに問いかけて、もう一息であることを気づかせてから、学級会に移るとよかったと思います。

司会の子どもたちが、今よりも最高のクラスに近づけるように挨拶、掃除、仲間の3つのテーマについて話し合っていくことを伝えます。最初に最高の挨拶をするために普段から心がけていることをワークシートに書いて発表をします。担任は机間指導をしながらよい意見に○つけや朱書きをして発表しやすいように支援します。ここで気になるのは、子どもたちが考えて発表するのが「今やっていること」ということです。これは一つ間違えるとやっていない子どもに「同じようにやりなさい」と強制することにつながります。そうなると、学級が息苦しくなる子どもが出てくる可能性があります。
子どもたちは自分の心がけていることを理由も含めて発表します。「教室移動の時にすれ違った先生に挨拶をする。理由はそうするとまわりの人も挨拶するから」「相手よりも先に挨拶をする。相手の挨拶をしたい心を揺さぶるから」……といった、他者への影響を意識している発言がいくつか出てきます。中に、「友だちと挨拶の声の大きさを競うのがいいと思います」という発言がありました。これはもう、自分のやっていることではなく、学級のみんなへの提案です。一人ひとりが個人としてやっていることを聞きあって、自分もやろうと思ってもらう場面なのか、学級全体として何かをやろうとしているのかがはっきりしません。また、とても素晴らしいことをいう子どもがいると、ささやかなことだと言いづらくなってしまいます。特定の子どもに発言が偏りだしました。ところが、仲間に対しての発表ではちょっと様子が違っていました。先ほどまでと違った子どもたちが挙手します。担任が積極的に声をかけ朱書きをしたこともあるのでしょうが、仲間に関することは挨拶や掃除と違って、自分が意識していることを言いやすかったように思います。「ありがとうを言うようにしている」「相手に悪いことをしたらすぐにあやまる」「たくさんしゃべる」といった、飾らない言葉がたくさん出てきました。

担任は、子どもたちの発表の様子を教室の隅から見守っています。発表者に向かって笑顔でうなずいて、子どもの発表を後押します。こういったところに、この学級の子どもたちと担任の関係のよい理由があるように思いました。

最後に子どもたちから出てきた、日ごろ心がけていることの中から、学級として心がけることを一つずつ多数決で決めます。「相手よりも先に挨拶する」「責任を持って掃除をする」「自分から積極的に仲間と話す」に決まりました。
最後は多数決で決定しましたが、それでよかったのか疑問が残ります。自分が心がけていることを紹介したのであって、必ずしもそれをみんなにやってほしいと思って発表したわけではありません。一つひとつの活動が微妙にずれているように思います。明日からの子どもたちの行動を変えさせたいのであれば、学級で取り組むことを決めることよりも、友だちの発表を聞いて自分にやれそうなことを一つでもいいから実際に実行することの方が、意味があるようにも思います。多数決ではなく、自分が明日からやれそうなことを宣言するといった終わり方もあったと思います。

こうして学級会を見せていただいて思うのは、例え子どもが司会するのであっても、大切なポイントは普通の授業と変わらないということです。授業者が学級会を通じて子どもにどうなってほしいのか意識して、子どもたちのゴールを設定し、活動を組み立てる必要があります。活動のゴールや目標を明確にし、見通しを持たせることができれば、例え子どもが司会をするのであっても、話し合いが成立すると思います。この研究授業を通じて、大切なことを学ぶことができました。

授業検討会では、担任の支援やテーマ、授業の進め方についてしっかりとグループで話がされました。先生方が子どもたちの様子をよく見ていると思いました。
私からはこの授業についてのコメントの他に、昨日の日記にも書いたように、子どもたちが落ち着いて授業に参加できるようになったからこそ、次の段階に向かって授業を工夫してほしいことを伝えました。

この日は、懇親会にも招待していただきました。多くの先生方から授業についての質問や相談、そして子どもたちの様子についての報告をいただきました。先生方が自分の授業をよくしたいと強く思っていることが伝わってきます。先生方の前向きなエネルギーに触れて、たくさんの元気をいただきました。このような機会をいただきうれしく思います。ありがとうございました。
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