私学で子どもたちのポテンシャルを感じる

私立の中学高等学校で、授業アドバイスと研修を行ってきました。

全体的には、よい状態が続いています。子どもたちが積極的に授業に参加している姿をたくさん見ることができました。また、若手の先生方が何を意識して授業しているのかがよくわかる場面にたくさん出会えました。授業をよくしようという意欲を感じることができます。

体育の授業をいくつか見ることができました。
高校1年生の男子のバスケットボールの授業では、子どもたちは積極的に体を動かしていました。しかし、グループでの活動でかかわり合いが少ないと感じました。互いにアドバイスをしたり、上手くいった時に「ナイス!」といった声をかけたりしないのです。授業者はその点に気づいて声を出すように指示をしましたが。その時はやれるのですが、すぐに元に戻ってしまいました。プレイにおける具体的な目標や、ポイントを意識させると同時に、チームとしての目標を明確にしておくことが大切でしょう。まだ1年生ですので、これからいろいろな場面でこのことを意識して、子ども同士のかかわり合いをふやすようにしてほしいと思います。
高校3年生の男子のバレーボールは、試合の場面でした。さすがに3年生です。それなりに試合になっています。感心したのはよく声が出ていることでした。また、ミスをした子どもに対して、笑い飛ばせる雰囲気があったことも素晴らしいと思いました。つまらないミスが出ると、勝ちたい気持ちの強い子どもからブーイングや心無い言葉が出ることがあります。そういった言葉を子どもたちから聞くことはありませんでした。よい学級だと思いました。後から授業者に聞いたところ、人間関係も考慮してチーム編成をしているとのことでした。こういった細かい心配りが、試合の雰囲気をつくっていたのだと感心しました。

高校2年生の英語で、探査機はやぶさについての教科書の本文を使った発表会を参観しました。グループで、教科書の本文から1章をピックアップして発表するのですが、その内容に合わせたスライドをつくって、それを見せながら読み上げます。英語によるプレゼンテーションです。授業者は自ら英語でMCをして、雰囲気を盛り上げます。子どもたちは緊張しながらも一生懸命です。まだまだたどたどしいのですが、終わった時のやり終えた感が伝わってきます。空き時間の先生方が何人も参観していました。授業者が発表会をやることを伝えて参観をお願いしたそうですが、それに応えてくれる先生がいたことをとても感激していました。もちろん子どもたちも、多くの先生方が見に来てくれてやりがいを感じていたように思います。
素晴らしいと思ったのが聞いている子どもたちの態度でした。とても真剣です。発表が終わった者、これからの者も関係ありません。友だちの発表が終わると緊張が弛むのが伝わってきます。それだけ集中していたということです。友だちの発表の簡単な評価をすることだけでは、このような集中は生まれません。授業者に聞くと、事前にいくつかのグループで合同の事前発表会をして、改善点などを意見交換したそうです。グループ同士でかかわり合ったのでの、発表に集中したのかもしれません。子どもたちのよい姿を見せてもらいました。

英語は一部習熟度別を取り入れています。2年生の下のクラスの授業でとても興味深いことが起こっていました。一部の習熟度の高いクラスでは、高校生向けに英語で書かれた小説をテキストにして、自分たちで要約するという課題を与えていました。下位のクラスではとてもそんなことはできないと思っていたそうですが、試しにと同じような課題を与えてみたそうです。読みを助けるために、単語や語句の意味、ポイントをまとめたものも一緒に与えました。上位のクラスよりも、手厚いものを用意したようです。驚いたことに、子どもたちはわき目もふらずに課題に取り組んだそうです。辞書を引くことも困難な子どもたちですが、助けになるものがあれば集中して取り組むことができるのです。この日はその2回目でした。私の目にも集中して取り組んでいるのがよくわかります。最初だけかと思ったそうですが、そんなことはなかったようです。中に一人、手持ち無沙汰にしている子どもがいました。「やはり手のつかない子どももいるんだなあ」と思ったのですが、驚いたことに、その子どもは既に与えられたところをすべて読み終っていたそうです。次の課題がまだ準備できていなかったので、することがなかったのです。子ども同士で要約を見あったりさせることで、かかわり合って活動を始めました。
この授業者と子どもたちの関係といった特別な要因がこのクラスにあったからこのようなことが起こったのかもしれないと思ったのですが、そうではなかったようです。他の先生が担当している下位のクラスでも同じ課題を与えたところまったく同じような状態だったようです。彼らでは無理だというのは先生の思い込みで、実際には課題等を工夫し、条件させ整えればしっかりと学習に取り組むのです。具体的な要因としては、子どもたちが面白いと思える内容の話だったこと、読み解くために必要な材料があらかじめ用意されていたことが大きいと思います。また、子ども同士が気軽に聞きあえる関係が、英語だけに限らずいろいろな場面で育っていたことも大きいでしょう。できない、やる気がないように見える子どもたちも、「やってもできない」と思っているから無気力になっているだけなのです。「やれそうだ」「おもしろうそうだ」と思えれば、集中して取り組むのです。課題ややり方を工夫することで、子どもは全く違った顔を見せてくれるのです。先生方はあらためて子どもたちのもつポテンシャルに気づいたようです。とてもよいものを見せていただきました。

この日は、先生方の空き時間に、希望者を対象に「アクティブ・ラーニング」の研修を行いました。前回参加した方も今回初めての方もいらっしゃったので、簡単に「アクティブ・ラーニング」の考え方を説明し、子どもが自ら課題を見つける、主体的に取り組むといったことについて社会科を例にしながら、具体的にお話させていただきました。多人数での研修ではないので雑談めいたものになりましたが、いっそのこと先生方が今取り組んでいること、悩んでいることなどを相談し合う場にすればよかったと反省しています。授業改善に取り組んでいる先生方も増えているので、そういった情報交換も含めて、先生同士で気軽に授業について話ができる雰囲気づくりを今後目指したいと思います。

学校の中でいろいろな変化がどんどん起こっています。その変化が子どもたちのよい姿につながっているように思います。この日も、子どもたちの姿からたくさんの元気をもらいました。先生方と子どもたちが一緒に成長しているように感じます。これからどのようなよい変化が見られるのかとても楽しみです。
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