保健と体育の授業で考える

中学校で授業アドバイスを行ってきました。
学校の様子は、1年生については前回と比べて大きな変化は感じませんでしたが、3年生の教室では落ちつきが少し増しているように感じました。2年生は授業者による態度の変化が小さくなっていたように感じました。少し見ただけなので何とも言えませんが、何か変化するきっかけがあったのかもしれません。次回訪問時にじっくり見て見たいと思います。

この日は保健・体育の授業をたくさん見せていただきました。体育はどの授業でも子どもたちの集団行動がしっかりできていると感じました。授業者は座っている子どもに対して目線を下げて、視線を合わせることを意識しています。こういったことが子どもたちとの関係にもよい影響を与えていると思いました。

1年生男子のハンドボールの授業は全員がシュートを打つという目標で、オフェンスチームとディフェンスチームに分かれての練習でした。目標はわかりやすかったのですが、子どもたちがその目標を達成するためにどのようなことに注意をすればいいのか、意識できていません。「前が空いていてすぐにシュートができる状態であれば、パスを求める」「ボールを持っていない者が、パスの指示をする」といった場面が見られませんでした。球技ではボールを持っていない時の動きが大切ですが、ボールを持ってから次のプレーを考えています。どこかで指導するとよいでしょう。チームごとに作戦会議の時間があるのですが、中にはすぐに終わって遊んでいるチームもありました。考える糸口がないのかもしれません。「シュートにつながるパス」「指示の声をだす」といった、子どもたちに意識してほしい行動を目標に組み込むことも必要かもしれません。
また、授業の最初にウォームアップもかねてパスの練習をしていましたが、きちんとできていない子どもがたくさんいました。最初にパスの指導をした時にはポイントを押さえていたと思いますが、定着していないようです。例え以前に指導したことでも、定着するまで毎回確認をすることが必要です。
振り返りを授業の最後に個人個人で書かせますが、団体競技なのでチームとしての振り返りが必要です。チームとしてこの時間でできるようになったこと、次回にできるようになりたい目標などを書かせることで、授業者も次の時間の構想を立てやすくなるはずです。

1年生の女子のサッカーの授業は、初めてのゲーム形式の練習でした。身体接触のあるサッカーを女子は嫌うそうです。しかし、シュートを決めた時の喜びようを見ると、達成感を持たせることで、好きになるのではないかと思いました。1時間の授業が終わった時に進歩したと実感できるようにすることが大切です。そのためには達成したかどうかがわかりやすい目標設定と、達成するために具体的にどのようなことを意識すればよいのかを明確にすることが求められます。
授業者は子どもたちを集めてポイントの説明をしていますが、言葉による説明が主になっていました。身体的な動きを言葉で説明されても、その競技に精通して技術が身についてこないと、理解することができません。一部の子どもたちの頭が下がってきます。ところが、授業者が実際に動いて見せるとすぐに顔が上がります。視覚的な要素が大切になることがよくわかります。位置取りの説明であればホワイトボードを使って見せる。体を使った動きなら、子どもを前に出させてやらせてみる。そういうことが大切になります。
インターバルにチームでうまくできたことや反省点を話しますが、なかなか言葉が出てきません。プレーに一生懸命で客観的に見ることができていないのでしょう。シュートをどれだけ打ったかの記録をとる係が各チームに2人います。シュートのチェックはしているのですが、相手チームが攻めている時はすることがないのでボーっとしたり雑談をしたりしています。ゲームでのチェックポイントを意識して観察させ、仲間にアドバイスをする役割を持たせるとよかったでしょう。チェックシートをつくっておくのも一つの方法です。
ボールを奪う練習を鬼ごっこの形式でやったりボールを使わずに動きの練習をしたりと、基礎的な練習にも工夫がみられましたが、男子のハンドボールと同じく基本的なことが定着していません。ドリブルもパスもトーキックが主体で、インサイドキックやインスッテプキックを使い分けることができません。女子にとっては難しいことなのでしょうが、こういったことを意識させないと結局ゲームを楽しむこともできなくなります。子ども同士で指摘し合えるような工夫がほしいところでした。

2年生の男子のダンスの授業は、とても興味深いものでした。
体育でのダンスの主流はヒップホップになっています。男子でも楽しく踊れるものです。子どもたちは横何列かで向き合って踊っているのですが、一生懸命に体を動かし、友だちと動きが上手く合った時などはとてもうれしそうにしています。
この時間は次時以降で行う創作を意識して、ダンスバトルを取り入れていました。2人が向き合って交互に相手の方に進んで自由にいろいろな動きをするというやり方でした。いろいろな動きをすることが創作につながるというわけです。子どもを1人前に出して、授業者と2人で実際にやって見せます。子どもたちは楽しそうにかつ真剣にその様子を見ています。代表の子どもが授業者の動きに対してなかなか見事に切り返すので、子どもたちはやってみたいという気持ちになったようです。上手く子どもたちに意欲を持たせることができました。
全員でダンスバトルに挑戦する前に、今までやってきた動きを上手く使うことを意識させましたが、実際にやってみると、子どもたちは、基本的な体をゆする動きを交互に繰り返すだけで、なかなか他の動きをすることができません。今までやってきた動きをするといってもとっさには出てこないものなのです。ちょっと時間はかかりますが、ダンスバトルを始める前に今までやってきた動きを実際にやって見せることが必要だったようです。
体育に限らず、それまで学習してきたことはできる前提で授業を進めることが多いのですが、授業者が思っているほど定着していないものです。次の活動に必要なことは実際にやって見せるなどの確認が必要になるのです。とはいえ、どの子も一生懸命にダンスバトルに取り組んでいました。とてもよい姿を見ることができました。

2年生の女子の保健は2学級に分かれ、若手2人がそれぞれ授業を行なっていました。環境問題で3R(Reduce Reuse Recycle)について考える授業でした。
どちらの学級も授業規律は良好です。子どもたちにごみ(廃棄物)の種類を考えさせましたが、これに時間をかけることにあまり意味はありません。考える問題というよりも知識の問題だからです。子どもたちに活動をさせたかったのであれば、調べる活動にすべきだったでしょう。授業者は2人とも手元に板書計画を持って授業をしていました。板書には3Rの説明が書かれています。しかしこの授業では環境問題に対する対策として3Rを教えることよりも、自分たちにどのようなことができるかを考えさせることの方が大切です。資料をもとに、どのような対策をとればいいのかを考えるのです。「ごみの量」「ごみ処理場の数」「不法投棄の件数」などの年度ごとの変化がわかるグラフを準備するとよかったでしょう。「人口は増えていないのにごみが増えているのはどういうことか?」といった疑問を持たせながら、原因と対策を考えるのです。3Rが直接出てくるかどうかはわかりませんが、子どもたちの考えを整理し分類しながら、それらを「リデュース」「リユース」「リサイクル」と言うことを教えればいいのです。板書計画は立てることはとてもよいことですが、板書する内容を教えるのではなく、子どもから出させることを意識してほしいと思いました。

他の授業については明日の日記で。
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