市の学力充実プランを基に講演をする

教務・校務主任対象の学力向上研修会で講演をしてきました。「市の学力充実プランと学力向上」と題して、学力充実プランに基づいて学校で具体的に何をすればよいのかについてお話ししました。

学力充実プランの構築と実践というパンフレットが先生方の手でつくられていますが、とてもよくできていると思いました。「授業研究」「学習環境」「人的環境」の3つの視点で構成されています。「授業研究」では教師集団の質の向上(⇒わかる・できる授業)、「学習環境」では落ち着いて学習に取り組む環境づくり(⇒見通す力・振り返る力・集中力の高まり)、「人的環境」では自己肯定感の高まり(⇒安心して学ぶことができる関係性の構築)を目指しています。とても大切なことばかりです。これを学校で実現するためには、個別ではなく総合的にとらえる必要があります。
学習規律をいかにつくるかは授業の成立に大きな影響があります。もちろん子ども同士の関係性も同様です。学級を作っていく段階できちんとできていることが授業研究での前提になっていきます。逆にこういったものをつくり上げていくことは授業の中でこそ行えるともいえます。であれば、授業研究の中に意識的にその視点を取り入れる必要があります。鶏と卵の関係です。学校としてどのように構築していくのかの戦略が必要です。「学習環境」や「人的環境」を全体的に取り組むことから始めるのか、「授業研究」を4月、5月といった早い時期から行い、その中で「学習環境」や「人的環境」の視点を取り入れるのか、それとも並行して行うのかといったことを選択する必要があります。これは、学校が落ち着いている状態なのか、若手が多いのかといったことにも影響されます。

具体的には、それぞれの視点に関して次のようなことをお伝えしました。
「授業研究」
授業を見る視点として、子どもの事実がどうであったか、安心して間違えることのできる学級であるかどうかということが大切です。検討会では先生方が全員参加できること、ポジティブな発言を増やし授業者がやってよかったと思えるようなものにすることで「授業研究」は楽しいものだと感じてほしいと思います。「授業研究」を通じて、先生方が授業について気軽に話し合う雰囲気ができることが理想です。また、出てきた課題を授業者個人のものとしてだけでなく、学校全体のものとして継続的に取り組むことも大切です。こうして考えると、授業研究を企画し検討会を取り仕切る立場の先生の役割はとても大きいと思います。
「学習環境」
学習規律などのルールがしっかりとしていることは、安心な学級づくりの基本となります。この市ではルールを明確にすることに各学校がきちんと取り組んでおられるようです。であれば、問題はどのようにして徹底するかです。形だけの徹底では、意味はありません。子どもたちが聞いているふりをしているのか、本当に聞いているのかといったことをきちんと問う必要があります。こういったことを「授業研究」でも話題にする必要があるでしょう。「チェックする目」でできないことを注意して減らすのではなく、「見守る目」でできることをほめて増やす発想をお願いしました。
「学習環境」に関連して、朝学習や家庭学習についても少し話をしました。学習量も大切ですが、単に量だけを視点にするのではなく、どのような力がついたかをきちんと評価することが大切です。一人ひとりの進歩を見える形にすることで、自己肯定(有用)感が高まります。また、できない子どもができるようになる手段を与えることが必要です。子どもたち一人ひとりに先生が個別に対応するには限界があります。子ども同士の学び合いを上手く組み込むことが一つの解決策になります。子ども同士がかかわり合うことは人間関係をつくることにもつながります。逆に子ども同士の関係ができていなければ、実現が難しいことにもなります。これも鶏と卵の関係ですね。
「人的環境」
子どもが自己肯定(有用)感を持つためには、他者に認められる場面をつくる必要があります。日ごろの生活場面だけでなく、授業でも意識することが大切です。まずは、教師が子ども一人ひとりを認めることから始め、子どもが友だちに認められる場面をつくることを意識してほしいと思います。「笑顔」と「ありがとう」があふれる学級が理想です。「授業研究」でも話題にしてほしい視点の一つです。
この市では、子ども同士の関係をつくる方法として、「構成的グループ・エンカウンター」に取り組んでいる学校が多いようです。それにプラスして、「ソーシャルスキル・トレーニング」を紹介しました。たまにやってもあまり効果はありませんが、短い時間でいいので定期的に行うと効果のあるものです。
「人的環境」と直接つながらないかもしれませんが、教師同士の人間関係も大切です。互いにカバーし合う雰囲気をつくることが大切ですが、そのためにはミドルリーダーの動きがとても重要になります。意識することを強くお願いしました。

今回、市の学力充実プランをベースに話をするという、あまり経験のないことに挑戦させていただきました。新しい視点で考えるきっかけをいただき、私自身とても勉強になりました。参加された先生方も、私の一方的な話にもかかわらずよく反応していただけ、とても気持ちよく講演を終えることができました。このような機会をいただけたことと、参加された先生方に感謝です。
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