愛される学校づくり研究会

私の心に残る授業

★これまでのリレーコラム「授業のある風景」から、「私の心に残る授業」に切り替えて、自分が受けた授業、実施した授業、参観した授業等々、強く印象に残っている授業について、それぞれの主観をもとに示して頂きます。印象に残っているのには、きっと理由があるはずです。

【 第1回 】教室の出来事を仔細に省察すると・・
〜愛知県大府市立大府南中学校 近藤 肖匡〜

いまから10年の前の忘れもしない平成18年9月15日の出来事です。この日は「学校訪問」でもありました。学校訪問というのは、教育委員会の指導主事等が直接学校を訪問し、計画的な教育活動の実施状況や指導の実際を見て指導助言するものです。さらに、運が良い?ことに、県の教育委員会だけでなく、大学からも視察が来て、もっと私が驚いたことに、たまたま来日していたシンガポールや香港からの教育視察団が、日本の授業を観たいということで、総勢30名近くが見守るなか、「石のいれかえゲーム」(今では教科書で扱うところは少なくなりましたが)を中学1年で行いました。

そんな状況ですから、普通教室から特別教室へ場所を移して授業をすることになりました。
  準備のために、ちょっと広めの特別教室に入ってみると、そこにはテレビ局のカメラが数台、そして音声用の大きなマイク、編集するための機材が教室の後方に置かれ、教師はもとより、生徒のテンションがあがってしまうような状況がありました。頭は真っ白の中、50分の授業は過ぎ去っていきました。

それから1週間後、A3用紙13枚にも渡る逐語録(☆注)が私の手元に届き、研究協議会が開かれました。まずは、逐語録だけを読むだけでの研究協議会です。

図1-1.jpg

研究協議会で、ある教師が意見を切り出します。
  「48番の教師の発言。先生の指示は、『えー』が多いですね。的確な指示ではないということです。右欄の抽出生徒に混乱があります」
  「数学的な価値がある授業なのか」

  などの厳しい指摘を30分ほど受けたところで、研究協議会に参加されていた大学の先生から、それでは、「DVDを観て授業を振り返っていただきましょう」と、誰もが言葉を失う映像を目の当たりにしました。

図1-2

そのときの授業の様子が、画面が5つに分割され、生徒と教師の動きや教室の様子が一目で分かるものに編集されていたものでした。
 大学の先生は「抽出生徒2は学びから逃げていたが、操作活動をしていくうちに、最後は積極的に参加し、自ら学び数理的に言葉に表現しようと試みていた」と映像を見ながら価値付けをしてくださいましたが、私にとっては、生徒に寄り添っていない授業だと猛省するものでした。

逐語録と、その時の教室の出来事を仔細に省察できるDVDは、他の生徒に学びがあったのかを考えさせられます。「授業を行うとき、テープに録音した方が良い。さらにはテープ起こしを行った方が良い。そして分析をし、自分をメタ認知しないと、授業力は下降の一途をたどる」と言う方がいますが、いつになっても授業を振り返ることをしたいものです。

☆注 逐語録というのは、授業の様子を許可を得て録音・録画し、「再生」「停止」を繰り返しながら、一字一句、発言の内容を変えずに、文書に書き取ること
こちらを参考にしてください。

(2016年7月4日)

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執筆者プロフィール

●近藤 肖匡
(こんどう・ゆきまさ)

平成8年に教職をスタート。中学校で21年勤務。現在は大府市立大府南中学校で校務主任。専門は数学。「生徒が、そして学校が元気になる」仕掛けづくりを奮闘中。平成17年に文部科学省で研修してから、ユニバーサルデザインを意識した授業づくりに目覚めた。特別支援教育に関わる著書もいくつか手がけている。