平成20年1月22日
教育再生会議
座長 野 依 良 治 様
全国連合小学校長会長
池 田 芳 和
教育再生会議第三次報告に対する見解
貴会議は、平成19年12月25日付けで、「社会総がかりで教育再生を・第三次報告」をまとめられました。この間、第一次報告、第二次報告から短期間でまとめられたご努力に対し、敬意を表します。
今後、提言が具体的実施に移されていくにあたり、全連小といたしまして、国民の信頼に応えるための教育改革に積極的にかかわり、推進していくためにも、学校現場の実情をご理解いただき、全国の各小学校の教育が一層充実発展をさせていくため、最終報告に向けご配慮いただきたく、以下の見解を述べさせていただきます。
〜学校、家庭、地域、企業、団体、メディア、行政が一体となって、全ての子供のために公教育を再生する〜
1 学力の向上に徹底的に取り組む
〜未来を切り拓く学力の育成〜
(1)全国学力調査、PISA調査の結果を徹底的に検証し、学力向上に取り組む
○調査結果の検証に基づき、学力改善プランに取り組む ○調査結果の分析を、学習指導要領の改訂、教科書の充実等に活かす ○理科教育強化のため、教科書の改革、小学校専科教員の配置を進める ◎評価する |
(2)「6−3−3−4制」を弾力化する
○子供の発達に合った教育のため、小中一貫教育を推進し、制度化を検討する ○年齢主義(履修主義)を見直し、飛び級を検討する ○大学への飛び入学、高大連携を促進する ◎小中一貫教育は、研究校において、現在その推進を図り、効果を検証している段階である。学校間の接続の問題の解決のためにある程度の連携や弾力化は必要であるが、今後、その推進にあたっては、人間関係の固定化など、多面的に分析し慎重に進めていただきたい。 |
(3)英語教育を抜本的に改革する、今の時代に求められる教育を充実させる
○小学校から英語教育に取り組み、ネイティブを常勤講師に採用する、現場の進んだ取組を行いやすくする ○環境教育、「ものづくり」教育などの充実を図る ◎慎重に論議し、中教審の答申との整合性を図ってほしい。 |
(4)「大学発教育支援コンソーシアム」の推進により新しい教育モデルを創出し、実証する
○大学と教育委員会等のネットワークにより大学の英知を教育の改善に活かす |
2 徳育と体育で、健全な子供を育てる
〜子供たちに感動を与える教育を〜
(1)徳育を「教科」とし、感動を与える教科書を作る
○徳育を「新たな枠組み」により教科化し、年間を通じて計画的に指導する ○偉人伝、古典、物語、芸術・文化などを活用し感動を与える多様な教科書を作る ○新しい教育基本法の下で、社会総がかりで、徳育の充実に取り組む ◎文科省の作成する「心のノート」は道徳指導を進めるに当たって有効であり、各社発行している副読本も有効である。しかし、全国的に見て、副読本を児童一人一人に購入している自治体は少ない。従って、財政措置を講じ、全国各小学校に教材を配布することは大切であると考える。 |
(2)運動・食育・生活習慣が一体となった体力向上とスポーツの振興を図る
○体育専科教員や学校給食を通じた食育により体力向上を図り、スポーツ庁などによりスポーツを振興する |
(3)体験活動により子供の心と体を育てる
○小学校での自然体験活動、中学校での社会体験活動、高等学校での奉仕活動を推進する ●上記取り上げられた、ものづくり教育、食育、体力向上、自然体験などは教育上重要である。しかし、授業時数は限られており、これら○○ 教育なるものを学校現場がすべて取り上げていたのでは、本来の教科指導の時間がマイナスとなり、最も求められている学力向上につながらなくなる。学校の主体的な判断により柔軟な対応が出来るようにしていただきたい。 |
3 大学・大学院の抜本的な改革
〜世界トップレベルの大学・大学院を作る〜
(1)大学・大学院教育の充実と、成績評価の厳格化により、卒業者の質を担保する
○大学は教養教育を重視し産業界等との連携を深め社会人としての基礎的能力を備えた卒業生を送り出す ○大学院は、質の高い学生のみを入学させ、定員充足に拘らない ○大学全入時代の大学入試の在り方を検討する |
(2)国立大学法人は、学部の壁を破り、学長リーダーシップによる徹底したマネジメント改革を自ら進める
○国立大学の学長選挙を廃止するなど学長選考会議による学長の選出、学長による学部長人事の掌握、学部の壁を越えた効率的な教育指導体制の構築を各大学が進める |
(3)「国際化」「地域再生」に貢献する大学を目指す
○国立大学・学部の再編統合、定員の縮減に取り組む |
(4)大学・大学院を適正に評価するとともに、高等教育への投資を充実させる
○国際競争力、地域の自立を高めるため、厳正な評価に基づき、必要な分野に重点的に投資する |
4 学校の責任体制の確立
頑張る校長、教員を徹底的に応援する〜
(1)学校のマネジメント改革を行い、校長がリーダーシップを発揮できるようにする
○校長の同一校在職期間を延長する、校長の責任と権限を拡大し、副校長、主幹教諭を管理職とする ○管理職登用を厳格に行い、組合との不正常な関係を正し、人事の公正化を図る ○教育委員会は、校長が管理権を行使できない不正常な地域、学校を是正する ◎評価する |
5 現場の自主性を活かすシステムの構築
〜情報を公開し、現場の切磋琢磨を促し、努力する学校に報いる〜
(1)学校の情報を公開し、保護者、地域の評価、参加により、学校の質を向上する
○学校の情報公開、学校の第三者評価のガイドラインの作成、学校支援地域本部の設置を進める ○教育委員会は活動内容の透明度を高め、その責務を確実に遂行する ◎評価する。また、努力を必要とする学校への支援も願いたい。 |
(2)適正な競争原理の導入により、学校の質を高める
○バウチャー的な考え方を取り入れた「学校選択制と児童生徒数を勘案した予算配分による学校改善システム」をモデル事業として実施する ●公立小学校間への過度の競争原理の導入はなじまない。 全国22000の公立小学校は、児童はもちろん、地域、保護者、環境によって実態は全く違い、それぞれの実態に応じて教育活動が進められている。学校選択制にしても、それぞれ実態の違った条件の中で、何を根拠に選択し、児童の教育にどんな効果を期待するのか、選択困難な条件のある地域の児童・保護者にどう選択せよと言うのか疑問である 小学校は地域の文化拠点であり、そこへの競争原理の導入は地域の崩壊につながりかねない。 |
(3)多様な分野の優れた社会人等から教員を大量に採用し、学校を活性化させる
○特別非常勤講師、特別免許状を活用し、採用者の2割以上を目標に、普通免許がなくても教員に採用する ●専門的な知識技能を持った、各分野で優れた能力を持った人材が即児童の前に立って教育ができるほど、教職は簡単なものではない。マスメディア等で社会人がいとも簡単に小学校で授業をしている姿を見るが、それは学級担任教師の指導の基礎の上に立っていることを忘れてはならない。社会人枠で採用している教員も、新規採用教員同様の研修を受けて独り立ちできる教員となっている。採用に当たってはある程度の講習や現場実習が必要である。また、特別免許状を免許更新制のもとでどう扱うのか疑問も残る。 |
(4)教員養成を抜本的に改革する
○教員養成大学・学部の教育など、教員養成の在り方を抜本的に見直す ◎評価する |
(5)学校の適正配置を進め、教育効果を高める
○教育効果を高めるため、国は、望ましい学校規模を提示し、スクールバスなど統廃合を推進する市町村を支援する ●小学校は、地域の文化拠点であることを忘れてはならない。効率を優先することで、自治体の短期的な財政面への効果はあるかもしれないが、長期的視点に立ったとき、学校を中心とした地域の崩壊へとつながりかねない。必要性は認めるものの、安易に数等で基準を設けて学校の統廃合を進めることには疑問を感じる。学校選択制との矛盾も感じる。少人数の中で教育を受けさせたいと考える保護者のニーズにどう答えるのか疑問である。 |
6 社会総がかりでの子供、若者、家庭への支援
〜青少年を健全に育成する仕組みと環境を〜
(1)子供、若者、家庭に対し、教育、福祉、警察、労働、法務等の連携システムを作り、総合的に支援する
○地域での関係機関窓口の一元化を推進し、国レベルでの体制整備や、必要な法的措置を検討する ◎評価する |
(2)有害情報から子供を守るため、全ての子供の携帯電話にフィルタリングを設定する
○フィルタリング利用を義務付ける法的規制導入を進める ●子供の文化を国全体で育てるという観点から、携帯電話についてはかなり踏み込んだ提言に感謝する。一方マスメディアの子供におよぼす影響へも一歩踏み込んでいただきたい。社会総がかりの中に、企業、メディアも挙げられているのであれば、厳しい規制をはかってもよいのではないか。自然環境同様、教育環境も、未来の地球崩壊につながることを忘れてはならない。 |
(3)幼児教育を充実する、子育て家庭、親の学びを地域で支援する
○幼児期からの規律ある生活習慣や情操教育を重視する、将来的な幼児教育の無償化を検討する |
7 教育再生の着実な実行
(1)動き出す教育再生
○教育は国家百年の大計。効率化、メリハリ付けしつつ、しっかりした投資を行う ◎評価する |
(2)教育再生の実効性の担保、フォローアップ