★このコラムは、全国の校長先生や教頭先生のためにご提案する、IT機器を使ってのいわば学校運営術です。
【第4回】メールは職員とのコミュニケーションツール(2)
第3回目のコラムから随分とご無沙汰してしまいました。今回は職員とのコミュニケーションを図るメール活用法その2として、「日報メール」について紹介します。
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自分が若いころを考えてみると、校長と直接話すことはほとんどありませんでした。せいぜい宴席で年に数回話す程度でした。もちろん、校長の考えは朝の打ち合わせや職員会議で聞いていましたので、校長は何に対してどのような見解を持っているのか、私たちは何を頑張ればよいのかはよく分かっていたと思います。30歳までに4人の校長に仕えたのですが、あのころの校長はコミュニケーションについては、どの方も同様でした。
しかし、校長との対話不足に寂しさを感じていたのは正直なところです。「自分はこんなに学校のことを考えて働いているのに、校長はそれを分かっていてくれるのだろうか」と思ったこともありました。毎週提出する「週授業計画表」の欄に自分の所感も書くのですが、校長から返ってくるのはいつも押印だけでした。自分の考えに対して校長はどのように思っているのか、ぜひ聞いてみたいと思ったものでした。もっとも、どの校長にも自分が考える教育活動を自由にやらせていただいたことは間違いありません。会話がなくても、若造の考えていること、やっていることは十分に承知のうえで、見守っていただいていたようにも思います。
自分が校長になった今、仕えた校長と同様なスタンスをとろうかと思いましたが、逆に日常的にコミュニケーションを図ることで、若い教師の心をつかみ、思いを生かすこともできるのではないかと考えたのです。
そこで始めたのが「日報メール」です。若い教師(40歳前の教師を「若い」と定義)に、毎日、校長宛にメールを送るように指示をしました。また非常勤講師さんは不規則な勤務となりますので、直接話すこともままなりません。「日報メール」はコミュニケーションを確保する上で有効だと考えて、同様に指示をしました。
「日報メール」というと業務報告のような固い感じがすると思いますが、けっしてそういったものではありません。
こちらが最初に送ったメールを紹介しましょう。その雰囲気が分かっていただけると思います。 |
このメールの目的は、校長として若い先生方の考えてみえることを良く知り、生かしていきたいという思いからです。またこちらが気づかない点や困ってみえることもあることと思います。それに対して僕なりのコメントや動きができたらよいとも思っています。またこんな情報がありますよ、とお知らせすることもできますので、気軽に毎日お届けください。
何もなければ1行でもけっこうです。本当に気を遣うことはありませんから。無理矢理書いているとストレスが溜まってしまいますからね。だいたいこういう取り組みだけでもストレスが発生することは承知しています。ごめんなさいと思いながらも、校長としてどれだけ若い方々とコミュニケーションをとっているか、教師力を上げるために有益な情報を差し上げているかという反省から浮かんだアイデアですから、おつきあいください。
メールのタイトルを次のようにしましょうか。
【お名前○月△日】
では、とりあえずやってみましょう。不都合が生じたら、これも気軽に言ってください。柔軟に考えていますので、ご安心を。
「日報メール」の効果は抜群でした。校長赴任1年目と比較すると、「日報メール」を始めた2年目の職員とのコミュニケーション量は、10倍以上になったといってもオーバーではありません。メールをやりとりしている職員と廊下ですれ違ったときでも「あれは良かったねえ」という一言だけで、互いに十分にその意味は分かります。 |
ある日のメールのやりとりを紹介しましょう。 |
お疲れ様です。
最近朝や帰りの短級で、話をする難しさを感じています。自分の伝えたいことを時間をかけて話すことができません。どうしても話が短くなってしまい、ふくらみのある話ができていない気がします。○先生は伝えたいことを幅広い角度から話していき、生徒達の興味の沸く面白い話を話されています。そして最後にはしっかりと伝えたいことが子ども達に伝わっています。
部活動内ではそういう話が出来るのですが、学級だとほとんど出来ていないように感じています。自分が情けなく、今はそれで少し悩んでいます。
良いことに気づきましたね。
簡単に良い話はできるものではありません。
自分の感性を磨き、自分自身を高めるしかありません。己をまず知っていることが大切です。そこから成長がありますよ。
こうしたやりとりが1年間続いたら、互いに視点が広がり高めあえることは間違いありません。 |
(2006年4月24日)