愛される学校づくり研究会

【第37回】座談会「3年間の実践研究を振り返って」(その1)

1月29日、五反野小学校の3年間の実践研究を総括した「研究発表会」が行われました。文部科学省の「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究」7地区9校の「トリ」となる発表であり、その注目度は高く、日本全国から非常にたくさんの教育関係者・マスコミが訪れ、熱心にその発表に聞き入っていました。特に「学校運営」に地域や保護者が本格的に「参画」した事例として本研究は貴重であり、またこの取り組みが、3年間の実践研究に終わるのではなく、新しい法制度のコミュニティ・スクールとして、さらに発展して継続していくことは大変意義深く、会場を埋め尽くした参加者からの質疑が途絶えることのない、熱気あふれる研究発表会となりました。
 

gotanno37-4.jpg

登校風景

gotanno37-5.jpg

パワーアップタイム

gotanno37-6.jpg

公開授業

gotanno37-7.jpg

のびのびスクール

gotanno37-8.jpg

研究報告

gotanno37-9.jpg

パネルディスカッション

3年間の研究を振り返る意味からも、当日配布された実践研究報告書(学校編)「学校が変わる」に収録されております、12月7日に行われた座談会の内容を、今号から3回に分けて、紹介させていただきます。
 

■出席者
  • 五反野小学校理事会理事長 大神田賢次氏(写真中央)
  • 五反野小学校理事会副理事長 鴨下甚冶氏
  • 五反野小学校PTA会長 三田利恵氏
  • 五反野小学校校長 三原 徹氏
  • 五反野小学校研究主任 石崎忠男氏
gotanno37-1.jpg

 

座談会のはじめに

gotanno37-2.jpg

大神田理事長

大神田 実践研究期間3年間の学校と理事会の取り組みを振り返るわけですが、昨年度まで、石崎先生をはじめ先生方のところには、理事会の情報がほとんどいっていませんでしたよね。
 
石崎 14年度・15年度に関しては、理事会の情報は断片的にしか下りてきませんでした。当時の校長先生の意向をもとに、学力向上など、先生方で方向性を相談して取り組みを行い、それを理事の方がご覧になって「理事会の思いとは違うよ」ということが、何度か繰り返されていました。
 
gotanno37-3.jpg

石崎忠男先生

大神田 今のようにストレートに話ができれば、本当に効率がよいのですがね。そこが、学校が3年の間に一番変わったところではないですか。学校が外部の意見に左右されるのはとんでもないとみなさん思っていらっしゃったのが、実践研究期間のうちに徐々にそれが変化してきた。そのプロセスが大事かと思います。

 

「基礎基本の定着」を教育課題に

大神田 まだ理事会が設置される前、初年度(14年度)の夏にコミュニティ・スクール専門委員会を立ち上げました。そこで、今五反野小に欠けているものは何であるか議論しました。また、同じ指定校である土堂小学校(広島県尾道市)を視察し、そのレベルの高さに驚きました。子どもが生き生きとしている上に、その規律が全く違います。また、書物などを通してゆとり教育の弊害について勉強しましたが、五反野小の先生方の話に、「できるまで待ちます」「できるだけ宿題を出さない」など、その例がよく見受けられました。これらのことを契機に、「基礎基本の定着」ということについて、五反野小はどうかを振り返り、必要性を再認識したわけです。

 文科省から指定されてコミュニティ・スクールとなるということは、地域の人が学校に入ってきて、学校と地域の人が仲よくするということだけではないだろう。地域の人が望む方向を学校に実現してもらうことが重要で、我々もしっかりした「思い」をもって取り組むべきと考えました。当時のゆとり教育には問題を感じていましたし、授業は指導ではなく支援であるといっても、自分で考える力を教えないで応援だけしていてもダメだろう。「しっかりと基礎学力をつけるということを要望していこう」ということに、コミュニティ・スクール専門委員会は意見を集約しました。

石崎 14年度の夏休み前に、基礎基本の反復練習という話がありまして、9月から陰山先生の漢字プリントを参考に教材を作成し取り組んだのが、パワーアップタイムの始まりです。当初は、大休みの後の15分間を使いました。その後、昼休み後の時間になったり、モジュールを利用したりしましたが、脳の活性化は朝が効果的という話を理事会を通してうかがい、今年度より朝の時間に実施しています。
 百マスの計算など個々には実践していても、全校同じ体制で実施した経験はなく、最初は先生方の戸惑いもありました。毎日計算練習をやることを嫌に思う子どもの声も聞かれました。今では、2年間の積み重ねが、多くの学年でうまくまわり始め、大きなプラスになってきています。

大神田 学校ぐるみでやることが重要だということを、理事会は強く提言してきましたが、14年度・15年度は、産みの苦しみの時期でしたね。

石崎 学年による違いもあります。単純な繰り返しは、低学年は喜んで取り組みます。高学年になってから始めると抵抗を感じる児童が半数以上で、それを変えていくには、取り組む内容をよほど面白くするなど工夫が必要です。小さいころから、そういうことをやる下地が重要と思います。
 また、理事会の提案を受け、辞書引きや音読にも取り組みました。五反野小の児童は、習った漢字はしっかり書けるけれど、熟語として違う使い方ができないという課題が見られます。そこで漢字練習の後に、辞書引きを積極的に取り入れるようにしました。音読も今年度9月から、朝会・集会の後の時間を利用して始めました。学年によって取り組みは異なりますが、高学年ではたくさんの百人一首を短期間に覚えるなど、驚かされます。

大神田 五反野バージョンとして、基礎基本に関する反復練習が、共通理解のもとに実施されるようになったわけですね。

石崎 さらに学校が主体となって、基礎基本の上に、考える力をどうつけていくか取り組んだのが、少人数指導です。3年間実施して、ある面ではその効果が出てきました。今日も5、6年で単元のテストをしましたが、学年の平均が92点、93点でした。それほど難しいテストではありませんが、平均が90点以上ということは、低い点の子どもがほとんどいないということです。基礎基本の理解はしっかりできてきたかなという思いがあります。

大神田 学校もいろいろとご苦労があったようですが、この3年間の過程は非常に肯定できるものだと思います。少なくとも地域から見て、満足できる方向に来たことは確かです。五反野小学校は、この助走期間があって、あるところからさらに大きく飛躍するだろうという期待をもっています。

(編集部 小西)

(2005年1月31日)

五反野小title.gif

●週刊五反野小通信

日本初の「地域立」小学校として、学校・家庭・地域が三位一体となって新しいタイプの学校づくりを進めている東京都足立区立五反野小学校にスポットをあて、そのさまざまな取り組みを週刊でお届けいたします。
 

◆足立区立五反野小学校◆

・文部科学省 「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究開発」指定校
学校ホームページ