【第9回】授業記録で授業をスリム化しよう
「研究授業では参観している教師一人一人が授業記録をとろう」と主張をしたい。記録をしていると子どもの表情が見えなくなるとか、授業全体の流れがよくわからなくなるといったマイナス面をあげる方もあるが、授業記録をとることでのメリットも多い。
授業記録をとると
1 キーワードがわかるようになる
子どもの発言すべてを記録することは難しいので、大切な言葉だけを記録するようになる。つまり、おのずとその授業にとって大切なポイントを考えるようになる。
授業終了後、実はあの「子どもの発言」が授業を大きく左右したと分かる場合があるだろう。そのとき、その「子どもの発言」が自分の授業記録に残されていなかったとしたら、授業の参観の仕方、教材解釈、授業の流れのとらえかたが不十分だったと自覚することもできる。逆にきちんと記録されていれば、授業の見方が高まってきたといえる。
2 教師の発問、切り返しがわかるようになる
記録することで、「発問」や「切り返し」を学ぶことができる。
たとえば、子どもが「6+8=14です」と答えたとき、教師が「なぜ 足したの?」と聞いた記録があったとしよう。もし、このとき教師が「14をどうやってみつけたの?」と聞いたとしたら、どちらの発問の方が「子どもがたくさん発言するだろうか」「子どもの考えが焦点化していくだろうか」「子どもが考えを深める発言を引き出すだろうか」など、授業記録から様々な発問を考えたり、発問そのものの吟味もできたりする。
また
1.操作活動への指示の仕方
2.誤答への対応の仕方
3.適応題への指示の仕方
4.ノート指導の仕方
など具体的な教師の声かけがわかるようになる。
3 時間を有効に使えるようになる
授業記録をとると時間配分に無理があることがよくわかる。よく出会う授業は45分の時間の中で導入部分に時間のかかる授業である。子どもがやっと『考える』という作業に入って互いの意見を比べる時間になったころ、授業が終わりになってしまう。今日の目標まで到達しないうちに終わってしまうのである。子どもの考えがなかなか出てこないという場合もあるが、授業記録を見ると、『今日の目標に関係のない算数の授業をしていて時間がなくなっている』という場合が多い。
たとえば
23×6=138という筆算の学習の場合
20×6と3×6をあわせた数値になるということが目標の一つである。
そのときに、
C:2×6=12 3×6=15だから・・・・
T:え?よく考えてごらん、3×6=いくつかな?
C:?
T:3×6だから 3の段だよ。順番に言ってごらん。
C:3×1=3 3×2=6 ・・・・・
T:そうだね、思い出せたね。・・・・
授業記録を見てみると こういったやりとりが授業の話し合いの中に盛り込まれてしまったために、肝心の「20も6つ、3も6つ集めることが23×6になる」という授業の核心に進まなかったことがよく分かる。
スリムな授業とは、今日の授業にとって必要な話し合い、必要な作業がたっぷりととれている授業である。授業記録は余分な部分を見つけることができる貴重な資料である。
(2007年1月29日)