【第8回】子どもの考えに感動できる教師に
授業が上手だなと思う教師に共通しているのは、子どもの考えや活動に共感できることだ。研究授業や普段の授業を含めて多くの授業を見てきてそう感じるようになった。
「そうだね」と言葉では言っているけれど、本当に子どもの考えを受け入れようとしないと、その後の授業がうまく進まず、子どもとずれていくことが多々あった。
例を挙げて説明してみると
A先生は授業の中で 子どもがすばらしい意見を言っても 「あの意見が出てくるのは当然だと思っていました。」と答えた。今までの授業でもクラスの中の誰か一人は気がつく内容だったからそう思ったようだ。
B先生の授業では、こんなことが起きた。
≪4年 算数「角度」の授業でのこと≫
T | みんな 自分の三角定規を出して角度を測ってみましょう。 |
C | 60度になった。30度もあるし、90度もあった。 |
C | ぼくも同じで60度になりました。 |
T | じゃあ 先生も三角定規を使って角度も測って見るね。 |
(大きな 教師用の三角定規を見せて、実際に測って見せた。) | |
C1 | わあ 先生の大きな定規でも60度になるんだ。 |
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(C1は大きな声で驚きの声をあげた) | |
T | C1君、何かびっくりしたの? |
C1 | うん だって 先生の大きな三角定規でも60度になったからびっくりした。 |
T | そうなんだ。大きな三角定規だからちがうと思っていたんだね、びっくりしたね。 |
C1の発言は、B先生にとっても驚きだったようである。どんな三角定規だろうと60度になるに決まっている。そんなことは当たり前だと今まで思って授業を進めてきた。ところが、子どもにとっては辺の長さが大きくなるほど視覚的に角度が大きくなるような気がしていたことに、気がついたそうである。B先生は、にこにこしながら「子どもの考えっておもしろいですね。」と言っていた。相似の考えが身に付いていない4年生の子どもだから、辺が長くなれば角度が大きくなると思っても不思議はないはず。その子どもの考えに共感できるB先生は、やはり子ども主体の授業ができる人だった。
B先生は次にもまた、こんな発見をしたと教えてくれた。
≪4年 算数「計算のきまり」の授業でのこと≫
( )を使った式をはじめて学習したときのことである。500円持っていて、お店の中からいろいろな代金の物を買ったときのおつりを求める式を( )を使って求める問題。
T | ( )を使ったらおつりはどうなりますか? |
C1 | 500−(130+40)=330。おつりは330円。 |
T | じゃあ もしもう1つ80円の鉛筆も買うとどうなりますか? |
C2 | 500―(130+40+80)=250です。250円です。 |
T | それでは、この500円で買えるだけ買ってみましょう。 |
C3 | 500−(130+20+30+40+80)=200円 |
T | ( )を使って計算してみて気がついたことはありますか? |
C4 | ( )の中がこんなに長くなるとは思わなかった。すごく長い式があるなんて思ってなかった。 |
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C4の発言にB先生は感動したそうである。「自分が知っている式はもっと短かった。こんな長い式もあるんだ」というC4の思いに共感したそうである。算数が得意とは言えないC4が目を輝かせて発言したとき、すごく嬉しかったとも言っていた。
授業の中で生まれる子どもの思い、考えに共感できるようになると、誤答であってもそれを生かして正答を導いていく授業ができると思う。子どもの考えを「できて当たり前」と思わず、いっしょに迷ったり、考えたりできる教師でありたい。
(2006年12月4日)