愛される学校づくり研究会

【第7回】教師の思いが伝わる板書

新任のころ、「うまい板書の方法」などといった本を書店でよく見つけて購入した。しかし、最近は、板書に関する書物はあまり出版されていないように思う。
 教師が板書をしなくなったわけではない。最近はコンピュータを使って板書の代用をしたり、黒板そのものを使わなかったりする授業もあるが、依然として、黒板を使った授業の比率は非常に高い。そこで、板書のいろいろな活用法についてまとめてみた。
 

子どもとの出会いを演出する板書

始業式、入学式、卒業式、長期の休み明けの日。つまり、子どもとの出会いが重要な意味を持つ日である。その時の板書は大いに役立つ。


ア 新しい座席を書いておく。
 新しい学級では、すわる席さえ不安な子どもが多い。どこにすわるのかを書いておくだけで、安心感を生み出す。隣が知っている友達ならば、なおのこと安心させることができる。

イ 先生が来るまでの時間にすることを書いておく。
 子どもは授業が始まっていないので、することを思いつかない。そこで、提出物の整理など、だれもがやれることを明記しておく。やることがはっきりしていれば、子どもはそれをきちんとしておこうと思うはずである。入学式、始業式の日であれば、出会った途端に「みなさん、ちゃんとやれてえらいね」と誉めることもできる。

ウ 前の黒板には「日直の名前」、背面黒板には「今週の予定」を書いておく。
 担任の先生が自分たちのために、昨日から準備してくれていることが伝わり、子どもは安心する。今週の予定や明日の予定が分かることで、子どもも見通しが持てて、気持ちが落ち着く。

エ 黒板に担任からのメッセージを書いておく。
 これが子どもにとって、一番うれしい板書である。先生も自分たちと同じように今日からの生活を楽しみにしていることが伝わるからである。
 

 

子どもの考えが残る板書

授業中の板書は「子どもの考えが残る板書」であるべきだ。以下に授業中の板書の役割について述べる。


ア 子どもの考えを焦点化したり、分類したりする。
 子どもはいろいろな表現をする。まずはそれを板書しておく。そうしておくと、あとで「これは嬉しいことに注目している意見」とか「この計算は2つまとめて行っている」とか、ある観点で焦点化したり、分類したりすることができる。

イ 理解に時間のかかる子どもを支援する。
 口答での発言は、聞き取る力がない子どもにとっては、瞬時にはなかなか理解できないものである。そのため、教師がその発言のキーワードを板書する。このことでその子どもは時間をかけて理解することができる。

ウ 図や表などの視覚的な表現で理解を深める。
 言語だけによる理解は難しくても、言語と図を対応させて説明をすると、子どもの理解度は高まる。板書ではそれが瞬時にできる。しかも、大画面である。

エ 考える過程が見える。
 子どもに図や表や式を黒板に書かせ、それを他の子どもに見せることは、方法や考え方を見せる意味で有効である。例えば、線分図の書き方や、定規、コンパスの使い方をリアルタイムに知らせることができる。また、立式についても、一気に書かせないで、段階的に書かせることで、他の子どもにそれ以後の式を考えさえることもできる。途中までの式を見て、その後の式を自力で立てることができる子どもも出てくる。
 


≪先生方にお勧めしたいこと≫

私自身は、板書計画を立てることが、日々の教材研究であると言ってもよい。毎日、子どものノートを見て、次の授業ではきっとこんな意見を発表するだろうと予測を立て、それを板書計画に反映させる。もし、その意見が出てこなければ、どのようなことからこの意見を引き出そうかと考えて板書計画を立てる。
 このようにどの教科においても板書計画を立てることで、教材研究をしている。自分の授業方針も板書計画を立て続けることで固まったことは確かだ。

 何より、子どもがランダムに自分の意見を発表しても慌てることなく、その子どもの意見をどう扱うべきかを判断ができ、板書をする位置を決めることができるようになった。どのような意見が出てきても、「この子どもの意見は後で取り上げよう」「この子どもの意見はあの意見と比べさせよう」というように迷わなくなったことは、事前に板書計画を立てるからだ。みなさんもぜひ、板書計画を立てて授業に臨んでみてほしい。

(2006年9月25日)

和田裕枝先生title.gif

●和田 裕枝
(わだ・ひろえ)

愛知県豊田市立若林東小学校教諭。愛知教育大学の志水廣教授に800人見た中で一番授業がうまい人!と言わせた高い授業力の持ち主。特に、子ども把握力に優れ、授業では、その子のよさを活かす様々な授業技術を駆使する。和田さんの授業力を盗みたいという全国の教師は多数。