【第6回】学級作りのワンポイントアドバイス
新任の先生方の研修に参加させていただく機会がありました。若い先生方は子どもと同じぐらいパワー全開でした。その先生方の前で自分の教師経験の中で学んできた学級作りのポイントをお話させていただきました。来年度の学級作りのスタートの参考になればと思い、この場でも紹介させていただきます。
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1.「聞く」力を、まず身に付けさせましょう。
子どもたちに授業でたくさん発表してもらいたいと思うと、つい、「話す」ことを身に付けさせようとしてしまいます。スピーチの練習をしたり、発言カードを作って励ましたりすることも一つの方法ですが、「聞く」という習慣が身に付いていないと「話す」力は、あまり伸びないように思います。まずは、教師も子どもも「聞く」という習慣を身に付けてみるとよいと思います。「聞く」力を付けるためには、次のようなことに注意してみましょう。
子どもとの学習の約束
*人が話をしているときには、最後まで聞いてから手を挙げるようにしましょう。
*最後まで聞いてわからなかったことだけ質問しましょう。
教師の学習の約束 *子どもの発言は、耳と目で聞き取るようにしましょう。 |
子どもの理解度を把握するには、耳で子どもの発言を聞き取ることと、目で子どもの表情を見ることの2つがあります。学習内容がわからない子はうつむき加減で話します。「わかった」という一言でも、その子の理解度がどれぐらいか見ればわかるはずです。表情を見ただけで理解度を把握するには高度な力が必要ですが、目と耳で聞くように授業を毎日進めると、子どもの言っている意味がよく理解できるようになります。子どもとの信頼関係も生まれます。
2.教師の言葉に「重み」があるようにしましょう。
子どもには、たくさんの指示を出します。でも、指示が単なる指示のままで終わると、子どもは先生の指示を聞かなくなります。指示したら、必ず「確認」をしましょう。
例えば、
「A君、こうやってぞうきんは2つにおって使いましょう」と指示を出したら
「A君、ちゃんとぞうきんを2つにおって使っているね」と確認をしてA君の行為を認めてあげることです。
「Bさん、かけ算では、くりあがりをメモしましょうね」と指示を出したら
「Bさん、くりあがりのメモを書いたから、どこをミスしたのかよくわかったよ。えらかったね」と確認をしてBさんの学習態度を誉めてあげることです。
このような指示の出し方を続けると、子どもは「先生がぼくに対して言ったことは、必ず覚えていてくれる。ちゃんとやれば、誉めてもらえるし、やっていなければ、何度でも、確かめにくるんだ」という思いを持つようになります。
そして、その子に指示したことが定着したと思ったら、「もう、先生が確かめなくてもちゃんとBさんはくりあがりのメモができるね。りっぱだね」と声をかけます。Bさんは指示が定着したので、他の子どもに目をやることができます。
3.多様な考えの出る学級は、先生の対応も多様である。
話し合いの時間に、多様な考えを出して考えを広げたい、深めたいと、どの教師も思って授業を進めています。しかし、教師自身が発問に対して多様な対応ができないと子どもは限られたことしか発表しなくなります。
例えば、
T:どうやって考えましたか?
C:3+4=7だから 7です。どうですか?
C:いいです。(大勢)
この「いいです」の中には、いろいろなとらえ方があると思います。
C1:3から4つふえるんだから足し算だよ。
C2:「あわせて」 だから足し算にしたよ。
C3:前にも同じように合わせたときに足し算を使ったから、今度もそうした。
C4:3+4 て式を書いたけど、4+3じゃだめなのかな? でも、答えは7になるからまあいいか。
「いいです」の中にはこんなにたくさんの意味があります。C1からC4までの子どもの意見をとりあげていけば、3+4の意味は広がり、そして深まることができます。教師が「いいです」という言葉だけの対応を教えていくとC1からC4までの子どもの考えは埋もれてしまいます。つまり、発表が多くて学び合うクラスは、教師が意識してC1からC4の子どもに対応して、多様性を育てているのです。
◆式と答えだけを大切にする教師
→式と答えができたときに発言する子が育つ
◆考える過程を大切にする教師
→答えをどうやって出したのかという過程を発言する子が育つ
◆疑問を大切にする教師
→「計算はできるけど、どうしてかけ算になるのかよくわからない」と言える子が育つ
◆検討することを大切にする教師
→「答えは時速400キロになったけど、そんな車あるかなあ?」と生活と結びつけて答えの検証をする子が育つ。
(2005年2月7日)