愛される学校づくり研究会

【第1回】子どもに多様性を持たせる授業のコツ

1.自分の考えをもてるようにしよう

授業は自分(個)からスタートして、仲間(集団)での練り合いを通して最後はもう一度自分(個)にもどることが基本である。授業の中で必ず自分の考えがもてるようにしたい。それには、

  • 式だけでなく、絵や図や表を使って答えを導き出すように自力解決の時間を設ける。
  • 考え方が間違っていないかぎり、個人の考えは認めよう。どの人の考え方が一番いいですかなどの問いかけをしたら、発言しなくなります。
  • 答えが出せない児童には、「ここまでは、あってるよ」とか「次をどうしたらいいのかみんなの意見を聞いて考えようね」とか、机間巡視で支援しよう。まったく解けない児童には先生が絵や表をかいてあげて続きをかかせてあげればよい。とにかく、自分だけの力でやった部分がどこかにあるようにしたい。
     

2.先生も多様性のある発問や接し方をしよう

「8+3はいくつですか?」、「式はどうなりますか?」

 こんな接し方がずっと続くと子どもたちは一問一答の考えしか思いつかなくなります。

 (例)数直線で16という場所をみつけてほしい場合

C1: ここが16。
T : どうやってその場所を見つけたの?(なぜ? ではなく、方法手段を聞く)
C2: 15の次だから。
T : 次ってどういうこと?
C3: 15から1ふえるから1つとなりにいくんだよ。
T : どっちのとなりにいくの?
C4: 右にいくとだんだんふえるから右にいくよ。


 C1からC4まで同じ子が答えてもいいし、答えられなかったら他の児童でもよい。C1で先生が「よくできたね」で終わってしまっては、多面的な見方ができなくなる。子どもたちはもっとちがうやり方で16の場所の発見方法を説明できると思う。

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3.どんな発言の子を誉めたらいいのだろう?

式と答えをすばやく言った子を誉めていると最後までいきつけなかった子は何も言わなくなるし、「どうせあの子や先生が言った答えを最後はノートに書くんだ」という意識が身についてしまう。

 先生はこんな子を特に認めてほしい。

1年「ながさくらべ」の授業で、導入で自分の筆箱の鉛筆を比べていたら、「えんぴつのせいくらべだね」と言った子
私は、「ながさくらべ」という題ではなく、「えんぴつのせいくらべ」と題を書き、「 〜くんの言ったことを勉強しようね」と言いました。

わからないところが言える子
「ここまでは式もできたんだけど、ここから先がたすのかかけるのかわからない」

答えではなく理由が言える子
「だんだんふえているんだから、たすのだと思う」

次の段階を見通した考えが言えた子
「12÷3はいいけど12÷5だったらどうするのかなあ?」

自分の生活体験から考えている子
「そんな一人20個もおまんじゅうを食べることなんかないよ」
 

4.本時の授業と関係がなくても認めよう

分数の授業でした。「 アはいくつでしょう」と発問しました。

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C1: 0.5です。
T : そうかな。よく考えてごらん。
C2: 2分の1です。
T : そうですね。昨日勉強したのをよく覚えていましたね。


 確かに本時の授業は分数の授業でしたが、C1の言ったことは正解です。先生は「分数で言ってみましょう」とは限定していないのですから正解です。しかも本時では扱わなくてもいずれ、分数と小数との関係についてはこの単元で学習するはずです。本当に狭い範囲での解答を必要とされると多様性はどんどんなくなっていきます。本時で扱わなくてもいずれ学習することなのかどうかを先生が把握していれば、C1はがっかりすることがなかったことでしょう。

 子どもの発言がどこで生かされるかをきちんと把握しておくことが必要です。そうすれば、「よく小数で考えたね。今日はまだ使わないけど後でC1君の意見が出てくるときがあるから待っててね」と支援できたと思います。

(2003年9月22日)

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●和田 裕枝
(わだ・ひろえ)

愛知県豊田市立若林東小学校教諭。愛知教育大学の志水廣教授に800人見た中で一番授業がうまい人!と言わせた高い授業力の持ち主。特に、子ども把握力に優れ、授業では、その子のよさを活かす様々な授業技術を駆使する。和田さんの授業力を盗みたいという全国の教師は多数。