愛される学校づくり研究会

【第7回】鉄は熱いうちに打て! 1年生の生徒指導が3年間を決める!<制服は制服だ!>編

年が明けると、自分の進路に向かって一直線の3年生は卒業まで残りわずかである。卒業式と言えば、学校によっては「特攻服で参加した生徒がいる」とか、「色つき学ランで参加した」とか、「金髪軍団がたくさんいた」とか話題になる。本校はここ数年本当に落ち着いた、感動的な卒業式のもと3年生はそれぞれの進路先に巣立っている。
 本校にもいろいろな生徒がおり、全員がきちんとした服装・頭髪で参加というわけにはいかないが、あまりにも度を超した服装で参加した者は一人もいない。これは、3年生の担当の先生たちの卒業式にかける思いや、生徒自身が思い出に残る巣立ちをしていきたいという思いがあるのはもちろん、1年生のときからの制服に対する考え方、指導が生きてきているからだと考えられる。「制服は制服」―きちんと着こなすものだというねばり強い指導があったからだ。
 「制服」はきちんと着こなしてこそ制服である。「制服」着用の職業を思い浮かべてみると、警官・看護師・企業のOL・自衛官等多岐にわたる。集団意識、所属意識を高めることにより、責任感や協調性の質も高めることができているように思う。企業についてはイメージづくりにも貢献している。こんな職業の人が制服を着崩していたらという想像をしてみた。


●警察官
 警察官が腰パン、シャツ出しをしていたら…。格好悪りー! しかも、市民の味方という気がしない、ホンとこいつら大丈夫かと、信用できなくなってしまうのはわたしだけだろうか。そんなやつらの腰に拳銃がぶら下がっていたら、毎日いつ打たれるか心配しなければならな。
●看護師
 病院で看護士が、超ミニスカートで真っ赤なマニキュア…。男としては少しうれしと思うかもしれないが、なんか違うんでねぇのと不安にならないだろうか? 静脈注射を何回も失敗されそうである。
●寿司屋の店員
 「へい! いらっしゃい!」威勢のよい店員の姿を見ると、超ロン毛に帽子もかぶらず…。こんな店では食いたくねー! ねたに「塩」がふってあると思ったら「ふけ」だった…。こんな店にだけは入りたくねー!
●美容師
 制服の着方はだらしないし、爪がめちゃめちゃ長い…。おーいそんな手で頭洗われたら、頭が傷だらけになっちまうじゃねーかよ! やめてくれー!
●プロサッカー選手
 はっきり言って、だらしなくシャツ出ししている選手…。プロ意識が足りない。だって、審判から注意を受けることもあるんだから。
●プロ野球選手
 一流のプロ野球選手がシャツ出ししてプレーしているの見たことない。そんな選手がいたら大沢親分・張本氏から「喝!」だ!
●パイロット
 パイロットの制服姿はかっこいい!「グッドラック」のキムタクは実にかっこよかった。腰パンシャツ出しノーネクタイのパイロットじゃなくてよかったー。もっともそんな格好のパイロットがいる会社は間違いなくつぶれている。だれだって乗りたくねぇー!
●消防隊員
 火事消しに行くとき、防火服着崩していたらやけどしちまう! 絶対にない!
 

まだまだたくさんあると思うが、「制服」はビシッと着こなしてこそ価値があるのである。そんなことを根気よく生徒に教えていきたい。しかし、これだけ「自由」という自己責任を持たない言葉がおとなの世界にもはびこっている時代、「制服」に対する指導はこれまた生徒との持久戦になる。
 男子のシャツ出し腰パン、違反服、ボタン外し。女子のミニスカート、少々落ち目のルーズソックス。「服装の乱れは心の乱れ」―要するに、ただ単に服装を直させるだけでなく、その生徒の心も変えていく必要がある。もっとも個性とか規則が窮屈という主張をしているのだが、その気のある生徒ばかりになってしまうと埋もれて主張するものは何もないのだけれど。
 「個性」は努力して作りあげるものであり、内面的なものであるはずである。髪染めを買ってきて、髪の色を変えて、少し太いズボンはいて何が変わるかと言えば、見てくれが変わっただけで、本質的には何も変わっていない。「規則」についても生徒はすぐに厳しいという。本当に中学校の規則は厳しいのだろうか? わたしはそうは思わない。逆に社会に出てからの社則とか服務規定の方が厳しいと思う。中学校期にTPOについてしっかりと学ぶことは自分の将来にとって大切なことなのである。こういったことを十分ふまえて生徒に服装について語り続けなければならない。しかも、1年生のときからどう話をしていくかが大切になる。
 

生徒と先生の服装をめぐる心理戦1年初期段階
 ―「生徒と先生のあいさつをめぐる心理戦」

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非常に極端なシミュレーションをしてみたが、学校にはさまざまな生徒がいる。「服装」一つだけでなく、「問題行動」に対してどうかかわっていくかが大切になる。2年、3年になって服そうが大きく乱れてから注意したり叱っても手遅れになっている場合が多い。女子のスカートの長さについても同じである。TPOに合わせた服装、節度節制を守る姿勢、中学校生活のあるべき姿への理想を教師側がしっかりと持ち、日頃から語ることができていれば、そんなにひどくなることはない。3年生になり受験の面接のときだけ取り繕う卑怯な人間に育ってほしくない。

(「鉄は熱いうちに打て! 1年生の生徒指導が3年間を決める!」<苦しいことをどんどんやらせよ>編)につづく…

(2004年2月2日)

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●杉浦 嘉一
(すぎうら・よしかず)

小牧中学校教諭。学年主任、保健体育担当、剣道部顧問、伝統の駅伝部総監督。年度末に校内で密かに出す「人事ファン」(杉浦の人事異動予想紙)はあっという間に売り切れ。お茶目な中に本質を突く学校教育論を書かせたら右?に出る者はいない。子どもの傍らにいつもいる存在であるように学校中を動き回っている。