★研究会の名称にも関連するこのコラムは、校長の立場で実際にどのように取り組んでいるのかを事例等をもとに、ビジョンや考え方、想いを示して頂くものです。もちろん成功例もあれば、失敗例もあるはず。それぞれの実情に応じた生の情報が、学校づくりの参考になると思います。
【 第9回 】校長よ、熱く君を語れ
〜一宮市立浅井中学校長 山田貞二〜
♪唇よ 熱く 君を語れ 舞い上がれ 炎の鳥になれ〜♪
この歌詞を見ただけで思わず口ずさんでしまう方がいらっしゃるのではないでしょうか。1980(昭和55)年に大ヒットした渡辺真知子さんの名曲『唇よ、熱く君を語れ』です。「熱く」「舞い上がれ」「炎」と有無を言わさず“やる気”にさせてくれる曲です。この曲のタイトルをお借りするならば、今、私が愛される学校づくりで大切にしているのは、『校長よ、熱く君を語れ』という姿勢です。
私が校長になったのは2011(平成23)年。震災の年でした。何となく重苦しい状況の中でのスタートでした。当時の私の頭の中には「何も起きませんように」「責任をとる立場は重い」「全て自分が判断しなくては、でも自信がない」といったネガティブな言葉ばかりが駆けめぐり、極めて消極的で保身に満ちた気の毒な校長でした。
そんな私を「愛される学校づくり研究会」に誘ってくださったのが、同じ一宮市の先輩校長であった平林校長。これが私の校長としての転機となりました。
初めての例会の様子は衝撃的でした。校長や教頭といった管理職が一つのテーマに対して、自分の考えを臆することなく述べる。愛される学校をつくるための様々なアイデアを次々出す。ネガティブな考えはなく、ほとんどが「何とかしよう」という前向きの考え。時には、激しいやり取りが繰り返される。
今までの自分は何だったのだろうと考えが180度転換。「学校づくりは楽しいんだ」「管理職が語らなければ、学校は変わらない」「熱い思いを持てば学校は変わる」ということを学んだ。
そこで、私の学校づくりで何よりも大切にしたのが「芯柱」。そうです、五重塔の真ん中に打ち込む大きくて太い柱です。これを校長が打ち込む。打ち込んだら、自分の思いを熱く語る。生徒に、保護者に、教職員に、そして地域にも。
前任校で打ち込んだのが『凡事徹底』。全ての教育活動をこの『凡事徹底』に関わりを持たせる。そして、とにかく語る。自分の思いを語る。学校便りで語る。職員会議で語る。学校ホームページで語る。保護者会で語る。地域の会合で語る。集会で語る。
不思議ですね、シンプルなこの言葉は、誰しもが口にし、みな同じ方向を向いていくことが目に見えて分かる。学校も徐々に変わっていく。
現任校で打ち込んだ芯柱は『利他共生』。様々な思いを一つの方向に向けていくには、やはり、私がこの『利他共生』を語ることにあると感じている。この『利他共生』には、“for you”and“with you”というお洒落な副題もつけた。「語る」とは「吾」の思いを伝えること。学校を変えるときには、ボトムアップからではなく、トップダウンで。まだまだ本校での取り組みは始まったばかり。熱く熱く語る日々は続く。
♪oh beautiful and free 唇で 語れ 明日を〜♪
(2017年8月7日)