愛される学校づくり研究会

今、愛される学校づくりは

★研究会の名称にも関連するこのコラムは、校長の立場で実際にどのように取り組んでいるのかを事例等をもとに、ビジョンや考え方、想いを示して頂くものです。もちろん成功例もあれば、失敗例もあるはず。それぞれの実情に応じた生の情報が、学校づくりの参考になると思います。

【 第7回 】分析し、ビジョンを示し、愚直に実践する学校づくり
〜小牧市立北里中学校長 石川 学〜

校長職に就いて10年目を迎えた。途中の市教委勤務を除くと、7年目で3校目の勤務になる。この間の赴任先は、市教委の配慮があってのことではあるが、学校によってそれまでの勤務年数は異なるものの、すべて2度目の赴任という恵まれた状況である。言い換えれば、その学校の保護者には少なからず当時の教え子たちがいる学校で、協力的な保護者がいる学校への赴任ばかりである。そのような恵まれた環境の中ではあるが、当然のことながら地域性等も異なり、その時の学校の置かれた状況や課題は全く違うものである。

一方で、校長として生徒たちに願う思いはどの学校でも変わらない。生徒たちが生き生きと活動する中で、知徳体のバランスのとれた成長をしてほしいと願っている。そして、そうした生徒たちの姿を見て、保護者や地域から信頼されたり、愛されたりする学校をつくりたい、そんな学校にしたいと常に願っている。

これまでの取り組みの一部ではあるがふり返り、簡単に整理してみたい。

新任校長として赴任した学校は、小牧市内の中学校としてはある意味特殊な学校で、小学校の児童がそのまま中学校へ進学してくる小中一貫校のような学校である。赴任した時の中学1年生は70人である。これ自体は極普通のことであるが、小学校6年時の卒業児童数は80人と1割強の10人が私立中学校へ進学していたのである。当時校長として考えたことは、「よほど中学校が信頼できなくて、おそらく私立中学へ進学したのだろう。まずは生徒や保護者から信頼してもらえるような学校に」と。それが出発点であった。
 特に、進学してきた中学1年生の学力は決して芳しくなかったこともあり、授業を中心とする学校改革から始めた。自ら授業を見て回ることはもちろんのこと、学習規律の確立や徹底、授業研究の方法の見直しなどに先生方とともに腐心した。そうした改革がある程度進んできた頃には、外部指導者を招聘し、さらなる意識改革にも着手した。
 また、そうした取り組みと同時に、生徒たちの頑張りを評価や評定に反映させることを重視したり、その評価や評定がより妥当なものになるようにと、アナログな点検からデジタルな点検にシフトしたりして、指導と評価の一体化を図っていった。
 この中学校の勤務は2年と短かったため、確実な成果となって表れたかどうかは判断に迷うところであるが、もともと持っていた生徒たちの素直な心や学校として取り組んでいたボランティア活動と相まって、当時の教育目標である「自他のために動ける生徒」に近づき、保護者の方から少しは安心して送り出してもらえるような学校になったものと考えている。

2校目は、3年の市教委勤務を挟んでの赴任校である。そこは、校長・教頭・教務・校務の4人の内、教頭を除く3人が異動するとともに、新任教務・校務というスタートであった。そうだからといって学校の教育活動を停滞させる訳にはいかない、教職員にも不安感を与えたくないという気持ちが強かった。強力な教頭の献身的な指導もあり、結果的には案ずることはなかった。また、地域性は市内の誰もが認めるような難しいところである。そんな中でも、生徒たちは素直で意欲的であるものの、一部ではあるが発達障害等がある生徒たちへの指導に窮している状況でもあった。学校をより落ち着いた状況にするためには、授業に十分について行けていない生徒たちへの指導が必要であると判断し、前任校の経験も生かしながら、基礎基本の習熟・定着を図るとともに、学習への意欲喚起をより一層重視した。先生方の献身的な協力のお陰で、次第に成果が上がっていった。また一方で、こうした取組や成果が保護者や地域には十分に伝わっていないこともわかったため、学校ホームページを利用し、生徒や教師の頑張る姿を価値付けしながら情報発信にも努めた。こうしたことが功を奏して、生徒たちの学力もかなり上昇し、学校のよい現状も認識され、安心してもらえるような学校へと変貌していった。

3校目は現任校である。赴任する前年度、一部の学年が少々落ち着かず、授業も二人体制をとったり、放課中に巡回したりするなどの対応をしていた学校であった。昨年度赴任し、学校内の状況を知るために教室等の巡回をしていても、それらしい気配もなく比較的落ち着いた状況でスタートした。校内の教職員の体制が変わったことでリセット効果が十分に働いたものと考える。生徒たちの様子を見ていても何事にも比較的意欲的で、授業や部活動、行事と一生懸命取り組む姿を随所で見ることができた。先手を打ちながら学年経営や教科経営に当たれば、中学校では珍しいのかもしれないが、ほぼ無風状態で過ぎてゆく状況である。また、保護者や地域の協力もすばらしく、小学校並みの協力が得られる校区でもある。先生方や地域の協力があり、最初は心配してスタートした1年ではあったが、何事もなかったかのように過ぎた昨年度であった。
 今年度は2年目を迎えた。目標は、生徒たちのよさを校外に対しても見せ、知ってもらうこととした。スローガンは、「感じのよい、応援される生徒の育成」と掲げ、中学生はまんざらでもないと思ってもらえるように、「あいさつ」と「清掃」、「合唱」ができるようにと生徒たちに訴えかけている。極当たり前のことであるが、これが学校でも地域でも家庭でもできれば、すばらしい生徒たちと感じてもらえると確信している。生徒指導担当や特活担当と協力し、生徒たちの心を揺さぶりつつの取り組みがスタートしてのこの1ヵ月経過である。結果や成果が見えるのはまだまだ先の話ではあると思うが、何となく手応えを感じるスタートである。

上記のように、これまでの歴任校をふり返っての拙い実践ではあるが、これからも校長としてどんな学校にしたいのかビジョンを示し、教職員とともにいろいろと仕掛けをしながら「信頼される学校づくり」、「愛される学校づくり」に邁進していきたいと考えている。

(2017年5月8日)

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執筆者プロフィール

●石川 学
(いしかわ・まなぶ)

1981年に教員となり、小牧市内の中学校で、数学、特活、進路、生徒指導に邁進。2000年から4年間市教委指導主事を務め、生徒指導、いじめ・不登校対策、外国人児童生徒教育、英語教育など多方面に尽力。中学校長を務めた後、2010年より市教委学校教育課長。2013年より市内の中学校長として、学校の強み・弱みを分析しつつ、学校経営の充実に奮闘中である。