★研究会の名称にも関連するこのコラムは、校長の立場で実際にどのように取り組んでいるのかを事例等をもとに、ビジョンや考え方、想いを示して頂くものです。もちろん成功例もあれば、失敗例もあるはず。それぞれの実情に応じた生の情報が、学校づくりの参考になると思います。
【 第6回 】まず知っていただく
〜江南市立古知野北小学校長 水谷 政名〜
手前味噌ではあるが、保護者からの学校評価の自由記述にこんな言葉をいただいた。
「うちの子は1年生ですが、遠足の時に6年生が教室からみんなで手を振ってお見送りをしてくださって、なんていい学校なんだろうと思いました。本当にこの学校でよかったと思っています」。
恐縮しつつも、素直にうれしく思った。
1年生が遠足の出発時に、運動場から校舎に向かって、元気よく「いってきまーす!!」と言うと、その声を聞いた上級生の児童が、教室の窓から身を乗り出し「いってらっしゃーい!」と手を振りながら1年生に声をかけるのである。なんとも微笑ましい光景である。
保護者からの言葉は、そんな場面を取り上げていただいたのだが、その保護者は、その場面を見ていたわけではない。児童が、遠足から自宅に帰り、「今日の出発のときにね…」と思い出話として伝えることを考えられなくもない。しかし、1年生であれば、遠足で訪れた場所での出来事をメインに話すものであり、上記の出来事は、おそらく、児童の口からは伝わらないことであろう。
では、なぜ、この場面を保護者は知ったのか。それは、「学校ホームページ」からである。 校舎から手を振る上級生の写真とともに、「校舎から、4・6年生たちが“いってらっしゃーい!”と、見送ってくれます」と記事を掲載したのをご覧いただいたのである。
本校が全職員で力を入れているホームページによる「情報発信」が、生きた形である。
もちろん、全職員で力を入れているのは、多くの学校と同様に、児童が安心・安全に学校に通うことができ、温かな人間関係を構築しつつ、学力・体力の保証をするための実践を重ねていることであるのは言うまでもない。
であるならば、そんな先生方のがんばりを目に見える形にして、まずは知っていただき、きちんと伝えることで、保護者は安心して、児童を学校に送り出してくれるのではないかと考える。
「ホームページの効果」は、本コラムや本コラム以外でも、本会会員から、度々話題にされているため、今さら事細かに解説をするまでもないが、まさに、その効果が声となって伝わってきたことを嬉しく思う。
また、本校は、毎週土曜日に、私が編集している、週刊の「メールマガジン」を配信している。緊急メールではなく、「定期メール」である。
その週の主な出来事や、教育活動に対する協力のお礼、一週間の予定、連絡、お願い、ホームページの主な記事へのリンクURLなどを掲載している。
学校現場で、ほぼ毎日のように配られる、文書の量といったら半端ではないことはご存じの通りである。
中でも、紙の予定表や、行事の日程、提出に締切のある文書などは、外出先や仕事先で「見たいな」と思うときがあるものの、多くの保護者は折りたたんで持ち歩いているわけではなく、見られないことが多いと聞く。しかし、それらの文書を「メルマガ」にトピックとして集約し、持ち歩けるとしたらどうだろう。持って歩ける情報源がここに生まれるのである。
2年前の実施初年度は、緊急メール登録者全員に配信していたが、アンケートの結果、「読まない」「ほとんど読まない」という方が10%弱あったため、昨年度からは、「メルマガ配信希望者」のみの配信とした。すると、約90%の保護者が登録するという結果になった。ニーズの高さがうかがえた。
現在では、学校ボランティアに登録いただいている方にも配信をし、学校の状況をお伝えしている。
「ホームページ」も「メルマガ」も、学校が伝えたいことを積極的に伝え、より理解をしてもらうための手段の一つであるが、それらによって、信頼関係が生まれ、学校を愛していただけるのであれば、とてもありがたいことである。
一見、「冷たさ」を感じる「デジタルツール」ではあるが、それをきっかけに、学校や子どもを見守っていただける「温かさ」に替えていければ、と考える。
まだまだ若輩者の私である。教育の本質を大切にした上で、さらに一人でも多く、本校を愛していただける方を増やせるよう、今後も、真摯に研鑽を積んでいきたい。
(2016年10月17日)