★研究会の名称にも関連するこのコラムは、校長の立場で実際にどのように取り組んでいるのかを事例等をもとに、ビジョンや考え方、想いを示して頂くものです。もちろん成功例もあれば、失敗例もあるはず。それぞれの実情に応じた生の情報が、学校づくりの参考になると思います。
【 第3回 】笑顔とコミュニケーション
〜知多市立八幡小学校長 山田純一郎〜
本年度末に定年を迎えるに当たり、今まで思ってきたこと、考えてきたことを振り返ってみたいと思います。このコラムのテーマとは少し違うかもしれませんが、お許しください。
私は、校長として知多市立岡田小学校をはじめとして、新田小学校、八幡小学校の知多市3校で勤務しました。知多管内には5市5町あるわけですが、教職員の異動は5市5町にまたがって行われるので、3校とも知多市というのは珍しいかもしれません。校長として勤めた3校とも、「授業を基盤とした学校づくり」を学校経営の柱として取り組みました。その中で、私自身が意識したことが冒頭にあげた、「笑顔」と「コミュニケーション」でした。
「愛される学校」「誇れる学校」は誰にとってか。よく考えることだと思います。子どもにとって、保護者や地域にとっては当然だと思います。けれども、一番は勤めている教職員にとってだと思っています。そのためには、教職員の人間関係がよく、職員室の雰囲気が明るく、あたたかくなくてはなりません。また、教職員に活気があり、仕事を楽しんで行っている、子どものよい話題が職員室で語られる、そんな雰囲気でありたいと思っています。そのためにまず心がけていることが「笑顔」です。朝、職員室に入るとき笑顔で元気に「おはようございます」と言う。登校する子どもたちにも笑顔であいさつを交わす。そして、職員室でも意識して笑顔を見せる。教頭先生や他の教職員と気軽に冗談を言い合うなどです。きっと皆さんも、普通に行っていることではないでしょうか。けれども、このことを積み重ねていくと、「話しやすい」という雰囲気ができるのか、教職員の方から冗談を言ってきたり、話の輪に入ってきたりしてきます。(もちろん、時にはまじめな話もしますが・・・。)「職員室の雰囲気は管理職がつくる」といわれていますが、難しいことではなく、「笑顔」を見せることだと思っています。学校経営の柱を提示するのは校長です。けれども、実践していくのは教職員です。教職員の協力なくしてはどんなすばらしい柱をつくっても画餅になってしまいます。そのための第1歩が、「笑顔」だと思っています。
次は、「コミュニケーション」です。今から15年前の平成11年度に当時の文部省中央研修に行かせていただきました。そのとき、文部省の方から、「すぐ隣にいる人にも、話しかけずメールで用件を伝えている。これからが心配だ。」と話されたのを覚えています。今から15年前の話ですので、現在ではメール機能はもっと発達しています。私も便利なので、メールはよく使います。けれども、メールでは、人の感情までは伝わってきません。人の感情の機微を知るには、直接顔を見て話すことが一番です。情報機器の発達で、若い人たちのコミュニケーション能力が不足して、人間関係がうまくつくれないという声を聞きます。そのためには、コミュニケーションの「輪」を広げていくことが大切です。1対1から、2対1に、2対2、3対2へと、どんどんと人の輪を広げていく。このように仕掛けていけば、人間関係も自然と円滑になっていきます。本校でも、私自身が「笑顔」とともに「コミュニケーションの輪を広げる」ことを意識して率先して取り組んでいます。
けれども、お恥ずかしい話ですが、本校でも2年前に適応障害となり休職をした方がいます。そのとき、まず感じたのがコミュニケーション不足です。もう少し、親身になって話をしていれば、と悔いを残しました。教職員は学校を動かす原動力です。そのために、「和」と「輪」を意識したコミュニケーションが大切だと思い、日々実践に取り組んでいるところです。
最後に、新任2年目のときは生意気にも、「忙しい。忙しい」と言っていたように思います。それを聞いた親戚の方が、「忙しいということは仕事があるということだ。私たちは仕事がなければクビだ。」と言われたことを覚えています。この方は、自分で起業した方ですので、「仕事」ということの大切さ、厳しさを教えてくれたのだと思います。それ以来、「忙しい」という言葉を極力言わないようにしてきました。仕事に没頭することも時には大切です。けれども、没頭しすぎると、周りが見えなくなってしまいます。教職員がどんな表情で仕事をしているのか見なくなってしまう。だから、今は仕事が途中でも職員室をのぞいたり、教室を回ったり、校内を回ったりしています。
定年まで後8ヶ月です。これからも、「笑顔」と「コミュニケーション」を大切にして、教職員にとって、「愛される学校」「誇れる学校」づくりに取り組んでいきたいと思っています。
(2016年8月8日)