愛される学校づくり研究会

私の心に残る授業

★これまでのリレーコラム「授業のある風景」から、「私の心に残る授業」に切り替えて、自分が受けた授業、実施した授業、参観した授業等々、強く印象に残っている授業について、それぞれの主観をもとに示して頂きます。印象に残っているのには、きっと理由があるはずです。

【 第6回 】視聴覚教室での特別授業
〜曽田 修弘〜

私が小学校高学年の頃の話です。

エジプト視察から帰ってきた校長先生が報告をしてくれるということで、視聴覚教室で特別授業が行われることになりました。
 当時、教室にはテレビ(ブラウン管・天吊り)があってNHK教育テレビの道徳番組を見たり、算数や理科の授業ではOHPも使われていましたが、視聴覚教室での授業は、この時が記憶に残っている唯一の授業です。中学校は大規模校だったせいか、視聴覚教育的なものは(もしかしたら教室も?)なかったと思います。

教室のカーテンを閉めて、電気を消して、スライド映写機から大型スクリーンに映し出される画像を見ながら、校長先生の話を聞きました。
 校長先生による特別教室での特別授業ですから、私も周りの子も多少興奮気味だったと思いますが、実は話の内容もスライドもあまり覚えていなくて、私の関心事は、目の前にあるスライド映写機の動き(カートリッジにスライドを何枚か入れてリモコンでガシャンガシャン切り替える機構)と、部屋の埃がプロジェクターの光に反射してキラキラ浮遊している様子(チンダル現象)でした。

一つだけ校長先生の話の中で覚えているのが、「ラクダの肉を食べると、ガクリョクがつくんだよ」というものです。エジプトではラクダの肉は食用で、校長先生も現地で初めて食べたとのことでした。「へぇ〜」と思いましたが、これにはオチがあって、ラクダの肉は堅いので食べると「アゴの力」つまり「顎力」がつくという話でした。
 小学生に「顎力」はギリギリ通じないんじゃないかという気がしますが、その時はちゃんとわかるように説明されて「なるほど、校長先生なのに面白いことを言うなぁ」と感心(?)したのを覚えています。

あれからウン十年…。今の小学生や中学生は、家でコンピューターやタブレットやスマートフォンを使っていて、学校よりも進んだ環境にいるかもしれません。高校生や大学生はICTを使った学習が日常的になっています。
 文部科学省では、一人1台の情報端末の整備をはじめとした教育の情報化を推し進める施策を打ち出していますが、例えばあと4年後、2020年に今の状況を振り返ったとき、「あの頃は学校にタブレットが入り始めて、普通教室で使うのが話題になってたなぁ」「今では一人n台なんて当たり前、いつでもどこでも使ってるよね」なんていうことになっているんでしょうか。それとも…。

(2016年9月20日)

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執筆者プロフィール

●曽田修弘
(そだ・のぶひろ)

1969年生まれ。愛知県在住。娘2人の父。 学習塾の講師、OA機器メーカーの営業、家電量販店の販売員、カルチャーセンターのセミナー講師、小中学校のICT支援員などを経験。 現在は学習ソフトウェアメーカーのサポート担当として、主に中部地方の小中学校を訪問し活用支援を行っている。 好きな言葉は「創意工夫」「好奇心」「気概」。