愛される学校づくり研究会

私の心に残る授業

★これまでのリレーコラム「授業のある風景」から、「私の心に残る授業」に切り替えて、自分が受けた授業、実施した授業、参観した授業等々、強く印象に残っている授業について、それぞれの主観をもとに示して頂きます。印象に残っているのには、きっと理由があるはずです。

【 第5回 】初めて出会った授業が「私の原点」
〜江南市教育委員会 瀬上 圭太〜

私が20年以上前に赴任した学校でのお話です。教員になって初めて赴任した学校であり、見ること全てが驚きと学びの連続でした。
  赴任して間もなく授業を見させていただきました。教師が発問すると、意見がある子どもたちはその場に立ち始めました。他の意見を聞いて、途中から立ち始める子どももいました。発言の様子を見ていると、自分の考えを述べたり、意見をつなげたりしていました。その意見を述べる中で、新たな課題が生まれ、さらに授業が展開されていました。 この授業風景はある特別の授業を切り取ったものではなく、普段の授業の一場面でした。そして、他のクラスでも同様に進められていました。挙手による発言が当たり前と感じていただけに、赴任して最初の驚きでした。

新任3年目。5年生社会科の授業において、単元を通して自動車生産に携わる人々が身近にいることや多くの人に支えられていることをつかむ単元を計画しました。当時はインターネットなどの環境はありません。地元の自動車関連工場へ何度も足を運びました。ある工場では廃車の車をいただき、子どもたちと一緒に分解し、分解から多くの部品があることを実感しました。ある関連工場では、働く人にインタビューをしたり、実際に子どもたちに工場の部品組立を経験させていただいたりして、体験を通して働く人の思いや苦労にせまり、新たな課題を見つけました。
 授業では、教師の発問の後、意見のある子どもたちは立ち始め、各々意見を述べ始めました。先輩の先生方の見よう見まねで授業をしましたが、私が見続けた先輩の授業には、発言の質や量ともに全く及びませんでした。ただ、発言してうれしかったことを書いた子どもの日記を見て、温かい気持ちになったことを覚えています。

起立発言により授業を進めていくことをまねてきましたが、他の先生方の授業では子どもたちの輝きが違っていました。そこには、子どもたちが課題に向き合うように仕掛けがあり、めあてにせまるための手立てがありました。私が学んだことの中で、特に大切だと思ったことを3つにまとめました。

  1. 子どもの「はてな?」を大切にし、「はてな?」から授業の流れを考えること。
  2. 流れを予測し、山場と複線化を設定すること
  3. 子どもを理解し、子どもの考えを生かすこと

あれから20年以上が経ち、ICT機器の導入やネット環境の整備とともに、指導方法が広がり、多くの情報が得やすくなるなど、環境が変化してきました。しかし、実物に触れ、当事者に話を聞くことは今も昔も大切にされることです。先輩から学んだことを振り返り、今後に生かしていきたいです。

(2016年9月12日)

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執筆者プロフィール

●瀬上圭太
(せがみ・けいた)

新城市(鳳来町)、岡崎市、犬山市、扶桑町、江南市の小中学校にて、多くの先生方や子どもたちと関わり24年。また、平成24年度から2年間、愛知教育大学教職大学院にて、基礎領域学生と応用領域の同僚の先生方と出会い、新鮮な思いと幅広い見方や考え方など視野を広げる機会となった。現在は、江南市教育委員会指導主事として、江南市の先生方、教育委員会の方々とともに、江南市の子どもたちのために勤務している。趣味はサッカー観戦。気分は12番目の選手として、今日も日本がワールドカップ出場を願い、応援している。