愛される学校づくり研究会

玉置流・教師論

★ありがたいことに再び「愛される学校づくり研究会」のコラムに連載させていただく機会を得た。教育学部の教員となったこともあって、36年間の公立校教諭と管理職の経験を踏まえて、自分なりの「教師論」を書かせていただくことにした。話題があちこちに飛ぶコラムとなるが、月1回おつきあいをいただければ幸いである。

【 第8回 】教育実習での悩み(4)発問後の沈黙に耐えられない

第1期ゼミ生(4年生)から届いた「小・中学校の教育実習中、授業で困ったこと」に応えるシリーズの4回目です。

牧野紘子さんからは、次の困りごとが届きました。

「発問をした後の沈黙に我慢ができず、発問を重ねてしまい、結果的にわかりにくくなってしまいました」

これもよくわかる困りごとです。特に復習内容だと、子どもからすぐに反応が返ってくるはずだと教師は思っていますから、沈黙があると焦ってしまいます。どうして?なぜだれも何も言わないの?などという気持ちになってしまいます。

ここに落とし穴があります。「昨日の授業のことを聞いているのだから、答えられて当たり前だ」という考えがあるのではないでしょうか。子どもにとって、昨日からどれだけのことが身の回りに起こったことでしょう。昨日のことをすべて覚えていられるはずはありません。実は年齢を重ねている教師の方が覚えていないことが多いはずです。教師は授業前に教科書や指導メモを見て授業に臨んでいるはずです。このことを思えば、復習であっても反応が鈍ければ、子どもに教科書やノートを見直す時間を与えればいいのです。

発問後によくある失敗が、ある子どもから質問が出ると、教師は先ほどの発問に、つい親切心から言葉を足してしまうことです。発問がぶれてしまいます。質問した子どもはもちろん、理解したつもりで考えていた子どもまでがわからなくなってしまうことがあります。まさに教師がそのような状況を生み出しているのです。

「発問後の沈黙が耐えられない」という気持ちはよくわかります。このまま子どもが固まってしまったらどうしようと不安がよぎるのもよく理解できます。私にも覚えがあります。

こういう時は、いくつかの方法があります。一つは、意図的指名をすることです。強制的と言っては、誤解を生むかもしれませんが、まずは誰か一人でよいので、子どもの考えを引き出すことです。何か返答があれば、次に動くことができます。

「難しそうですね。隣同士で意見交流をしてください」と教室に動きを生み出すことも良い方法です。交流をしっかりしている子どもを指名して「とてもよく話し合っていましたね。どんな話が出たのか発表してください」と褒めながら発表を喚起すれば、その子どもは気持ちよく発表してくれることでしょう。

交流もうまくいかないようなら、「では、資料集の○ページを見て考えてみてください」と発問について考えることができるヒントを出せばよいでしょう。

研究授業などでよく出会う場面ですが、子どもの動きがないために、「今日はどうしたの?おかしいなあ。いつものように元気よくやってよ!」と子どもたちに発表を依頼する教師がいます。子どもたちはきっと心の中で「いつもと一緒じゃん」と思っていることでしょう。

(2017年1月11日)

準備中

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

1956年生まれ。1979年教員スタート。小学校、中学校教諭を経て、1998年教頭、2004年校長に就任。2007年より愛知県教育委員会主査、海部教育事務所長を経て、2012年に小牧市立小牧中学校長となる。2015年に早期退職をして、岐阜聖徳学園大学教育学部教授に就任。「書くことによって学ぶ」をコンセプトにゼミ生とともに創る「玉置研究室HP」発信中。著書には、「玉置流・学校が元気になるICT活用術―ICTは学校力向上ツール 」(プラネクサス)「学校を応援する人のための学校がよくわかる本(1)(2)」(プラネクサス)「「愛される学校」の作り方 −悩める校長をPTAを救う!実践とノウハウ」(プラネクサス)「スペシャリスト直伝!中学校数学授業成功の極意」(明治図書)など多数。
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