★ありがたいことに再び「愛される学校づくり研究会」のコラムに連載させていただく機会を得た。教育学部の教員となったこともあって、36年間の公立校教諭と管理職の経験を踏まえて、自分なりの「教師論」を書かせていただくことにした。話題があちこちに飛ぶコラムとなるが、月1回おつきあいをいただければ幸いである。
【 第3回 】教育書を読み「教育観」を広げ深める
我がゼミの第1期生に牧野紘子さんというかわいい女性がいます。
昨年度(27年度)、我がゼミ生となり、11月頃から5か月ほどで30数冊の教育書を読み終えています。
学級づくり、授業づくりをテーマとしているゼミですから、まずはその関連の書籍をたくさん読むように指導はしていますが、すべてのゼミ生がこれだけの量の教育書を読んでいるわけではありません。校長であったときには、様々な機会に教育書を紹介し、ときには書籍をプレゼントしたりしましたが、残念ながら先生たちの反応はありませんでした。
教師の力量を高めるには、興味のある分野だけでもよいので、ぜひとも教育書を読むべきだと考えています。ゼミ生の牧野さんの読書量を知り、なぜ読むことにしたのか、その原動力は何かを聞くことで、今後の教員養成の仕事に生かしたいと思ったのです。今回は、その報告です。
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玉:「なぜ教育書を読むようになったのですか」
牧:「玉置先生との出会いが大きいです。私が研究したい事柄をお話した時に、すぐにこれを読みなさいと書籍を紹介していただきました。他のゼミ生へも同様にすぐさま書籍を紹介される先生を見て、凄い!と思いましたが、それだけ教育書は面白いのかなとも思ったのです」
玉:「私の場合は、いわば営業努力です」
牧:「それで、野中信行先生の『3・7・30の法則』が書かれた本を読みました。それまでほとんど教育書というものを読んだことがありませんでしたから、とても新鮮でした。学級づくりのベースになることを研究しようと思っていましたら、こういった本をたくさん読んでみようと思いました」
玉:「それまで本そのものは読んでいたのですよね」
牧:「そうです。月に1、2冊は読んでいましたが、この野中先生の本と出会い、研究を意識するようになってからは、教育書ばかり月6冊ほどのペースになりました。目次を見て研究に関連がありそうだと思ったら、次から次へ大学の図書館で借りて目を通しました。ただし、全ページを読破しているわけではありません」
玉:「それでも、たくさん読んでいますよ。読もうという原動力は、研究のためということですか。そういえば教師力アップセミナーに参加する前には、講師の本を必ず読んでいますね。必ずしもあなたの研究に関係がある方ではありませんね」
牧:「セミナー前に読むのは、ただ単にその方をあらかじめ知っておきたい。知っておいたら講演もよくわかると思ってのことです」
玉:「そうは言うけどね、なかなかできることではないですよ」
牧:「玉置先生に言われたことも関係あります。受け身ではいけないと!自分で何ができるかと考えたら、自分にできることは本を読んでからお会いすることだと考えたのです。私たちはセミナーのお手伝いをするといえ、無料で参加させていただいているのですから、何か応えなくては!という気持ちもあります」
玉:「運営委員の皆さんに伝えておきます。きっと喜ばれると思いますよ。あなたは決めたことを絶対にやりぬこうと思うのですね」
牧:「昔から頑固と言われています」(笑)
玉:「教育書を読んでみてどうですか」
牧:「発見がとても多いです。先生たちはこんなことを考えてやっていたんだ!と思うことや、これまでの私の教育についての考えが覆されるようなこともあります」
玉:「なるほど」
牧:「教員になれたら、やってみたいことがいっぱいできました。あれもやってみたい、これもやってみたいという気持ちです。でも、初任者ではそんな余裕はないだろうかとも思っています。また学校の考え方もあるだろうと・・・」
玉:「今の気持ちは大切にしてほしいなあ」
牧:「貯蓄しているつもりで教育書を読んでいます。学校で働き始めると、本を読む時間もなかなかないだろうと思っています」
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このような会話をしました。教育書を読むことは、学生であっても、少なくとも教育観を広げ深めることに役立つことを会話の中から感じました。4年生後期に担当している「教職実践演習」の講義の中で、「教育書の勧め」を入れてみようという気持ちになりました。
(2016年6月20日)