★このコラムは、愛知県一宮市の公立小中学校長を歴任された平林哲也先生によるものです。平林先生は「発信なければ受信なし」の理念のもと、校長としての思いを学校ホームページに毎日発信していらっしゃいました。アクセス数が増えるのに伴って強くなる保護者や地域との絆。さまざまな実践を工夫されてきた平林先生に、学校と家庭・地域との結びつきはどうあるべきかについて語っていただきます。
【 第12回 】「地域とともにある学校」に求められるもの
コラム最終回
みなさんにお付き合いいただいた本コラムも、今回が最終回となりました。
「地域とともにある学校」とはどんな学校なのか、中教審からイメージモデルが示されていますが、今後それを具体的に構築していくには相当の困難や苦労が予想されます。
では、今後私たちはどのような点に着目しながら「地域とともにある学校づくり」をしていけばよいのでしょうか?
組織の連携・協働の要
組織は人で動きます。「地域とともにある学校」の組織も、要となる人が動かなければ、結局は絵に描いた餅にすぎません。
上図のキーマンは、やはり「校長」であり、学校と地域をつなぐ軸となる学校運営協議会の「地域連携担当教職員(仮称)」であり、地域学校協働本部の「地域コーディネーター」です。
キーマンの主軸は、当然ですが「校長」です。「校長」は、学校と地域の連携・協働をマネージメントしなければ上図は機能しません。学校と地域の連携・協働の具体的イメージをしっかり描き、その実現のための具体的なアイデアを持ち、地域との幅広い人間関係を有することが必須条件です。そして、自ら組織の各所に働きかるとともに、常に全体を俯瞰する視点が持っていなければなりません。そして、どんな思いも「発信なければ受信なし」ですから、円滑な組織運営を促す広報活動も重要な仕事の一つとなります。
また、学校側のキーマンの一人「地域連携担当教職員(仮称)」は、現在の学校事情を考えるとたぶん多くの学校では「副校長や教頭」となることでしょう。日々、あれやこれやの仕事を抱える「副校長・教頭」です。なんでもかんでもこなせる「スーパーマン副校長・教頭」はいませんので、その複数配置がない限り、ますます負担が増加します。地域と連携する「チーム学校」を実現するには、まずは「副校長・教頭」の複数配置、あるいは加配による校内の人員確保が実現されなければなりません。しかし、学校への人的配置の理想と現実のギャップは大きく、残念ながら、この解消がすぐさま進むとは思えません。「地域とともにある学校づくり」を加速させるには、人的配置を理想に近づける対策が急務です。
地域側のキーマン「地域コーディネーター」は、地域はもちろん、学校事情にも精通している人でなければ、さまざまな取り組みをコーディネートすることはできません。地域コミュニティが十分に醸成されていない地域では、活動組織や担当者をいくら決めたとしても実際には機能しません。その人材確保は、どの地域においても大変難しい問題です。
また、学校と地域がパートナーとしての思いや願いを共有化していなければ、決して連携・協働はできません。これまで以上に、学校側のキーマンと地域側のキーマンとの密接な関係性が求められます。
さらに、中教審答申でも「地域コーディネーター研修」の必要性を指摘していますが、だれがどのようなプログラムでその研修を進めていくのか、大きな課題です。その地域にお任せではなく、学校教育と社会教育、いわば「チーム行政」といった視点も重要になります。
今後は、組織の連携・協働の要となる「校長」・「地域連携担当教職員(仮称)」・「地域コーディネーター」のあり方について、先進地域から全国に向けての情報発信がますます必要となります。
地道に歩む
すでに「コミュニティ・スクール」を導入している地域もあれば、その実現に向けた「○○型コミュニティ・スクール」を進めている地域もあります。しかし、全国にはまだまだこれからという地域もたくさんあります。
現在学校が抱えている課題の多くは、学校と地域の連携抜きには解決できないものとなっていますから、形はどうであれ校長の強いリーダーシップが求められています。実際には手間や時間がかかることも多いでしょうが、とにかく「はじめの一歩」を踏み出さない限り、学校と地域の連携は成立しませんし、連携がないところに協働はあり得ません。
「おらが町の学校」をつくるためには、しっかりとした共有ビジョンを描きながら、できることから地道に歩むしかないのです。そして、血の通った人と人の「共通の思い・願い」を形にしていくことだと思います。
感謝
連載コラム「地域とともにある学校づくり」を通して、これまで私が実践を通して学んできたことがらを述べさせていただきました。私自身、毎回、原稿を書くことによって考えを振り返ったり、深めたりすることができる貴重な機会となりました。
読者のみなさんにはお付き合いをいただき、感謝申し上げます。ありがとうございました。
(2016年3月21日)