★このコラムは、愛知県一宮市の公立小中学校長を歴任された平林哲也先生によるものです。平林先生は「発信なければ受信なし」の理念のもと、校長としての思いを学校ホームページに毎日発信していらっしゃいました。アクセス数が増えるのに伴って強くなる保護者や地域との絆。さまざまな実践を工夫されてきた平林先生に、学校と家庭・地域との結びつきはどうあるべきかについて語っていただきます。
【 第7回 】地域に参画する活動の創出
地域は学びの場
学校と地域が双方向の交流を持つことは、学校と地域の連携にとって、とても重要であることは言うまでもありません。学校が学びの場であることは当然ですが、地域もまた児童生徒の大切な学びの場であると考えれば、その機会はいくらでも創出できるものです。
前回は、地域の人を学校に迎え入れ、児童生徒とふれ合う機会をどう創出するか、具体的な事例をもとに述べました。今回は、児童生徒が地域に出かけ、地域の人々とふれ合う活動をどう創出するかについて述べます。
地域で生徒の自己有用感を高める
どの学校でも同じだと思いますが、一宮市立木曽川中学校では、さまざまな地域行事に生徒がボランティアとして「参画」していくことを大いに奨励しています。例えば、連区の敬老会や運動会、地元商工会主催の祭り(「一豊まつり」※地域は山内一豊の出身地)、大規模災害を想定した避難訓練などがあります。
毎年9月に行われる連区敬老会には大勢の生徒が運営ボランティアとして参加します。大半は部活動を引退した3年生の生徒たちです。当日は、会場玄関で来場者の出迎え、受付案内、座席案内など、敬老会運営の下支え役を担っています。来場者に優しい言葉をかけながら、笑顔で対応する生徒の姿に、来場者はもとより運営スタッフからも絶賛の声をいただき、会場の雰囲気づくりに一役買っています。 |
「一豊まつり」では、吹奏楽部がパレード演奏し、沿道に詰めかけた人々を魅了します。茶道部は呈茶会でお点前を披露します。ともに、日ごろの地道な練習の成果をじかに地域の人々に紹介するとともに、自分自身の技量を確かめる機会となります。ですから、生徒も地域も“Win-Win”の関係がつくれるわけです。 |
どんな地域行事も、生徒たちはボランティア参加することによって、地域の大人たちから認められ、頼りにされます。そのことが生徒の自己有用感を高めるのです。将来、生活基盤を地域に残す生徒も、他の地域に移す生徒も、地域社会の一員として生きていくわけですから、中学生の時期に地域とのかかわりをたくさん経験し、自己有用感を育んでおくことは極めて重要だと思います。 |
校長としての仕掛けが大切
木曽川中学校の教育キーワードの一つに「参画」があります。
それぞれの個人が持つ力を、所属する学級、学年、部活動、学校のために発揮するだけでなく、地域社会、日本社会、世界にも関わりを見出し、さまざまな機会を通して「参画意識」を高める工夫をしています。
今回ご紹介した事例は、地域との懇談会の折りに要請があったものもありますが、その多くは学校側からお願いし、中学生が地域に「参画」する機会をいただいたものです。校長は、日ごろから地域の会合に積極的に顔を出し、地域のニーズを把握するとともに、どのように中学生をそのニーズの中に関わらせていくかを具体的に考えることが必要です。
また、集会時の校長講話、学校ホームページを通して、日ごろから生徒たちに「参画意識」の醸成を仕掛けておくことも重要です。そして、「参画」する場を創出しなければ、生徒の「参画意識」は育ちません。校長は、学校と地域を結ぶ取り組みをマネージメントしていくことも学校経営のポイントの一つです。
(2015年10月12日)