愛される学校づくり研究会

地域とともにある学校づくり

★このコラムは、愛知県一宮市の公立小中学校長を歴任された平林哲也先生によるものです。平林先生は「発信なければ受信なし」の理念のもと、校長としての思いを学校ホームページに毎日発信していらっしゃいました。アクセス数が増えるのに伴って強くなる保護者や地域との絆。さまざまな実践を工夫されてきた平林先生に、学校と家庭・地域との結びつきはどうあるべきかについて語っていただきます。

【 第3回 】学校経営に保護者の力を

保護者と学校の関係は良好ですか?

学校と家庭の連携が大切ですが、空席の目立つPTA総会、私語や参観マナー違反が指摘される学校公開、日ごろの我が子中心の言動……。
  みなさんの学校では、そんな問題が職員室で、あるいはPTAや地域の会合で話題に上ることはありませんか?
 確かに、今どきの保護者は勤めがあって平日は学校に何度も足を運べない、教室には気軽に入れない雰囲気がある、学校は我が子のことをきちんと受け止めてくれていない……、そこには、保護者には保護者なりの言い分があります。まずはそれを真摯に受け止めようとする学校側の姿勢も求められます。
  連載コラム第2回で指摘したように、日ごろの学校の様子や教育に対する考え方、学校の方針などをこまめに情報発信していれば、保護者と学校の関係が崩れて大きな問題に発展することはありません。しかし、さまざまな問題の根底には、保護者と学校の良好な関係づくりがなされているかどうかが問われる部分もあります。
 PTA総会や授業参観、学校経営や生徒指導のあり方など、保護者と学校双方が同じ土俵に立って考える機会があれば、双方が歩み寄れる余地があるのではないでしょうか?

学校経営に保護者を巻き込む機会を

PTAと学校が共通の土俵に立って考える機会として、スマホをめぐる問題を取り上げたことがあります。
  校長在任中、私は機会あるごとに「スマホや情報端末機器をめぐる問題は、基本的にそれを持たせている保護者の責任である」と言い続けてきました。もちろん問題が生じた場合に、学校が何の指導もしないというわけではありません。日ごろから、学校ではインターネットに関わるルールやマナーについて指導したり、学校にスマホや情報端末機器持ち込むことを規制したりしてきました。しかし、何らかの問題が生じたときには、保護者の関わり抜きには解決できないという意味です。
 一宮市立木曽川中学校では、毎年、PTA役員が中心となってインターネット利用についての保護者講習会を開催しています。この講習会は、小牧市立小牧中学校で始まった活動ですが、保護者が本音で語り合う中で、子どもたちを取り巻く問題に保護者がどのように対処すべきかを話し合い、学び合う機会とするものです。
 木曽川中学校PTA役員も、小牧中学校をモデルに一宮市内の中学校PTAが開催した講習会に積極的に参加し、生徒たちの実態調査をしながら、現状に合った講習内容を自主的に企画し、運営していきました。もちろん、この活動を後押ししたのは私ですが、PTA役員のみなさんは私の予想をはるかに超える企画・運営力を発揮されました。同時に、この活動を通してPTA役員のみなさんが問題意識を共有し、保護者の結束力を強固なものにしていったのです。今では、学校経営の一部を支える大きな力となり、PTAが学校のパートナーとして機能しています。

学校経営に参画したい保護者もたくさんいる

保護者の中には、PTA役員として、あるいは学校支援ボランティアとして積極的に学校に関わりたいと願っている人たちが、実はどの学校にもたくさんいるのです。
 保護者は職業や趣味もさまざまで、いろいろな専門分野のプロも大勢みえますし、私たち教員の知識や技能をはるかに超えるものを持ってみえます。学校の現状を積極的に発信し、学校経営に参画できる部分で協力を要請すれば、きっとそれに応えていただける人がいるはずです。学校として、そういった人材を眠らせておく手はありません。
 学校経営上の問題には、案外、こういう方々と手を結ぶことで解決の糸口を見つけることができるものもあるのです。頼れる人材を掘り起こし、パートナーとして活躍していただく場を設けるのも学校経営の秘訣です。

(2015年6月15日)

平林先生

●平林 哲也
(ひらばやし・てつや)

1977年一宮市にて小学校教諭となる。小学校教諭・教頭・校長18年、中学校教諭・校長20年を経験し、2015年3月定年退職。校長在任中は、「発信なければ受信なし」をモットーに、学校ホームページを通して児童生徒の様子、学校や校長としての思い・考えを、趣味の写真とともに365日掲載。現在、一宮市教育センター・副センター長として各種の教員研修をコーディネートしている。