愛される学校づくり研究会

地域とともにある学校づくり

★このコラムは、愛知県一宮市の公立小中学校長を歴任された平林哲也先生によるものです。平林先生は「発信なければ受信なし」の理念のもと、校長としての思いを学校ホームページに毎日発信していらっしゃいました。アクセス数が増えるのに伴って強くなる保護者や地域との絆。さまざまな実践を工夫されてきた平林先生に、学校と家庭・地域との結びつきはどうあるべきかについて語っていただきます。

【 第2回 】学校ホームページを地域との連携ツールに

地域からの苦情に困っていませんか?

夕刻から学校に入る電話の大半は、保護者や地域の方からの苦情、お叱りといった内容ではないでしょうか?正直な話、だれも取りたくはない電話です。
  電話の対応者がしきりにお詫びの言葉を繰り返したり、頭を下げたりしている光景が目に浮かびます。電話の相手からお褒めの言葉がいただけるのは、年に数回あればよい、それが学校の現実です。   その電話の内容から、当然お詫びをしなければならない部分もあるでしょう。しかし、一部の子どもたちの行動が、まるでその学校の子どもたちすべての行動であるような論調に真っ向から否定の言葉を返すこともできず、気が滅入ったという経験をもつ教職員もきっと多いはずです。   どうすれば、毎日、生き生きと活動している子どもたちの姿を地域の人々に知ってもらえるのでしょうか?

学校ホームページは学校経営の重要なツール

ひと口に「地域」と言っても、そこには学校との関わりの度合いが異なる人々が暮らしています。学校に対する関心も千差万別です。
   児童生徒の保護者はもちろん、卒業生や地域関係者、直接学校と関わりのない人にも幅広く学校の様子を知ってもらうためには、学校ホームページの積極的な活用が効果的手段となります。
   現在、学校ではどんなことが行われているのか、学校はどのような目標に向かって日々の教育活動を行っているのか、まずは情報発信がなければ保護者や地域の方との連携はあり得ません。発信がなければ受信はありえないのですから。
 もちろん、その人によって学校への関心度が異なります。ふだんは学校に縁のない人にも学校ホームページの存在を知っていただくためには、それなりの広報・宣伝活動が必要です。私の場合、地域の行事に出かけるたびに、必ず学校ホームページの存在を語り、アクセスを求めました。時にはモバイルパソコンを持ち込んで、その場で見ていただく機会を設けたこともあります。また、戦略的に地域の話題を記事にし、関心を持ってもらえるように仕掛けたこともあります。
 大切なことは、校長をはじめとして教職員全員が学校ホームページを「学校経営の重要なツール」としての認識を共有し、その運営に当たる姿勢です。

日常的な発信は「漢方薬」

学校ホームページを情報発信ツールにすることは、手間のかかる面倒な作業に思えるかも知れませんが、SWA(スクールウェブアシスト)のような手軽なブログ形式を用いることによって日常的な発信が容易になります。
 しかも、児童生徒や教職員が頑張っている姿を、写真を軸に視覚情報を中心とした記事として発信することで、今、学校では何が行われているのか、学校はどんな意図をもって教育活動に取り組んでいるのかなど、日々の学校の様子を「見える化」することが可能となります。
 保護者を含めて地域の理解を得るには、まずは学校の様子を視覚的にとらえてもらうことが重要です。最近では、そのことを念頭に置いた学校ホームページがずいぶん増えてきました。しかし、まだまだ記事に込められたメッセージが伝わってこないものも多いのではないでしょうか?その点、管理職の姿勢が問われていると言っても過言ではありません。
 日常的な情報発信は、いわば「漢方薬」です。即効薬ではありませんが、アクセスしていただける方々に、じわじわと効いてくる「漢方薬」です。学校に対する理解が少しずつ深まるにつれて、学校への協力や支援の力が強くなるのです。どんなに高い目標も一気に達成することはあり得ません。一つ一つの積み重ねこそ、いざというときに最大の力となるのです。

(2015年5月11日)

平林先生

●平林 哲也
(ひらばやし・てつや)

1977年一宮市にて小学校教諭となる。小学校教諭・教頭・校長18年、中学校教諭・校長20年を経験し、2015年3月定年退職。校長在任中は、「発信なければ受信なし」をモットーに、学校ホームページを通して児童生徒の様子、学校や校長としての思い・考えを、趣味の写真とともに365日掲載。現在、一宮市教育センター・副センター長として各種の教員研修をコーディネートしている。