愛される学校づくり研究会

★人間には誰にも知的好奇心があります。仕事のため、趣味のため、実益のためなど、様々な目的で我々は学びます。学校のころから勉強が好きだった人も、社会人になってから学ぶ楽しさを感じた人もあるでしょう。ここでは、その楽しさを感じることになったきっかけを振り返り、学ぶことの楽しさを教えてくれた人やことについて紹介します。

【 第6回 】なんでもやってみる
〜株式会社EDUCOM 小森弘毅〜

「学ぶ」と聞くと、「テスト勉強」などがすぐに浮かんできてしまいます。昔から勉強が大嫌いで運動ばかりしていた私ですので、今回はスポーツに関わるところから「学ぶことの楽しさを教えてくれた人」についてお話しさせていただきます。

私が教員の時の話です。新任2年目で小学校から中学校へ異動しました。中学校というと、若い教員は当然のように部活動の顧問となります。私が赴任して2日目、担当の教員から「小森君は、女子卓球部をよろしくね〜」と唐突に言われ、女子卓球部の顧問となりました。正直なところ今までやったこともないスポーツだったので、モチベーションもそこまであがらず…といった感じで、ただ活動風景を眺めて最初と最後に挨拶をするだけの日が続きました。生徒も私が卓球経験者でないので、何も言わないことを知っており、少しダラダラとしながら部活の時間が流れていました。私自身が過去に経験した過酷な部活動の風景のそれとはまったく違う雰囲気でしたが、その時の私は何も考えずその空間に身を委ねていました。

顧問になり2週間経った頃に試合がありました。前述から想像していただく通り惨敗。生徒も負けたというのに、笑っている。そんな光景を見ていたら、すごく腹が立ってきました。もちろん負けたのにヘラヘラしている生徒に対してもそうですが、試合に負けたというのに「悔しい」という感情が湧いてこなかった自分に対しての怒りが強かったのです。「今まで何かの勝負事で負けた時に悔しいと思わなかったことがない自分がなぜ」と考えた結果、「卓球」という知らない事から逃げて何も取り組んでいないからだという答えに辿り着きました。
  次の日から、卓球の本を買って勉強したり、卓球の試合を手当たり次第に観たり、ラケットを買って自分でも練習をしたりと自分が思いつくこと全てをとりあえずやってみることにしました。勉強していくと卓球はラケットの選択から始まり、サーブの種類の多彩さ、相手のタイプによって変わる戦術などなどすごく奥が深く、私が今まで全く知らない世界がありました。中学校赴任1年目で教材研究や授業準備、そして自分のクラスのことなど初めてのことだらけの中で、卓球の勉強をすることは大変だったはずなのですが、すごく充実していたことを覚えています。
  気付いた時には、私自身が生徒と同じ練習メニューを行い、生徒と向き合って練習をし、指導するようになっていました。生徒は練習方法や指導方法が変わることによって、最初は抵抗があったものの、思いのほかすぐに私の指導を聞いてくれるようになりました。私も指導した内容が試合でバシッと決まるとこれほど楽しいことはありません。最終的には、生徒とプロ選手の試合を観ながら、一緒に練習方法を考えるなど、卓球を通じて学ぶことの楽しさを共有できるようになったと思います。赴任1年目で市内優勝、2年目で県大会まであと1勝というところまで戦えるチームに育ったことは、余談であり自慢です。(私自身は春日井市の一般の部に出場し、一回戦負けでした。)

EDUCOMに入社し、全国の様々な教育の実態に触れることがあります。その地域の学校が困っていることをどうしたら解決できるのか悩むこともありますが、そんな時は「なんでもやってみよう」精神でEDUCOMである私ができることを提案していきたいと考えています。その中にひとつでも、学校がハッピーになることがあればと思っています。

もし最初から生徒が真剣に部活動に取り組んでいたら、私は未知の物事に飛び込んで学ぶという楽しさを今も知らなかったのかもしれません。そう考えるとあの時のやる気がなかった生徒たちが私にとっての「学ぶことの楽しさを教えてくれた人」なのだと思います。

(2014年10月27日)

学ぶ楽しさ

●小森 弘毅
(こもり・ひろき)

愛知県名古屋市で生まれ、幼少期に春日井市へ引っ越し、高校までを春日井市で過ごす。小学校6年生のころに下級生の面倒を見るのが楽しくて、教職の道を志す。一人暮らしをすることを目標に県外の教育学部を探し、静岡の大学へ進学する。卒業後は、愛知県の教員として務めるが、民間企業での経験もしたいと考え、退職。それでも教育関係の仕事がしたいと考えてEDUCOMへ入社。現在は愛知県の知多半島地区のサポート担当として勤務。
 EDUCOMでは全国各地の自治体に訪問する中で、日本の中でも教育の考え方の違いが知ることができとても刺激を受ける毎日である。これからも全国さまざまな教育現場で先生方を助けられるようなサポートを目指したい。