愛される学校づくり研究会

辛口コラム

★このコラムは、津市の太郎生小学校の校長だった中林則孝先生によるものです。中林先生は校長としてほぼ毎日「学校便り」を発行していらっしゃいました。教室で起こるドラマをドキュメンタリー風に書き綴った便りからは長年の実践に裏打ちされた深い教育哲学と固い信念を感じます。真っ直ぐで媚びを売らないその論調から「中林則孝のゴメンネ辛口コラム」というタイトルにしました。教育にまつわるさまざまな話題を独特の切り口で切ってもらいます。

【 第6回 】新任教員の指導ワースト7

私は初任者研修の指導員をしています。ほぼ日刊で初任者向けに「教室はドラマ」という通信を発行しています。その86号では「初任者ワースト7」を特集しました。1学期の指導を通した中で、初任者の授業の問題点を7つ拾い出したものです。その86号をそのまま掲載させていただきます。
 初任者ワースト7は、とりもなおさず私の指導力不足を露呈しています(涙)。

1 無為に過ごす黄金の3日間

4月初めの3日間は子どもへの指示が通ります。子どもたちはまるで天使のように思えます。その3日間の間に学習規律を整える必要性を初任者には強調しました。
 でも、その3日間はあっという間に過ぎてしまいます。1学期の半ばを過ぎ、子どもたちの規律が乱れてきた時、初めて「黄金の3日間」の重要性を実感するようです。「最初の3日間にもっと指導しておくべきだった」と。
 黄金の3日間の重要性は話を聞いただけでは理解できないようです。3日間の間に例外を許さず、徹底する姿勢が必要です。そのためにはやりきるという覚悟がないといけないです。そのことは初任者には分かりにくいということが分かりました。来年度は指導の方法を変えてみます。ということで、自戒の意味をこめて……。

2 本時のねらいをしぼりきれない

指導案には「本時の目標」が書かれています。でも、それは大きな単元目標だったり、教科目標だったりします。本時でどんな力を付けるかということが焦点化されていません。ねらいが明確だと、子どもの反応にも対応しやすいです。そのことを何度も言いました。でも、1学期が終わる時点では十分ではありません。ねらいをしぼるには教材をしっかり読み込めていないといけないのです。それができないのです。本時のねらいをピンポイントでしぼるという姿勢を持ち続けることが必要です。

3 赤刷りに頼りすぎている

赤刷り本に頼りすぎています。特に国語。教科書はその教科のエキスパートが作成し、文部科学省の検定を受けています。そのため教材としてはとても優れています。でも、赤刷りや指導書はそうではありません。十分な検討はされていません。
 教材研究は教科書を何回も読むことから始めます。その後で指導書や赤刷りを見ることはあるでしょうが。私は通常、提案授業の直前に教科や教材を知らされます。それから急いで教科書を読み、教材研究をします。対して、提案授業をする初任者は指導案を書いているのです。教材研究をする時間は取っているはずです。チラ見の私の方が教材研究が深いというのは情けなくはありませんか。皆さんは初任者とはいえ、大人のプロの教師なのです。
   赤刷り本を使ってもかまわないけど、それに頼っていると教材研究を自力でできないまま1年間が終わってしまいます。

4 指示の後の確認不足

相手が大人であれば、「○○しなさい」と言えば、それで責任を果たしたことになります。でも、小学校の教室ではそうはいきません。「○○しなさい」と指示した後は必ず○○できているか、確認する必要があります。最初はそのための時間がかかります。でも、しばらくすると子どもたちが確実にできるようになります。でも、確認をしていないと、いつまでたっても子どもたちには定着しません。
 子どもに対しては「指示するだけでは不十分」という意識が必要です。

5 ノート指導が甘い

ノート指導ができているかどうかは、教師力の基本を見るバロメータといえるでしょう。そもそも指導以前に、どのように書かせるのが好ましいかということを確実にイメージできないといけません。次はそれを子どもたちに徹底することです。これも先に書いたように、継続した確認が必要です。
   ノート指導がおろそかであっても授業を進めることはできます。だから、おろそかになりやすいのです。私はこの1年間、継続して初任者の授業を見ることができます。一時ノート指導ができていたのに、油断していたため雑になってきたというケースもありました。

6 教育書を読まない

毎回訪問する初任者の机の上で教育書を見ることは少ないです。目にする書籍はいつも同じです。新しい教育書があると、すぐに分かります。でも、残念ながらそんなことはほとんどありません。教育書を読む時間がないほど忙しいのでしょうか。
 教師として力を付けるためには、自分のあこがれの教師を持つことが必要です。そのためには教育書を読むか、名の知られている講師の話を聞くことが近道です。講演で全国を回っている先生の話からは必ず学ぶところがあります。よかったと思えばその先生の著書を読みます。ピンとこなければスルーします。とにかくアクションを起こす必要があります。一番手っ取り早いのは、今、話題になっている教育書を読むことです。

7 振り返りができない

提案授業の後、私は常に「どうでしたか」と聞きます。すると、初任者は「えーと」といいいながら切れ味の悪い雑然とした感想を言います。私がコメントしたいと思ってることを、初任者が考えていることはほとんどありません。それはなぜか。先に書いた「めあて」があいまいなことが理由です。明確なめあてがあれば、授業後の振り返りも雑談ではなくなります。

(2014年9月15日)

準備中

●中林 則孝
(なかばやし・のりたか)

1951年生まれ。初任者研修指導員。一輪車が小学校に普及し始めた頃、練習を継続すれば大半の児童が一輪車に乗れるようになることを知り、「練習量が、ある時、質に転化すること」を実感する。初任者研修では、スローガンや方向性だけではなく、子どもを念頭に置いた具体的な指導を心がけている。