★このコラムは、平成25年3月から9月まで、26回にわたり、日本教育新聞に連載をしてきた「校長塾 経営力を高める最重要ポイント」の続きです。「ぜひ継続を」という声をいただき、この場をお借りすることにしました。校長としての様々な実践事例を紹介しながら、私が考える学校経営力を高めるためのポイントを示していきたいと思います。主な対象は、若手管理職やミドルリーダーのみなさんです。「なるほど!こういう方法があるのか」「このようなことに心掛けるべきなのか」と、心の中にストンと落としていただけるコラムになるようにいたします。どうぞよろしくお願いします。
【 第20回 】己の授業を語る(1)
―なにより語る相手が肝心!―
今年度も新しい試みをいくつか行っている。その中の一つに「己の授業を語る」がある。
本校のこれまでの授業力向上の取組は、模擬授業・授業研究・授業検討会、角田明先生による授業診断、校長塾開催(校長の授業観察後のミニ指導含む)だ。平成26年度を迎えるにあたって、このほかの方法による授業力向上策はないものかとあれこれ考えているうちに浮かんだのが、この取組だ。
現在の取組は、どちらかというと若手対象で、ベテランへの授業力向上への刺激の少なさが気になっていた。もちろんベテランの授業も観察して、それをもとに授業について意見交換することはある。そのときに感じることは、やはりベテランだけに己の授業に対して一家言を持っていることだ。校長一人で聞くことはもったいない。ぜひとも、この話は全教職員で共有化したいと思うことが多々あった。また、若い教師なりに本校が目指している「鍛える 学び合う学び」に対して、意図的に実践をしていることはあるはずだ。ならば、各自の思いを交流し合う方法はないだろうか。この思いが「己の授業を語る」という取組につながった。
「己の授業を校長に語る」のでは、本音は出ない。語る相手が肝心だ。教育関係者でない方がいいと考えた。また、それぞれの語りを共有化するためには、語りの見える化が大切だ。つまり、聞き取ったことをコンパクトにまとめ、だれもが読んでみようと思うように出力できる方に頼むことが、この取組の成否を握ると考えた。
依頼者は決まった。原愛樹さんだ。原さんとはひょんなことで繋がり、防災デジタルマップづくりなどを推進する「愛マップ・プロジェクト」に関わっていただいている。原さん製作のプロジェクトの概要を伝えるパネルを見て驚いた。原さんはいったい何者なの?という気持ちになった。実に素晴らしいパネルだったということだ。あらためて原さんに仕事についてお聞きしたほどだ。
このとき原さんは、自分の仕事は「クリエイティブ・ディレクター」と表現された。クリエイティブという言葉に勇気づけられ、まだ明確になっていない段階での「己の授業を語る」取組について相談をした。原さんに話しているうちに、この取組が明確になっていくことを実感した。やはり出力は大切だ。我が教員が原さんに己の授業を語るうちに、日ごろ意識せずに行っている自身の授業づくりが明確になり、振り返りの良い機会になる。「鍛える」が加わっている本校の「学び合う学び」についての考えがはっきりしてくるに違いないという確信も持てた。
原さんは「面白い試みです」というコメントと共に快諾していただいた。素晴らしい方の協力が得られて、「己の授業を語る」がスタートした。(続く)
(参考)原愛樹さん製作の「愛マップ・プロジェクト」へのお誘いパンフレット
(2015年1月5日)