【第5回】IT活用で元気な学校をつくる!
―フォーラム2004in東京「IT活用による元気な学校づくり」
昨年2回にわたっておこなわれたフォーラム2003「IT活用による元気な学校づくり」、フォーラム2003夏「IT活用による元気な学校づくり―実践編―」では、堀田先生にコーディネーターをつとめていただき、小牧中学校の実践発表やパネルディスカッションなどを通して、ITを活用した元気な学校づくりについて具体的に考えてまいりました。
今回は、2回のフォーラムを振り返りながら、3月13日(土)に東京で開催されるフォーラム2004in東京「IT活用による元気な学校づくり」について堀田先生にお話を伺いました。
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Q.昨年は「IT活用による元気な学校づくり」をテーマに、名古屋で2回フォーラムを開催しました。とても盛況でしたね。
そうですね。この分野のフォーラムにはわりと人が集まるのですが、それでもせいぜい100人から150人、全国規模でも200人くらいではないでしょうか。そこに各回300人集まったのですから、とても驚異的なことです。Q.それだけ注目度が高いということでしょうか。
学校に校内ネットワークが入ったものの、それをどう活用してよいかわからなくて困っているというのが注目度の高い理由の一つだと思います。ネットワークが入ったから「さあ使え!」と言われても、どうしたら本当に役に立つ使い方ができるのかがわからないのです。もう一つは、いくらハードウェアやOSレベルのソフトウェアが整備されたとしても、学校という組織形態を意識したソフトウェアがないと、結局、先生たちの仕事には使えないということです。学校は集団で仕事をしていますから、先生方の仕事がかみ合っていくためのソフトウェア、学校のグループウェアというものがないとうまくいきません。そのことにいろいろな人が気づき始めて、そういったグループウェアを使っている小牧中学校の様子をぜひ知りたい、具体的にはどんなソフトやどんな機能を使って、どのように業務の改善をしているのかを知りたい、そういったニーズがあるのだと思います。
Q.今年は、場所を東京に変えての開催ですね。小牧中学校を知らない人がほとんどだと思いますが…。
実際にフォーラムに来て、小牧中学校の先生方の話を聞いてもらって、小牧中がなぜうまくいったのかを感じとってほしいですね。小牧中がうまくいった背景には、いいシステムが入ったということももちろんありますが、なぜ、小牧中学校でやっていることがいいシステムになっていくのかといった点にも注目してほしいと思います。Q.確かに小牧中では、先生方のちょっとしたアイデアが、次々と新しい機能となってシステムに取り入れられていきますね。
それは、小牧中学校の先生方がいろんなことに前向きに取り組んでいるからなんです。やる前から、ああなったらどうする、こうなったらどうすると心配ばかりしていたら、石橋をたたきすぎて壊してしまう。小牧中学校の先生方はどんなときでも明るく、「やってみようよ」という雰囲気があるんです。教育長をはじめ、校長先生、教頭先生、教務主任の先生、学年主任の先生、みんなそういうトーンだし、とりあえず何でもやってみるんです。もちろんそれは無責任ということではなくて、よいと思ったことはまずやってみて、よくない点を改善していけばいいじゃないかという発想ですね。Q."Plan‐Do‐See"という考え方がありますが、小牧中学校の場合は、まず"Do"ありきということでしょうか。
そうですね。"Plan"にあんまり時間をかけずに、とにかく"Do"でやってみる。それを見直しながらいい"Plan"にしていくという方法です。これが、小牧中学校の雰囲気をよくしていて、そこにいいソフトウェアがうまくはまっているんです。ソフトウェアに対しても、もっとこうしてほしいという要望が、実践を通して出てくるから説得力がある。開発側もそれに応えてシステムを作り変えていくから、どんどんよいものになっていくんです。これが前進する組織の今風の形なんだと思います。Q.それで小牧中の先生たちは元気がいいのですね。
はい。もう一つは、組織にはいろいろな人がいて、みんなが同じ能力を持っているわけではないんです。残念なことにITがあまり得意ではないとか、得意ではないけれど役割として情報を管理していかなければならないとか、教科指導に一生懸命になっている先生とか、生徒指導を大事にしている先生とか、いろんな人がいるから学校は回っていくんですね。全員が一つのことに同じように注力していたら、みんなが破綻してしまうけれども、それぞれの個性や役割が違うから、組織としてうまくいくんです。問題は、その違う役割を持った人たちが、どう連携するかというチームプレーなんですね。学校では、先生方がそれぞれ話をする時間があるようで、実はあまりないんです。なぜなら、みな日中は授業でそれぞれの教室に出かけているので、子どもと話す時間はたくさんあっても、教職員間で話をする時間はあまりない。空き時間だってやる仕事がたくさんあって、全然空きではないんです。そういう状況の中で、それぞれの先生の活動が他の先生にそこはかとなく見える、そういったものとして学校用のグループウェアが機能しているのだと思います。
Q.これは推進役の玉置先生がよくおっしゃっていることですが、先生同士のパイプが細いと詰まってしまう。だから、先生同士のパイプを太くして、まず職員室の中の風通しをよくしていけば、当然それが子どもに反映していって、保護者に反映していって、町全体に反映していくんだよ…と。
うん。これは、ぜひフォーラムを聞いてもらって、感じてほしいところですね。ITを入れるとコミュニケーションがなくなってしまうのではと思う人も多いようですが、本当は反対で、ITがあるから相手のやっていることがなんとなく分かって、コミュニケーションが生まれていくんです。そして、組織の風通しがよくなっていく。そのことに、早く気づいてほしいですね。つまり、学校用グループウェアというのはコミュニケーションツールなんです。コミュニケーションツールというと、すぐにチャットや掲示板を思い浮かべる人が多いのではないかと思いますが、あくまでそれは機能の話で、役割としては先生方がそれぞれやっていることを、他の人たちから見えるようにすること。そしてそれぞれに意見を言うのはもしかしたらツール上ではなく、口頭かもしれないけれど、そうした意見交換ができるようにすること。そのように組織の中の透明性をうまく保つためにシステムを活用しているということが成功の秘訣だと思います。
ですから、ぜひ小牧中学校の先生たちの生の声を聞いて、学校用グループウェアが、実際に学校でどう役に立っているのかということを感じてほしいと思います。
Q.2回目のフォーラムでは「保護者の声」というものをとりあげました。事前の打ち合わせもなく、パネルディスカッションがうまく進行できた背景には、常日頃、学校側が保護者に対してうまく情報発信を行っていて、保護者の方もそれを応援していく、といういい形のコミュニケーションがとれているということが伝わってきました。
そうですね。そういう関係があるからこそ、マイナスの話が出たときでも、先生方は前向きにとらえて、どうプラスにしていこうか、と考える姿が感じられたと思います。そういう発想で動いているということが本当に大事なことだと思います。やはり、説明責任を果たしているということは大事なことで、もちろんその様式とか与えられる情報にはもっとこうして欲しいというのがあるのですが、これはやってみているからこそ分かることであって、あとは修正していけばいいんです。まず、学校がきちんと情報発信をする。そして、そういう姿勢をもった学校を保護者が信用していく。そして協力していくという形です。情報を一人で抱えてしまっている人には協力のしようがないんです。これが、うまく公開され、説明され、みんながそれに協力していくという「開かれた学校」の形を小牧中学校は実践していると思うのです。
ありがとうございました。
(2004年1月26日)