★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されていた斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。
【 第56回 】「つながる」に思うこと
◆つながることで広がる世界
「つながる」と聞いて、皆さんはどのような状態を思い浮かべるでしょうか。
人と人、人とモノ、モノとモノ・・・世の中には、さまざまなつながりがあります。
私たちは、決して一人きりでは生きていけませんし、いろいろなモノともつながっていないと生きてはいけません。ですから、つながることはとても大事なことだと、誰もが思っていることでしょう。
人とつながることは、自分の視野を広げてくれます。
新しい視点をもたらしてくれます。
困ったとき、悩んでいるとき、支えになってもらえます。
子どもから大人まで、みんながつながりを求めています。
以前は、人とのつながりは、自分の身近なところでつながることがほとんどでした。
それがSNSの登場で、一気に範囲が広がりました。日常生活の中では出会えない人々とも、ネットを通じて知り合うことができるようになりました。
これは大きな変化だと思います。
自宅にいながら、遠く離れた人々とコミュニケーションを取ることができ、そこから新しいアイデアがどんどん生まれています。
また、やり取りのスピードが上がり、即時対応ができるようになり、いろいろな動きが格段に速くなっています。
今後もさらに、こうしたつながりは加速しながら広がっていくでしょう。
◆子どもにとっての「つながり」
一方で、子どもたちの様子を見ていると、いつでもコミュニケーションを取れることで追い詰められているのではないかとも感じています。
学校で顔を合わせている時間以外でも、友達と常につながっていなければ不安なのですね。
勉強中でも、食事中でも、入浴中でも、布団の中でも、片時もスマホを手放せない子どもの姿に悩む保護者は多いようです。
こうした状況は「依存症」という言葉が使われるほど、深刻な問題としてとらえられることもあります。
常時接続が可能になり、いつでもどこでもつながることができるようになりました。
そのことで子どもたちは、友達の発信に答えること、つまり友達と常につながり続けることを求められるようになってしまったようです。
自分の時間の使い分けが上手にできる子どもはよいのですが、多くの子どもは仲間はずれになる不安から、つながり続けることから逃れられないでいます。
そんな子どもたちを見ていると、つながるって何なのかと考えさせられます。
◆つながりの功罪
大人からしてみれば、「今の友達関係にこだわらなくても、これからいくらでも新しい友達はできるよ」という思いがあるのですが、子どもにとっては、今の環境がすべてです。
それはそうですよね。子どもが生きてきたのは、まわりの顔が見える狭い範囲ですし、他の環境のことはわかりません。ましてや、これからの自分の人生がどうなるのかなんてわかりません。
そうした状況では、まわりの友達とつながれない、仲間はずれになってしまう、ということが、「人生が終わってしまう」くらいの大きな不安になってしまうのは仕方のないことなのかもしれません。
加えて、「つながることはいいことだ」という風潮が、目には見えない形で圧力になっているのではないか、とも感じています。
たしかに、つながることは良いことがたくさんあります。
しかし、それを強調すればするほど、「人とうまくつながれない自分は、ダメな人間なんだ・・・」という気持ちにさせてしまっているのではないか。
私たち大人が良かれと思ってしていることや言っていることが、結局は子どもたちを追い詰めることになっているのかもしれない、と思うこともあります。
つながりを大切に。みんなでつながりましょう。つながることはすばらしい。
こうした言葉で、私たちは「つながること」を、子どもに強要しすぎてはいないでしょうか。
「つながり」には濃淡があります。
良いことばかりではなく、つながることで問題に巻き込まれることもあります。
そんな功罪も考慮しながら、つながることに苦しさを抱えている子ども(だけでなく大人もそうかもしれませんね)の思いに気付くことができるような、「つながり万歳!」だけではない広い視点を持てるといいですね。
(2017年11月27日)