★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されていた斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。
【 第54回 】お母さんが学校や先生に伝えたいこと(3)
◆職員室の「チーム学校」
文科省が推進している「チーム学校」は、職員室の中をチームにしよう、という目的で、以下の3つの視点について提言されています。
- 専門性に基づくチーム体制の構築
- 学校のマネジメント機能の強化
- 教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備
子どもたちを取り巻く環境の変容により、教員への負担が増えることや、より専門的な知識を必要とする事案が増えていることなど、教育の形が変わっていることに対応していくため、「職員室がチームとなって教育活動に取り組もう」ということですね。
この言葉を聞いたとき、「職員室の中は、昔からチームになっているのではないのか?」と疑問に思いました。
私自身が子どものころは、担任の先生だけでなく、いろいろな先生が子どもたちと関わっていました。担任以外の先生に声をかけられると、「見てくれている」とうれしく感じたものです。
今の学校でも、きっとそうだろうと思っています。しかし、おそらくは「チームになっていない」現状があるから、こうした提言がされるのでしょう。
PTA役員として出入りしていた職員室は、先生方がPCに向き合い、静かに作業をしている光景が日常でした。
私が見ていた光景がすべてではないことは、もちろん承知していますが、いろいろな方々から聞くお話の中から感じたのは、「先生同士のつながりが、あまりなさそうだな」ということでした。
とにかく皆さんが忙しそうにしています。
そして、PCに向かっていたり、ノート点検や採点をしていたり、または何かの書類を書いていたり、常に何かしらの作業をされています。
ちょっと声をかけづらい雰囲気です。
「これがわからない」「ちょっと教えてほしい」「アドバイスがほしい」・・・そんな思いを持っていても、気軽に話しかけられる雰囲気でなければ、困っていることの相談もしづらいでしょう。
また別の意味でも、「困っている」と言いづらい側面があるように感じています。
それは、先生方のプライドが邪魔をしているのではないか、ということです。
自分にとっては「問題がある」「どう対処したらよいかわからない」と思える事案でも、他の先生にとってはさほど問題には見えないかもしれません。
さらに、それを聞いたところで、「そんなことも知らないの?」「そんなことは自分で考えなさい」と言われてしまうのではないか・・・恥ずかしい・・・という気持ちがあるのではないでしょうか。
先生方は、誠実で、真摯に子どもたちと向き合おうとされる人が多いので、原因を自分に求めて、自分自身を責めすぎてしまう傾向があるように思います。
また、他の先生に迷惑をかけたくない、という思いも強いのかもしれませんね。
良い面である「誠実さ、まじめさ」が、自分で抱え込んでしまうという悪い面に変わってしまうこともある、ということを感じています。
そのような状態を見聞きするうちに、「今の職員室は、チームになるのが難しいのかもしれないな」という感想を持つようになりました。
◆地に足をつける
私は、各地の教員向けセミナーに参加する変わり者ですが、そこで知り合う先生方は、皆さん「学びたい」という意欲にあふれた方々です。
しかし、そうした方々と話しをしていて、気になることもあります。
それは、「自分の学校では、こうした話ができない」「同僚が反対ばかりして、理解してくれない」といった悩みを訴える人が多いということです。
意欲にあふれ、熱心に取り組む先生方からしてみれば、同僚の先生方の態度に不満を持ち、「どうして一緒にやってくれないのか」「どうして認めてくれないのか」という思いを持つのでしょう。
思いの温度差があり過ぎて、混じり合わないのでしょうね。存在が浮いてしまっているのかもしれません。
こうした状況はとても残念なことですが、だからと言って、私は、理解してくれない同僚の先生方を「やる気がない」と責める気持ちにはなりません。
同じ職場にいると言っても、人によってモノの見方や考え方は違います。
ですから、まず大事なことは「何のために」「誰のために」や、「どのようなゴールを目指すのか」といった根本的な部分を共有することだろうと思います。
その部分を確認した上で、自分が外で学んで「これは使える」「これをみんなでやってみたい」と思ったことを、同僚の皆さんに提供すればいいのではないでしょうか。
そして、自分の話を聞いてほしいと思うのであれば、普段から同僚の話もよく聞くことが大切だと思います。
日ごろからコミュニケーションが取れていなければ、他人は、そう簡単には信頼はしてくれません。
日常のコミュニケーションを大切にしながら、自分が学んだことを、皆さんにも共有したり情報提供したりする、というような積み重ねが必要だと思うのです。
「わかってくれない」と嘆く前に、日ごろの「自分の在り方」はどうか、地に足がついているかどうかを見つめ直してみてはいかがでしょうか。
子どもと一緒に「温かい学級」を作ろうと奮闘されている先生方ですから、ぜひ「温かい職員室」を作っていただき、子どもたちに「温かい関係は、いいものだよ」と見せてあげてもらえるといいなと願っています。
(2017年9月25日)