★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されていた斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。
【 第53回 】お母さんが学校や先生に伝えたいこと(2)
◆話題になっている言葉にアンテナを立てる
新学習指導要領のキーワードである「主体的・対話的で深い学び」。
この言葉に落ち着く前には、「アクティブ・ラーニング」という言葉が登場し、大流行しました。今でも、書店の教育書のコーナーには、題名に「アクティブ・ラーニング」を冠した書籍がたくさん並んでいます。
「道徳の教科化」「プログラミング教育」なども、よく目にする言葉ですね。
また昨年は、「インクルーシブ教育」という言葉も、「合理的配慮」という言葉と共に流行しました。これらの言葉は、「障害者差別解消法」という法律が施行されたことがきっかけで、注目を集めるようになりました。
他にも、「コミュニティスクール」や「地域学校協働本部」、「チーム学校」という言葉がありますが、ご存じでしょうか。これらは文科省が推進している「地域連携」の取り組みの中で使われている言葉です。
このように、教育界ではたくさんのキーワードが生まれています。
キーワードは他にもたくさんありますが、爆発的に流行しても、時代に合わなくなっていつしか使われなくなり、忘れ去られるものも多くあるでしょう。ですから、すべてを知っておく必要はないのかもしれません。しかし、それでも知らないよりは知っておいた方がいいのではないか、と思っています。
各地のセミナーなどで知り合う先生方は、自主的に学ぼうとする意欲があり、意識の高い方々です。
そうした方々と雑談をしていて驚いたのは、「コミュニティスクール」や「チーム学校」という言葉自体をご存じない、ということでした。意識の高い方々でさえもご存じないということは、おそらく多くの方々が同様だろうということは、推して知るべしですね。
たしかに、学校の中でも「地域連携」の部分は管理職や、一部の担当者しか関わりがなく、それ以外の先生方には興味も関心もないことでしょう。
でも、学校は地域の中の施設です。
直接的には、子どもと保護者しか関係していませんが、地域の人にボランティアをお願いすることもありますし、中学校の職場体験学習などでは地域の事業所に協力していただきます。さらに、運動会などの行事では、子どもたちの祖父母や親せきの人たちも集まってきます。
「防災」の観点で考えてみましょう。
災害が起きた時、学校は避難所になります。そうなれば、先生方は行政や地域の人と協力して、避難所の運営をしなければなりません。日ごろから、災害時の学校内外での人や物の動きなどを確認しておくことは防災の大事な要素です。
このように、関わり方には様々あります。ですから、学校には地域と深いつながりがある、ということを忘れないでほしいのです。
担当者以外の先生方が「地域連携」の視点を持ってくだされば、地域に対する見方が変わって、そんな地域で育つ子どもたちへの見方にも、新たな視点が得られるのではないだろうかと思うのです。
「地域連携」を例に引きましたが、残念ながら、話題になっている言葉をご存じない方がたくさんいるのが現状です。
自分とは直接関わりがない分野の言葉でも、教育界という業界内で生まれた言葉については、少しアンテナを立ててもらいたいなと思っています。
なぜその言葉が生まれたのか、どういう意図を持って生まれたのか、ということを知っておくことは、必ず視野を広げてくれるはずです。
それは業界全体の現状における課題や、これからの方向性を知ることができるからです。
その視野の広がりは、先生自身の成長につながりますし、子どもたちにも還元されるだろうと感じています。
◆子どもたちの未来に思いを馳せる
時間は、過去、現在(今)、未来へとつながって流れて行きます。
学校が子どもたちと関わるのは「今」ですが、子どもたちは「未来」を生きていきます。
私たち保護者は、子どもが生まれた「過去」から「今」、そして「未来」へも責任を負っています。ですから、彼らが生きる「未来」には大きな不安を持っています。
先生方はどうでしょうか。子どもたちが生きる「未来」について、どう考えておられるでしょうか。
例えば、日本は今や「人口減少社会」です。これから人口減少に伴い、労働者人口も減っていきます。
さらに、少子高齢化も進みます。税収は減りますが、必要な社会保障費はどんどん増えるでしょう。
また、労働者人口の減少で働き方の見直しが進み、外国人労働者が増えたり、機械化がさらに進んだりするでしょう。
地震や台風など、未曽有の災害に見舞われる可能性もあります。
世界情勢も流動的です。
内戦状態にある国から飛び火して、大規模な戦争が起こるかもしれません。
どこかの国の経済破たんが、世界中に波及してしまうかもしれません。
そんな時代を、子どもたちは生きることになるのです。
未来予測はあくまでも予測で、実際にどうなるのかは誰にもわかりません。
けれども、そうした予測があるということを知っておいてほしいと思うのです。
新学習指導要領に込められている理念は、こうした未来を生きる子どもたちに「必要な力はどんなものか」、そして「その力をどうやってつけていくのか」、ということが柱になっているはずです。
言うまでもなく、先生方は、今目の前にいる子どもたちに対して精一杯向き合ってくださっています。
そのことには十分に感謝しているのですが、できることなら、さらにもう一歩踏み出して、未来のこと、教育が目指していることにも目を向けてもらえるといいなと思います。
子どもたちが生きる未来も視野に入れつつ、彼らに必要な力は何か、その力をつけるためのアプローチは何か、ということを、先生も保護者も考えていけるといいですね。
そして、それぞれの立場で考えたことを、共有できるようになるといいなと願っています。
(2017年8月28日)