★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されていた斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。
【 第52回 】お母さんが学校や先生に伝えたいこと(1)
◆外から見ているからこそ気付くこと
私は教員ではなく、ただの保護者ですが、興味関心を引かれるセミナーを見つけては、各地の「教員向けセミナー」に出かけていく変わり者です。
住んでいる愛知県だけでなく、他府県まで出かけることもあります。
すると、これまでは自分の周りのことしか見えていなかったのですが、少しずついろいろなことに気付いてきました。
当たり前のことですが、学校によって、または地域によって、さまざまな違いがあるのですね。
そんな当たり前のことにさえ、これまでは気付いていませんでした。
自分の中に比較する対象ができると、以前とは見方が変わります。
さらに外から学校を見ている立場だからこそ、違いに気付けることもあるのではないか、新たな気付きがあるのではないか、という気がしています。
今回のコラムからは、そんな「お母さんが感じたこと」をお伝えしていきます。
◆セミナー参加者の年齢層から
各地のセミナーで感じているのは「若い世代の先生がたくさん参加しているな」ということです。
「最近の若い先生たちは学ばない」とよく聞きます。
何も先生に限ったことではなくて、一般企業の若手社員に対しても、同じようなことを聞きます。
これは今に始まったことではなくて、いつの時代でも年配者が若者に向けて嘆いていたのと同じことだろうと思っています。
私が若いころにも言われていましたし、これからも同じように言われ続けていくのかもしれませんね。
自分が年配になると、若い人の足りないところがたくさん見えてきますから、ついつい愚痴を言いたくなるのでしょう。
でも現実に、私がセミナーで見かけるのは若い先生が多いですし、彼らはとても熱心に見えます。
わざわざセミナーに参加するのはごく一部の人でしょうが、そういう人々がいるということは、私はうれしいこととして受け止めています。
若い人たちが熱心に学んでくれれば、未来も明るく感じられますから。
若者の参加が多いことを心強く感じている一方で、中堅やベテランの参加が少ないことが少し気にかかっています。
もう十分に力をつけているので必要ない、ということなのかもしれませんし、キャリアを積めば任される業務が増えるので、自分の学びのための時間が取りづらいということもあるかもしれませんね。
しかし、最近では、そのような中堅やベテランの学級が荒れている、と聞くことが多くなりました。
力のある先生方が難しい学級を担当される、ということも往々にしてあるでしょう。
原因はさまざまあるのでしょうが、その一つに「今までのやり方では通用しなくなっている」ということがあるのではないでしょうか。
子どもたちの変化に対応しきれていない、という現状があるのでは、と感じています。
それならば、キャリアを積み重ね、すでに自分のスタイルが確立されている先生方であっても、「今」に対応できるような新たな手法や別の方法などを学ぶ必要があるのではないでしょうか。
「学ぶのに遅すぎるということはない」と言います。
若手もベテランも、いつでも学ぶ姿勢を持っていられるといいですね。
◆地域による違いから
今は日本だけでなく、世界中のニュースを、いつでも見られる時代です。
とはいえ、自分の住む地域以外のことには、それほど関心を払っていません。
学校で起こった事件がニュースになると、「それは大変だ。うちの学校は大丈夫だろうか」と心配になりますが、事件自体はどこか他人事のような感じを持ってしまいます。
私もこれまでは自分の子どもの学校のことしか知りませんでしたし(それすら知らないこともたくさんありました)、隣の学校のことさえも関心はありませんでした。
でも各地のセミナーに参加して、メディアやネットで見聞きしていたようなことが、本当に起きている地域があることを知り、それはどこでも起こりうることだということを知りました。
このように視野が広がったことが、改めて自分の住む地域のことを考えるきっかけにもなりました。
そして今は、地域が違えば他人事、とのんきに構えていてはいけないのではないかと思っています。
例えば、防災の観点で考えれば、地震などの天災はいつ起こるかわかりませんから、他の地域の経験から学ぶことは大事なことですね。
他にも、今は学校が表面的には落ち着いているように見えますが、子どもたちの心など見えない部分に対してどうアプローチしていくのか、ということなども他の地域の経験から学べることでしょう。
それ以外にも、先生方に考えてみてほしいことがあります。
外を見ることで、私が住む愛知県は比較的恵まれた環境であることがわかりました。
ありがたいことだと感じると同時に、せっかく大きな問題もなく、落ち着いた学校であるのに、そのことで安心してしまうのはもったいない、ということも感じています。
トラブルに忙殺されず、穏やかな時間が流れているからこそ、子どもたちの学びを鍛えるために、もう一段上の取り組みが何かしらできるのではないでしょうか。
現状に甘んじないで、もう一歩先を見ようという意欲が、先生方の学ぶ姿勢につながっていくのではないかと思います。
その姿勢に、きっと子どもたちも刺激を受けるでしょう。
そんな風に、先生と子どもたちが影響を与え合えるといいなと願っています。
(2017年7月18日)