★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されていた斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。
【 第51回 】ワークシート活用のヒント(3)
◆「地域・保護者&学校が分かり合えるため、そして、ともに動き出すためのワークシート」の活用
「地域・保護者&学校が分かり合えるため、そして、ともに動き出すためのワークシート」(以後、ワークシートとします)の「活用のヒント」の3回目です。今回でワークシートの活用のヒントは最終回となります。ぜひ、ご活用ください。
◆ワークシートの種類のおさらい
再度、ワークシートの種類のおさらいです。
ワークシートは3種類(レベル1・レベル2・レベル3)あり、それぞれに次のようなテーマがあります。
- レベル1: 協働のためのはじめの一歩
- レベル2: 協働のイメージを作ろう
- レベル3: 協働できることを絞り込もう
今回のコラムでは、「レベル3」の活用のヒントについてお伝えしていきます。
◆レベル3のポイント(1)振り返り
「レベル2」では、「やってみたいこと」「やってほしいこと」の活動について考えました。
具体的な活動がいくつも出されたと思います。
「レベル3」では、皆さんから出された活動を「仕分ける」作業を行います。
最初に、前回の振り返りをします。ここで、前回出された活動のイメージを具体的に持てるようにしましょう。活動がイメージできるようになっていれば、仕分け作業がスムーズになります。
◆レベル3のポイント(2)グループ分け
次に、「振り返り」で確認した活動を「仕分ける」ためのグループワークに入ります。
参加人数により、複数グループを作ってもよいですし、人数が少なければグループ分けはせずに、全員で行っても構いません。
ただし人数が多くなると意見が出にくくなるので、1グループは4〜6人程度がよいでしょう。
◆レベル3のポイント(3)仕分け作業
ポイント(1)の「振り返り」で出された活動を、付箋に書き出して使うと便利です。貼り付け、貼り直しが自由にできます。
仕分ける基準には、「短期」「中・長期」という横軸と、「優先順位」という縦軸があります。まずは横軸を考えてみましょう。
「短期」というのは、短い期間で活動が終了するものです。「中・長期」というのは、それなりに長い時間が必要になります。継続しておこなう必要があるような活動は、こちらの「中・長期」になります。
グループ内での話し合いの方法としては、次の2種類があります。どちらでもやりやすい方法で行ってください。
1)まずは一人一人で考えて仕分けをし、グループ内で発表しながら決めていく。2)最初から、活動ごとにグループ全員で話し合い決めていく。
意見の多様性を引き出したいと思われる場合は、1)の方法をおすすめします。はじめに各自で考えてもらい、自分の意見を持ってもらった方がたくさんの意見が出てきやすいです。
◆レベル3のポイント(4)優先順位
横軸の仕分けが終わったら、次は「優先順位」を考えます。
優先するための基準がないと、順位をつけるのは難しいですね。ここでは、学校や子どもたちにとって必要だと思われる活動かどうか(重要度)、またすぐにでも行う必要があるかどうか(緊急度)という観点を基準にしましょう。
「これは必要な活動だよね」(重要度が高い)、「すぐにやった方がいいよね」(緊急度が高い)というような活動が、「優先順位が高い活動」となります。
この判断は難しく、迷うことになるかもしれません。それぞれの活動の「意味」や「込められた思い」などを改めて確認しながら進められるといいですね。
「決められないな、困ったな」という場合の、とっておきの判断基準をお教えします。それは「その活動をやって、子どもたちの笑顔が思い浮かぶかどうか」です。その活動が子どもたちの役に立っているかどうか、というのも重要度や緊急度と同じように判断の基準にしてもよいでしょう。
◆レベル3のポイント(5)できることをやってみる
ここまでのグループワークで、「やってみたいこと」「やってほしいこと」の活動の仕分けができました。
次は、いよいよ「活動をやってみる」ための準備です。
まず「今、できそうなこと」を選びます。
いくら優先順位が高く、短期でできそうなことでも、準備に時間がかかったり、費用負担があったりするようなものは、すぐに取り組むのは難しいでしょう。ですから、できるだけ「すぐにやれること」を選ぶことが重要です。
ワークシートのねらいは、参加者が思いを共有し、何か一つでも活動してみるというゴールまで体験してもらうことにあります。
できれば、「今、できそうなこと」を選び、具体的な活動日まで決定できるといいですね。
実際に活動してみると、良かった点はもちろん、足りなかった点も浮かび上がってきますので、それをまた皆さんで共有できます。そして、改善を加えながら、次の活動へとつなげていくこともできます。
ですが、ここで無理に「活動日」まで決める必要はありません。学校の実情に合わせて、無理なく、選んだ活動ができるようにしてもらえればいいでしょう。
大切なのは、選んだだけで終わってしまわないことです。せっかくこれまでワークショップを重ねてきたのですから、最後は「選んだ活動をやってみる」という締めくくりで終わりましょう。そうすれば、次につながっていきます。
地域や保護者と学校が協働する、ということは、一過性のものではないはずです。
息の長い活動にしていくためにも、いきなり大きなことを立ち上げるのではなく、小さなことでも無理なくできることをコツコツ積み重ねていくことが大切ですね。
このワークシートは一回使ったら終わり、というものではありません。
組織の中で思いを共有したいとき、活動の見直しをしたいとき、新たな活動にチャレンジしたいときなど、いろいろな場面で活用していただけるものです。
多くの学校でお役に立てていただけることを願っています。
(2017年6月12日)