★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されている斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。
【 第5回 】大人もチャレンジしてみませんか?
夏休みも後半戦に入りました。そろそろ宿題に手を付けないと、と保護者が焦りだす時期です。先生方も、2学期の準備を始めるころでしょうか。大人たちの想いをよそに、子どもたちは夏休みを満喫しています。今回は、そんな子どもたちが直面している問題への保護者の想いについてお話ししたいと思います。
◆ネット依存が進行中
夏休みに入り、子どもたちは友達と顔を合わせる機会がぐんと減ります。
そんな子どもたちが、友達とコミュニケーションを取る手段として大人気なのが「LINE」「Twitter」「Facebook」などの、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)です。その中でも、おそらく一番利用されているのが「LINE」です。
これらのツールが、リアルタイムのコミュニケーションを可能にしてくれたおかげで、子どもたちは片時もケータイやスマホを手放せなくなってしまいました。
夏休み中のように、いつもより自由な時間が増えるとどうなるか?
残念ながら、その分余計に子どもたちがネットにつながる時間が増える、という「ネット依存」の状態が進行してしまっている状況のようです。
◆学校と保護者の連携
最近、とくにネット絡みの事件が頻発していて、学校でも「ネットいじめ」が大問題になっていますね。
学校では、機会があるたびに「いじめは絶対にダメ」「ネットは節度を持った使い方をするように」ということを指導して下さっています。
しかし、ネットの使い方に関しては、学校だけで解決できる問題ではなく、家庭での扱い方がとても重要になってきます。子どもにケータイやスマホを買い与えているのは保護者ですし、子どもがそれらを使用するのは学校ではなく、多くの場合が家庭です。
ですから、学校と保護者が連携していくことが、とても大切なことだと思います。
しかし、なかなか連携ができていないのが現状です。残念ながら、お互いに「相手任せ」の気持ちになっている部分があるように見えるのです。
よく「最近のケータイやスマホは機能がたくさんありすぎて、さっぱりわからない」「時代の変化についていけない」「新しいことは覚えられない」という嘆き節を耳にします。
そのような気持ちは、よく理解できます。私自身も年齢を重ねて、同じように感じることが多いですから。
でも、それは事実である一方で「新しいことにチャレンジしようとしない」ことの言い訳にすぎない、とも思うのです。自分が新しいことを覚えるのが面倒だから、どこか他人任せになっているような気がしていますが、いかがでしょうか?
先生も保護者も、もっと「子どもたちが夢中になっているもの」について関心を持つべきだと思います。そのためにも、一緒に「新しいことにチャレンジ」してみませんか? 一緒に学ぶことで、より連携を深めることができるといいですね。
◆「LINE」の呪縛
どうして子どもたちが「LINE」の呪縛にかかってしまうのか? ということの代表的な例を、簡単にお話ししたいと思います。
「LINE」では、電話代無料(ネットに接続している必要があるので、ネットへの接続料は必要)で電話ができますし、メッセージのやり取りができます。
そのメッセージのやり取り(トーク)の中に、「既読」という機能があります。トークで相手にメッセージを送り、それを相手が開封して読むと「既読」という表示がつきます。つまり、相手が自分のメッセージを見たことが確認できるわけです。
これは、とても便利で良い機能だな、と思いました。メールなどでは(開封通知設定ができる場合は別ですが)、相手が読んだかどうかを確認することができません。重要な内容だった場合は、改めて電話をして確認したりしなければならないこともあります。それを考えると、相手が読んだかどうかを確実に確認できる機能はありがたい、と思ったものです。
ところが、この機能が子どもたちを苦しめることになるのです。
「既読」が付けば、相手が読んだことはわかります。でも返信がない。とても不安になりますね。「何か気に障ることを書いちゃったかな」と気を揉みます。それが高じてくると、だんだん腹が立ってきて「もう、あの子なんか知らない」と逆切れにつながります。
子どもたちは、それがわかっているので、すぐに返信を返さなければ嫌われる、という強迫観念に駆られてしまいます。だから、四六時中、携帯やスマホを手放せないのです。
また、別の便利な機能に「グループ」があります。
グループに登録しているメンバーだけに、一斉にメッセージを送ることができます。同じ内容を個別に送るよりも、だんぜん早くて便利です。
しかし、この「グループ」でも子どもたちは苦しめられています。
グループには、招待されたメンバーしか入れません。不特定多数に見られる心配がないので、安心してメッセージのやり取りができますね。でも、本来は仲良しグループのはずなのに、集団無視や悪口などの嫌がらせが起きています。また、強制退会といって、特定の人をグループから退会させて、仲間はずれにしたりすることもあります。
一見、便利で使い勝手がよい機能に見えますが、これらは諸刃の刃で、子どもたちを苦しめる機能になってしまうこともある、ということです。ですから、大人は、きちんとこのような事実を理解して、子どもと使い方を話し合う必要があると思うのです。
◆「友達」の関係性に注意
SNSのように、子どもたちの間で流行っていることは、大人も「食わず嫌い」をしないで、とにかく使ってみることが大切だと考えています。
ただ、気をつけなければいけないこともあると思っています。それは、先生と子ども・先生と保護者の関係です。
SNSを使っていると、「先生、友達になって」という子どもや保護者が出てきます。
もちろん「友達」になることがいけない、ということはありません。コミュニケーション手段の一つとして利用するのはいいと思います。
しかし、そのことで「あらぬ噂」が立ってしまうリスクがあることは、念頭に置いておくべきだと思うのです。
健全な関係だったとしても、揚げ足を取られたりして、どこでどのような情報が流れるかは予測不可能です。より慎重な使い方が求められるでしょう。
今後、ますますSNSが普及していきます。その中で、先生・児童生徒・保護者の関係性についても、ルール作りが進められるといいなと思っています。SNSは、上手に利用すればとても便利で、決してコワイ代物ではありません。よりよいコミュニケーションツールとして、有効に活用できるといいですね。
(2013年8月12日)