愛される学校づくり研究会

お母さんは学校の応援団長

★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されていた斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。

【 第43回 】「地域と学校の連携・協働」に想う(1)

◆「連携」がより求められる時代

10年ほど前に「教育基本法」が改正され、「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」の規定が新設されました。 その後、多くの学校が「学校・家庭・地域の連携協力」を教育目標に掲げ、推進されてきました。
  そして、この「連携協力」の実現のために、学校・家庭・地域が一体となって、地域ぐるみで子どもを育てる体制を整えましょう、という目的で「コミュニティスクール」や「学校支援地域本部」の設置が進められてきました。
  先進的に進められている地域もありますが、多くの保護者や地域の人々は、このような組織の名前を聞いたことがないだろうと思います。そして、どのような活動をする組織なのかも、よくご存じないのではないでしょうか。残念ながら、あまり浸透しているとは言えない状況だと感じています。

今春、文科省では、中教審の答申を受けて、この取り組みをさらに促進するために「地域と学校の連携・協働の推進に向けた参考事例集」を作成し、発表しました。
  ここでは、各地域において「地域学校協働活動」がより推進されることが期待されています。
  文科省では「地域学校協働活動」について、以下のように定義しています。

地域学校協働活動:地域と学校が連携・協働して、地域の高齢者、成人、学生、保護者、PTA、NPO、民間企業、団体・機関等、幅広い地域住民等の参画により、地域全体で未来を担う子供たちの成長を支え、地域を創生する活動
平成28年4月28日発表、文科省報道資料より引用)

今回、文科省より打ち出された「地域学校協働活動」では、活動に関わってほしい人々が、より具体的に示されています。
  これまでの「地域住民等=いろんな人」というざっくりした表現から、さらに踏み込んだ内容になっていることからも、これまでの「学校支援地域本部」よりもさらに一歩進めたい、という文科省の意気込みが感じられます。
  そして、学校だけではなく、家庭や地域も協働することで、多くの人と関わり、多様な価値観を学ばせたいという思いも込められていると感じています。

しかしそれとは別に、学校だけでは多様化するニーズに対応しきれなくなっている現状への危機感も感じるのは私の思い過ごしでしょうか。
  「地域学校協働活動」を通じて、学校が開かれ、家庭や地域の人々が学校の現状を知り、考えるきっかけをもたらしてくれるといいなと思います。

◆加速する「協働」の動き

前項で書いたように、今、全国各地で「コミュニティスクール」や「学校支援地域本部」などを設置して、「地域学校協働活動」を始めようという動きが広がっています。(※)
  今後、行政が主導となって、さらに設置に向けた動きが加速するのではないかと思われます。

しかし、いざ始めようとすると、これまであった組織(PTAや地域ボランティアなど)とどのような違いがあるのか、また新しい組織を作らなければならないのか、どのような組織が必要なのか、といったたくさんの疑問がわき、どうしたものだろうか…困ったね…と頭を抱えている学校も多いのではないでしょうか。

新しいことを始めるときは、「地域に応じた形にしていいですよ」という自由度が高ければ高いほど、基準がないのと同じことなので、生み出す苦労も増えますし、難易度も高くなってしまうことがあります。
  しかし、これをチャンスととらえて、よくわからないけど、とりあえずやってみようという姿勢を持っていただけるといいなと思います。苦労した分、きっと学校と地域のつながりは強くなるでしょう。

※「コミュニティスクール」や「学校支援地域本部」など、本来は位置づけが違う組織が並行して動いている地域もありますが、名称の混乱を避けるため、当コラムでは「地域学校協働本部」で統一させていただきます。

◆「共通の土台作り」が初めの一歩

「地域学校協働本部」を設置し、運営していくには、やはり学校からの働きかけが必要でしょう。
  参加を呼びかけられた保護者や地域の人々は、学校側以上に戸惑います。
  この戸惑いや不安を解消しないことには、「協働活動」を立ち上げて軌道に乗せるのは難しいのではないかと思います。
  そのためにも、まずは学校が「どうしてこの活動が必要なのか」ということをよく考えて、「思いを伝える」ことが大切なのではないでしょうか。

「こんな学校にしたい」「こんな子どもを育てたい」という具体的な学校の思いを語り、みんなで共有することができれば、それが共感になり、協働活動のための「共通の土台」になっていくのだろうと思います。
  学校には「教育目標」があり、どの学校の校長先生も「学校作りへの思い」をお持ちのはずです。
  しかしながら、保護者や地域の人々には、その「思い」は学校側が思っている以上に知られていません。ですから、その「思い」の部分を共有するところから始めませんか。
  お互いの思いや人柄を知り合うことは、信頼関係づくりの第一歩です。
  初めの一歩の「共通の土台作り」で、熱く語る校長先生の姿が見られるといいなと願っています。

(2016年9月26日)

斎藤さん

●斎藤 早苗
(さいとう・さなえ)

愛知県在住 の3人の子供たちの母。
小牧市立小牧中学校にて、2014年度に、開校以来初めての女性PTA会長を務めた。
2012年春、玉置崇先生が校長として小牧中学校へ赴任されたのを機に、学校HP内の「PTAの部屋」の自主運営を始め、3年間にわたり、PTAの各委員会活動だけでなく、学校HPで発信される「学校の想い」に応えながら「保護者の想い」を発信して、学校と先生を応援してきた。
学校と保護者の温かい交流がある「愛される学校」が、全国に増えるといいなと願っているお母さん。