愛される学校づくり研究会

お母さんは学校の応援団長

★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されている斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。

【 第20回 】学校でしか学べないこと

◆しつけができない保護者

「家庭でやるべきしつけまで、学校に押し付けている」

こんな言葉を、学校現場で、度々耳にします。要するに、「家庭のしつけがなっていない」ということですね。 保護者としては、とても耳が痛い話です。
  子どもが小さいうちに、さまざまな経験をさせて、生活の中でしつけていくことが望ましいことは、誰もがわかっていることです。
  しかし、最近は、「危ないから」「我慢させるのはかわいそう」「叱るのはかわいそう」などと言って、お手伝いをさせなかったり、きちんと約束を守らせなかったりする親も多く、家庭によって、しつけに関する考え方にも大きな違いがあります。

子どもが家庭にいるときはそれでもかまいませんが、外の社会に出たときに困ったことになります。それが学校です。
  学校は、集団生活の基礎を学ぶところですから、もちろん必要なルールなどは教えてくれます。
  しかし、そうは言っても、学校ではそれ以外にも、教えなければならないことがたくさんありますね。授業による学習活動は、最も大切な時間です。
  その大切な時間が、「しつけ」をする部分にたくさん使われてしまっているのが現状のようです。
  あいさつがきちんとでき、自分のことは自分でできる子どもたちであれば、それらのことを、何度も繰り返し教える時間は必要ありません。それは、子どもにとっても良いことだと思います。その分、大切な学習活動の時間が多くなるのですから。

「箸の持ち方を指導してほしい」「脱いだ服のたたみ方を指導してほしい」…そんなことを学校にお願いするのは、親として恥ずかしいことだ、という気持ちを、すべての保護者が持てるといいなと思っています。

◆学習規律の大切さ

先日、野口芳宏先生の「教師力アップセミナー」に参加させていただく機会に恵まれました。

野口先生の授業技術のお話は、教師でない私にとっても、とてもわかりやすく、心に響くものでした。
  その中で印象に残ったのが、「公的言語活動」と「私的言語活動」という言葉でした。

野口先生は、セミナーの中で国語の模擬授業をされました。生徒役は、聴衆です。もちろん、聴衆はすべて教師です。
  その模擬授業の中で、指名されて発言する生徒役の先生方は、ことごとく「それは『私的話法』だ。『公的話法』をしなさい」と、野口先生から指摘を受けていました。
  大人であっても、しっかり意識をしないと、公的話法で話すのは難しいのです。子どもであれば、なおさらですね。
  ですから、野口先生は、「授業の中で、こうした学習規律をしっかりと身に付けさせないといけない」と、強くおっしゃいました。

多くの人の前で発表するときは、指名されたら、はっきりした声で「はい」と返事をして、すぐに立ち上がり、みんなに聞こえるように、大きな声ではっきりと簡潔に発言すること。
  これだけのことでも、教えられなければ、私たちはできるようにはなりません。そして、こうしたことを教える場こそ、学校であり、学級であると思います。
  先生方は、十分にご承知のことだろうと思いますが、今一度、基礎基本の大切さを噛みしめていただけるといいなと思いました。

◆学習規律は評価の指標

授業参観のときに、複数の学級を見ると、学級の雰囲気の違いに気付きます。
  中学校では、毎回、担任の先生が授業をされているところを参観する、というわけではありませんので、一概に言えない部分はありますが、先生の指示がきちんと通っている授業は、見ていてとても気持ちがよいものです。
  また、子どもたちが、はきはきと発言する姿を見ると、とてもうれしく感じます。
  授業参観ということで、子どもたちも「よそいき」の態度でいることはあるでしょう。親にいいところを見せようと、はりきっている子もいるでしょう。それでも、45分間の授業の中で、ずっといい子のふりをするのはたいへんで、普段の姿が出てきてしまうものです。
  そうであっても、最後まで規律ある態度で授業を受ける子どもたちを見ていると、きっと普段からこの学級はよい雰囲気なのだろう、と保護者はとても安心し、先生方の指導の賜物だと感謝します。
  保護者にとっては、「学習規律」は、学級や先生を評価する、大切な指標になっているのではないでしょうか。

せっかく学校へ通っているのですから、子どもたちには、学校では「学校でしか学べないこと」をきちんと学んでほしいものです。
  そのためにも、「家庭で教えるべきことは、家庭で」という意識を保護者が持ち、学校が「しつけ」に時間を取られずにすむように協力しているといいですね。学校が、本来の教育活動が行える環境になることを願っています。

(2014年11月4日)

斎藤さん

●斎藤 早苗
(さいとう・さなえ)

愛知県在住の3人の子供たちの母。 頼まれると断り切れない性分で、幼稚園から中学校まで、何度もPTA活動に参加。
2012年春の玉置崇校長先生の小牧中学校赴任を機に、学校HP内の「PTAの部屋」の自主運営を始め、PTAの各委員会活動をHP上で保護者にお知らせしている。
また、学校HPで発信される情報に対しての「保護者の想い」を発信しながら、学校と先生を応援している。
他校にも「PTAの部屋」が広がって、「愛される学校」が増えるといいなと願っているお母さん。