★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されている斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。
【 第15回 】「学校評価アンケート」に想う(1)
◆印象が薄い「学校評価アンケート」
毎年、必ず行われている「学校評価アンケート」。
学校教育法で、「学校は、生徒や保護者のアンケートをもとに、自己評価しなさい」と定められているので、必ず保護者に対してアンケート調査が行われているはずです。
「はずです」としたのには理由があって、正直あまり覚えていない、というのが実情だからです。
私は、3人の子どもの成長に伴い、長く「保護者」をしていますが、この「学校評価アンケート」については、「そういえば、そんなのあったな」という程度で、どのような質問項目があって、どのように回答したか、というような詳細は、あまり記憶にありません。
よくわからないけど、学校から来た「大切なお手紙」なので、その時はいろいろと考えながら回答をして、提出してきたはずです。
学校からは、アンケートとともに、「学校評価アンケートの回答・提出依頼文書」が配布されます。
そこには「今後のよりよい学校経営に役立てますので、ご協力をお願いします」と書かれています。
そして、アンケートを提出してから半年以上も経って、すっかりその存在も忘れたころに、学校から「アンケート結果のまとめ」が配布されます。
まとめを受け取るころには、「あ〜そんなアンケートもあったよね」という程度の関心しかないので、結果もさほど気にせずに、そのままゴミ箱行き・・・ということもありました。
学校に対して、とても失礼な話ですが、多くの保護者はその程度の関心しか持っていない、というのが実情だと思います。
◆「記名式」か?「無記名式」か?
「学校評価アンケート」に回答してきて、「これは、どうなんだろう」と疑問に思っていたことがあります。
それは「記名式」か「無記名式」か、ということです。
私がこれまで受けてきたアンケートは、その両方がありました。
中でも、「無記名でかまいませんが、差し支えなければお名前をご記入ください」と、記名欄が設けられているアンケートには、「どうしたものかな」と頭を抱えました。
もちろん「差し支えのない」ことしか回答していないのですが、記名した方がいいのか?アンケートを受け取った学校は、記名の「あり」「なし」を、どのように利用するのだろうか?など、いろいろと余計な心配をしてしまい、困ってしまいました。
結局、「記名」して提出しましたが、今でも「どう利用されたのか」という疑問はあります。
「記名式」にするか、「無記名式」にするか、ここには学校の姿勢が表れていると思います。
「記名式」にすれば、当たり障りのない回答がほとんどだと思います。本当に思っていることでも、ちょっと過激な意見と受け取られて、「○○さんは要注意人物」と、学校側にレッテルを貼られてはたまりません。
しかし、学校側にしてみれば「記名式」であれば、個別の対応が可能です。学校への理解が足りないことから生じる問題発言などには、あとで丁寧に説明することもできます。
「無記名式」にすれば、「無責任」な意見も多数出てくるかもしれません。「匿名」であることの気安さから、あることないことを攻撃的な意見として出してくる人もいるでしょう。しかし、「本音」が出やすいのは、やはり「無記名式」だと思います。
学校が、本気で「アンケートを学校評価に活かしたい」と考えていて、「いろいろな意見を聞きたい」と思っているのなら、「無記名式」にした方が、保護者にもその意図が伝わりやすいと思います。
学校にとってはそれほど重要視していないことかもしれませんが、「記名式」「無記名式」の違いで、保護者は学校の姿勢を見ています。
◆学校の「サービス業」化?
最初に「学校評価アンケート」を見た時には、「学校は、こんなことまでするようになったのか」と少し驚きました。
世の中には、「お客様アンケート」の類がたくさん出回っていますが、まさか学校がこのようなアンケートをするとは、考えてもいませんでした。
私がそれまで持っていた学校のイメージは「学校は教えてもらうところ。だから特別」というもので、「だから教わる側の生徒や保護者は、学校の指示に従うのが当然」と思ってきました。
しかし、時代の流れとともに、学校に対する世間の考え方も大きく変化してきました。
最近の保護者は「消費者傾向」が強くなったな、と思うことがあります。
自分たちは「顧客」であり、「サービスを受ける側」である、という意識の保護者が多くなってきているように感じています。
ですから、自分の思うような「サービス」が受けられないと、すぐにクレームをつけ、「正当なサービスを受ける権利」を主張するのでしょう。
そこには、他者を思いやる気持ちはありません。
もしかしたら、学校は何か意図があって、わざわざこういうことをしているのかもしれない。もしかしたら、先生は、他の子どもとの関係を壊さないようにと配慮して、このようにしたのかもしれない。
そのように想像し、「自分の思うようなサービスではないけれど、ここは学校を信頼しよう」という保護者の姿勢も、必要なのではないかと感じています。
保護者の意識の変化に、学校が対応していかなくてはいけない時代になっています。以前なら問題にならないようなことが、大きな問題になることも珍しくない中で、先生にとっては「受難の時代」といえるでしょう。
そんな先生方を、かげながら応援していきたいと思っています。
(2014年6月9日)