★愛される学校づくり研究会では、この1年間「どのようにすれば楽しく授業研究ができるか」を研究していくことになりました。このコラムでは、そこで取り上げられる授業研究の手法や取り組みの様子、そのよさや課題をお伝えしたいと思います。授業研究がテーマですが、「授業で大切なことは何か」「教師が成長するために必要なことは何か」「授業研究が愛される学校づくりとどうかかわるのか」といったことにも触れていきたいと思っています。
【 第8回 】授業研究にとって大切なこと
愛される学校づくり研究会では今年度、授業研究の方法について会員による模擬授業を通じて研究を行っています。これまでの授業検討法の研究を通じて大切だと気づいたことがあります。それは、授業者、参加者、学校経営のそれぞれの立場や視点で求められるものや検討会で話題にすべきものが違うということです。そして、その違いによって、授業検討法の評価も分かれそうだということです。それぞれの立場や視点で授業研究に求めるものを少し整理してみましょう。
授業者が授業研究に求めるものは何でしょう。立場によって大きく2つに分かれると思います。指導的な立場の者であれば、自分の授業から参加者に学んでほしい、授業力向上のきっかけをつかんでほしいと考えます。一方、若手や自身の授業力向上を願う方は、自分の授業の改善点を見つけてよりよい授業ができるための手がかりを得ることでしょう。
では、前者の立場で考えた時、授業検討会ではどのようなことが話題になってほしいのでしょうか。授業者がどのように考えて授業するかで2通り考えられると思います。一つは参加者に伝えたい、気づいてほしいことがあり、そのことを授業の中に意図的に仕組んでいる場合。この場合は、当然自分の意図したことが話題になってほしいはずです。もう一つは、参加者が授業について考えるための材料として自分の授業を提供しようという場合です。特に何かを仕組むというよりは、普段の授業をそのまま見せて、何を学ぶかは参加者に任せるという発想です。参加者の気づきをもとに話し合いが進んでくれればよいのです。
後者の立場で考えた時も同様のことが言えると思います。自分にとっての課題が明確で意図的に授業をしているのであれば、当然そのことを話題にしてほしいと思うはずです。そうではなく、日ごろの授業を評価してもらうことで、自分の授業のよさや気づけていない問題点や課題を知ろうとするのであれば、参加者が気づいたことをどんどん話題にしてもらえればいいのです。
参加者の求めるものは何でしょうか。後ろ向きに参加している人はともかくとして、ほとんどの方は自分の授業にとってプラスになるものを得たいと望んでいるはずです。研究指定校などでは、共通で追究しているテーマがあり、それに基づき検討することで授業力の向上を図ることになります。共通の課題意識が参加者にあるのです。特定のテーマを追究している研究会なども同様でしょう。一方、参加者がそれぞれの立場で授業力の向上を願っている時は、自分にとって関心のあることや参考になることが話題になってほしいはずです。授業検討会では、できるだけ多くの方に共通して得るものがあることが話題になる必要があります。
学校経営の視点ではどうでしょうか。授業研究を通じて先生方の授業力が向上することが第一ですが、学校の状況によって話題になるべきことは違ってくるように思います。学校として課題が明らかになっているのであれば、その課題に焦点化すればいいわけです。そうでなければ、できるだけ多くの方に共通のことが話題になればいいのです。ここで、学校経営という意味では、もう一つ別の視点があります。何が話題になるのかではなく、先生方に授業力を向上しようという意欲を持っていただくことです。そのためには、できるだけ多くの方に積極的に参加してもらい、ポジティブな気持ちになってもらうことが大切です。
研究会で授業検討法について皆さんの考えや感想を聞いた時に、その評価が分かれたのは、それぞれの立場や視点で求めるものと授業検討法がマッチしていたかどうかの問題だったように思います。
授業者が話題としたいことが明確にあるのかどうか。参加者に共通した課題意識があるのかどうか。学校として明確な課題があるのかどうか。先生方の授業力向上への意欲は高いのかどうか。さまざまな要素がある中で、実際の授業研究・検討会の状況はどのようになっているのでしょうか。私たちが提案する授業検討法は、その何を解決するものなのでしょうか。
今後、フォーラムに向けてこの点を明確にしていきたいと思います。次回は、このことについての研究会での検討の結果を報告したいと思います。
(2013年10月28日)