愛される学校づくり研究会

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★愛される学校づくり研究会では、この1年間「どのようにすれば楽しく授業研究ができるか」を研究していくことになりました。このコラムでは、そこで取り上げられる授業研究の手法や取り組みの様子、そのよさや課題をお伝えしたいと思います。授業研究がテーマですが、「授業で大切なことは何か」「教師が成長するために必要なことは何か」「授業研究が愛される学校づくりとどうかかわるのか」といったことにも触れていきたいと思っています。

【 第4回 】グループを活用した「3+1授業検討法」

今回はグループを活用した授業検討についてお話させていただきます。グループに分かれて授業研究をすることは最近よく見られますが、より充実した検討にするためにいくつかの提案をしたいと思います。

「3シーン授業検討法」でも述べたように全体での授業検討会では発言がつながらないことがよくあります。また、力の強い方が発言するとそれに対して意見が言いづらい雰囲気になることもあります。小グループで検討会をおこなうことで、参加者一人ひとりの発言量を増やそうというのがグループを活用した授業検討です。

グループにするだけでも一人当たりの発言量は増加し活発な話し合いが期待できますが、ここで一つのルールを導入します。授業の「よかったこと」を3つ、「改善点」を1つ見つける「3+1」というルールです。このバランスが大切です。「よかったこと」の方を多く集めなければいけませんから、よかったと思うことはどんどん発言することになります。ちょっとしたことでも「言っておこう」となります。一方、「改善点」は1つですので、たくさん出そうというより、これはというものに絞ろうとする意識が働きます。些細なことはあえて言うことはないと考えます。結果として「よかったこと」と「改善点」の比率は3:1ではなく、「よかったこと」がより多く話題に上ります。

「よかったこと」は自分もやってみようと思います。とはいえ、素晴らしい授業だった時など、これは自分には無理だと思うこともあります。しかし、たくさんの「よかったこと」が話題となることで、自分にもできそうなことが見つかりやすいのです。参加者の気持ちを前向きにしてくれるのです。一方「改善点」は、ある意味否定的な見方なので、自分のことととらえることには少し抵抗があります。ところが授業者は自分の「よかったこと」をたくさん言ってもらえて、自分の授業を認められたと感じています。「よかったこと」はたくさんだったのに対して「改善点」は数が限られているので、前向きに受け入れやすくなります。「改善点」を意識すればもっとよくなる。そう思えるのです。参加者も授業者も前向きになれるのです。

グループでの話し合いのきっかけをつくるのに付箋紙を使う方法があります。2色の付箋紙を持って授業を参観し、「よかったこと」「改善点」を色別にメモします。模造紙をグループごとに用意し、付箋紙を貼りながら意見をグルーピングすることで、効率的に話し合うことができます。

話し合いの結果の発表ですが、予め発表者を決めておいてもいいですし、その場でグループの中の誰かを指名してもいいでしょう。若手を発表者に指名しておくことで鍛えるという発想もあります。結論も無理にグループでまとめる必要はありません。時間がなくてまとめられなかったり、意見が分かれてしまったりしたときは、発表者個人の考えを言ってもらえばよいのです。できれば結果を発表して終わりではなく、どういうことを話し合ったかその過程も伝えてもらうとよいでしょう。同じ「よかったこと」でも視点の違いがあったり、違うところをよかったと評しても共通の視点が見つかったりします。共通の意見や、対立するような意見については、「よかったこと」であれば、どうしてよかったのか、他の授業場面でも活かすことができないか。「改善点」であれば、具体的にどうすればよいのかといった視点で焦点化し、話し合うとよいでしょう。時には、もう一度グループに戻すことでより深く学び合うことができます。発表とその後の話し合いをどう進めるかがポイントです。この授業検討法でも、コーディネーター(司会)の役割が重要になることには変わりありません。

また、グループのメンバー構成を学校の実情に合わせて工夫することで、いろいろな波及効果が期待できます。若手とベテランを組み合わせることで、若手がベテランに授業のことを質問しやすい空気をつくる。異動者と以前からの教師を組み合わせることで、その学校の取り組みを理解してもらったり、逆に他校での取り組みを学んだりする。教科や学年を混ぜることで、日頃話す機会の少ない教師間の交流をうながす。あえて、ベテラン、中堅、若手で別々にグループをつくることで、それぞれの視点や考え方の違いを浮き彫りにする。グループ構成を工夫することでいろいろなことを仕掛けることができます。

6月の愛される学校づくり研究会では、このグループを活用した「3+1授業検討法」を使って授業研究をおこないます。前回と同じように、どのようなことが起こり、どのようなことを学んだのかは次回に報告します。

(2013年6月24日)

大西貞憲

●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「愛される学校づくりフォーラム」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。