愛される学校づくり研究会

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★愛される学校づくり研究会では、この1年間「どのようにすれば楽しく授業研究ができるか」を研究していくことになりました。このコラムでは、そこで取り上げられる授業研究の手法や取り組みの様子、そのよさや課題をお伝えしたいと思います。授業研究がテーマですが、「授業で大切なことは何か」「教師が成長するために必要なことは何か」「授業研究が愛される学校づくりとどうかかわるのか」といったことにも触れていきたいと思っています。

【 第11回 】ICTを活用した授業研究

12月に行われた愛される学校づくり研究会では、ICTを活用した授業検討ツールのプロトタイプを使って模擬授業を検討しました。ツールの活用法と機能の検討が目的です。
 このツールを使った授業検討は、基本的に3シーン授業検討法に準ずるものです。違いは、3シーン授業検討法では、授業中のメモをもとに後から挙手等で集計するのに対して、このツールでは、授業中にいいと思ったことや気になったことがあった時にスマートフォンやタブレットPCのボタンを押すことで、押した人とその時刻がデータベースに登録され、後から集計の必要がないことです。並行して授業の様子もデータベースに録画されますので、検討会では、検討すべき場面が決まれば、その時間帯の授業の様子をすぐに再生できます。3シーン授業検討法と比べて圧倒的に手間が軽減されます。今回は、ボタンを押した個人を識別しなかったのですが、もし個人を識別しておけば、だれに意見を求めればよいかもすぐにわかり、スムーズに検討が進むことが予想されます。

また、このツールには他にもいくつかの機能があります。1つは、今どのぐらいボタンが押されているかリアルタイムでわかることです。今回、その情報を模擬授業中にスクリーンに表示してみました。授業に集中しているとなかなかスクリーンを見ることはないのですが、それでも、自分がボタンを押した時などは他の人がどのような反応をしているのか見たくなります。また、ボタンが次々に押されているのを見て、なるほどと思う時が多いのですが、これはなぜ押されているのか、どこを見ているのかといった疑問を持つこともありました。うまく活用すると、検討会で指摘されて初めて気づくような場面を見落さずにすむ利点がありそうです。たとえビデオを撮っていても、その場面が上手く映っている保障はありません。リアルタイムに気づけることが一番です。そう考えると、もう少し情報がほしいように思います。それは、どこを見てボタンを押そうと思ったかです。板書なのか、教師の対応なのか、それともどこかのグループの活動なのか。この情報も表示できるようすべきだと考えました。

もう1つの機能が、コメント機能です。これは時間軸に沿って、コメントを表示できるものです。ボタンを押したときにコメント入れることもできますし、あとから、任意の時間帯にコメントを書き足すことができます。しかし、授業を見ながらコメントを入れることは現実的ではないと思いました。文字を入力する余裕がないからです。実際、私もコメント入れることはありませんでした。あまり意味のない機能かとも思ったのですが、記録代わりに授業の状況をコメントしてはどうかという意見が出ました。検討用の画面は1分ごとにビデオのサムネイルが並ぶのですが、経過時間とサムネイルを見ても授業のどの場面だったかはすぐに思い出せません。授業研究ではたいていの場合記録者がいます。そこで、今までの記録の代わりに、「資料を読む」「グループで話し合う」「課題を提示」といった場面の変わり目で起こったことを簡単なコメントとして入れておこうというのです。このような情報があると、検討会の時に授業の流れと、参観者の反応の関係がとても見やすくなります。とてもよい考えだと思いました。
 また、簡単な定型文やマークを選べるようにしておくというアイデアも出ました。文字を入力することは面倒でもこれならばできそうです。「すごい」「?」といったマークがあるだけで、ぐっとわかりやすくなる気がします。

コメントの活用としてもう1つ、検討会の記録としての側面も見逃せません。検討会で話題になった場面の時間帯に、その意見を書きこんでおくのです。「よい点」「改善点」「疑問点」といったカテゴリーごとにマークをつけて分類することもできます。授業研究に参加できなかった人は、文字記録だけを読んでもその内容は理解できません。ピンポイントの授業場面をビデオで見ながら記録を読むことで、効率よく追体験できます。今までの授業研究は、文字記録とビデオが別々で、ほとんどの場合2度と活用されることがなかったように思います。これならば、授業研究をライブラリとして活用できると思いました。

模擬授業の検討ですが、授業がシャープだったので、ボタンが押されたところは見事に集中しました。この時は気づきませんでしたが、多くの人の意見が共通であれば、逆にそこはあまり時間をかける必要がないのかもしれません。先ほど述べたマークをつけておけば、意見が分かれたところを話題にするという発想もでてきます。この授業検討ツールの活用には、まだまだ可能性がありそうです。

おかげさまで、2月9日の「愛される学校づくりフォーラム2014in京都」は、締め切り前に満員御礼となりました。ありがとうございます。このICTを活用した授業検討ツールは当日までにさらに手を加えて、参加者の皆さんに授業研究の新しい方法の1つとして提案したいと思います。

(2014年1月27日)

大西貞憲

●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「愛される学校づくりフォーラム」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。