★愛される学校づくり研究会では、この1年間「どのようにすれば楽しく授業研究ができるか」を研究していくことになりました。このコラムでは、そこで取り上げられる授業研究の手法や取り組みの様子、そのよさや課題をお伝えしたいと思います。授業研究がテーマですが、「授業で大切なことは何か」「教師が成長するために必要なことは何か」「授業研究が愛される学校づくりとどうかかわるのか」といったことにも触れていきたいと思っています。
【 第10回 】ICTと授業研究の接点
現在、私たち愛される学校づくり研究会では、2月のフォーラムに向かってICTを活用した授業研究の提案の準備をしています。どのような視点でどのようなことを考えているのか少しお伝えしたいと思います。
授業研究に限らず、ICTを教育現場に活用しようとする時の視点は、大きく2つあると思います。1つは、「今までやってきたことを手軽に、効率的にできるようにする」、もう1つは「今までのやり方では実現不可能だったこと、全く新しいものを創りだす」ことです。
授業研究とICTの接点はあまり多そうには見えません。昔から行われているビデオ撮影が数少ない接点の1つです。この利用の方法は、その授業を参観できなかった方が後から見る。授業検討会で話題になった場面をその場で確認する。助言者が伝えたい場面を見せながら説明する。といったものが多いようですが、実際には撮影しただけで日の目を見ないこともよくあるように思います。デジタルになって目的の場面を見つけやすくなったとはいえ、どうしても検索に時間がかかってしまうことが大きな要因です。先ほどの1つ目の視点からすると、このビデオの有効活用に注目することが授業研究へのICT活用の自然な流れになります。授業検討会で見たい場面、見る必然性のある場面をいかに素早く取り出すことができるか、そこにICTの活躍する可能性がありそうです。とはいえ、授業検討会で再生したい場面を意識して誰かがインデックスをつくるといったことは現実にはとても難しいものがあります。私たちは、そこをクリアするためにどんな仕掛けが有効か試行しています。
もう1つの視点で授業研究を見たとき、どんな風景が浮かび上がってくるでしょうか。私が研究授業に参加している時に、私のまわりに若手の教師が集まってくることがあります。彼らが私のまわりにいる時は、今授業で起こっていることについて簡単な解説をしたりします。また、解説をしていない時は、彼らは私がどこに注目しているかを参考にして授業を見ているようです。リアルタイムに授業を見る上での情報を手に入れようと、私のそばに集まっているのです。このことは、授業研究を考える時の大切な要素を教えてくれます。意識して見なければ大切な情報を見落としてしまうということです。とはいえ、これを研究授業のさなかに行うというのはとても難しいことです。かつて、将棋の大盤解説のように、別室でビデオの映像を見ながらリアルタイムに解説を行うという企画がありました。「設備が大掛りになる」「カメラがどこを写すのか。教師なのか子どもなのか」といった問題があり、実現にはいたりませんでしたが、発想としては近いものがあります。ICTを活用することで互いに注目している情報をリアルタイムで共有できないでしょうか。これもそれほど簡単なことではありませんが、現在いくつかの可能性に向かって挑戦しているところです。
また、先生方全員が授業研究に参加できるような日程を組むのはとても難しいと聞きます。授業研究に参加できなかった先生が、授業検討会の議事録を後から読むだけでは、その内容を正しく知ることはなかなかできません。授業ビデオを合わせて見ればよいのですが、それには授業と同じだけの時間がかかります。ダイジェストがあればとも思いますが、授業ビデオを編集するためには多くの時間が必要です。忙しい学校では現実的ではありません。このことをうまくクリアすることができれば、授業研究をライブラリ化することができます。ライブライ化できれば、若手の教師や異動してきた方が過去の授業研究からその学校の授業スタイルを自主的に学ぶことができます。学校間で共有することで、互いの授業研究から学び合うことができます。このようなことも私たちは視野に入れています。
私たちはICTと授業研究との間にいくつかの接点を見つけました。ここを起点にして、新しい授業研究の形を提案したいと思っています。次回は、研究会で行われた、ICTを活用したシステムのプロトタイプを使った模擬授業による授業研究について報告したいと思います。
(2013年12月23日)