★今回から寄稿させていただくことになりました新城市教育委員会教育長の和田守功と言います。「桜梅桃李(おうばいとうり)」とは、ありのままの個々「子供の姿」です。作為的なはたらきかけによってつくられた姿ではなく、無作(むさ)の、もともと一人ひとりの子供のもつオンリーワンの命の輝きが表出された姿です。そんな姿をこよなく愛し続けていきたいというのが私の思いです。そうした考えから、タイトルを「桜梅桃李を愛す」としました。私の教育に対する拙い思いの一端を皆様方にお伝えすることができればとの思いでペンをとらせていただきます。1年間、よろしくお願いします。
【 第14回 】「障子を開けてみよ!」
「マイルドヤンキー」が若者の一大勢力であるとの報道がされていました。一体、何のことかと聞いていますと、「絆、仲間、家族」という言葉が好きで、家から半径5キロメートルの地元から出たくないといった若者たちの総称だそうです。博報堂の若者研究所リーダーの原田曜平氏の説で、ミニバンの車・ショッピングモール・EXILEが好きで、若者人口の3割余を占めるとのことです。「マイルドヤンキーは昔からいたよ」という方もみえますが、近年の日本人の留学生数の激減などの「内向き傾向」をみるとき、果たしてこれでいいのかという思いを抱きます。
「障子を開けてみよ。外は広いぞ。」
これは、トヨタの創始者である豊田佐吉氏の有名な言葉です。幾多の著書にも著されており、トヨタの原点とも言える精神でしょう。それが受け継がれ、世界一の今日の座を確保しました。障子のある家も少なくなった日本において、「障子を開けてみよ。」の言葉がどれだけ通じるか心配ですが、「窓を開けて外を見る」行為は、グローバル社会の今日、特に、日本において必要な行動だと思います。
日本は極東の島国であるゆえ、歴史上、異民族や外国人の侵入や侵略もほとんど受けていません。したがって、庶民は外の世界をあまり意識しなくても生活できてきました。しかし、TPPや集団的自衛権など今日的問題の渦中にあって、「外の世界」との熾烈な議論なくしては大波を乗り越えることはできません。
世界10か国12市の新城市民と会議をしてきました。前回の稿で紹介しましたように、新城市は世界ニューキャッスル会議を提唱し、日本の新城市をスタートに2年に1回の開催を続けてきました。16年を経た今年は9回目の会議で、チェコのノヴェハラディー(新城)で開催しました。実質7日間の会期で、日本からは9泊11日の長期日程でした。世界の新城から100人余の市民と若者が集まり、市民会議とユース会議に分かれて、「観光やビジネス」「歴史文化遺産のブランド化」「経済開発と青少年の雇用開発」「世界ニューキャッスルでの情報共有」「市民の平等と公平」「若者の起業と資金援助」「SNSを活用したプラットホームプロジェクト」「教育」などについて議論しました。
新城の若者6人も世界のユースとともに若者問題を共有し議論を続けてきました。19歳から28歳の若者たちで、教育界からも初めて青年教師が1人参加しました。そして、世界各国のユースとともに、連日、深夜まで課題について真剣に話し合い、最終日には、その結果を全員がしっかりとプレゼンしていました。マイルドヤンキー気分では、実行しがたいことです。見知らぬ国の見知らぬ人と充分でない英語を駆使しての挑戦です。「障子を開けてみよ。外は広いぞ。」の英訳はいろいろありますが、私は「Open the window and look Outside. It`s a big world waiting for you.」が気に入りました。まさに、窓を開けると、そこにあなたを待つ世界が広がっている、若者には、その体験をしてもらいたいと思います。
「日本酒」など日本の歴史文化の発信者でありたい。今回、日本文化として「歌と踊 炭坑節 おお牧場は緑」「浴衣や陣羽織などの和服」「折り紙」「けん玉」などを用意していきました。なかでも人気を博したのは、「日本酒」と「習字」です。特に酒はそれぞれのお国柄を現します。チェコのビールは「チェコ人の液体のパン」とまで言われるように、本家「バドワイザー」をはじめ安価で実に美味しい。スイスのヌシャテルは「白ワイン」が美味で、どちらも地酒が重宝され、「日本酒」との共通点も多くあります。今年、持参したのは地酒純米吟醸「和」の生と火入れ各4本の計8本です。日本語の「和醸良酒」「和」の意味もアッピールしたところ、世界の皆さんから歓迎され、「カンパイ!」「和!」の声が飛び交いました。習字も、名前を聞いて音に当てはまる良い意味の漢字を毛筆で書いて渡したところ、大人から子供まで市民・参加者に大人気で、用意した200枚の半紙は、じきに無くなってしまいました。その意味で、日頃から、地域の自然・人・歴史文化を学習することは重要です。
英語は「使う」ことで身に付き「外に出る」ことで本物になる。今回も各国とも母国語は異なっていても、共通のコミュニケーションツールは英語でした。闊達な議論のなかに分け入って自分の意見を主張するには、英語力に長じているほうが有利です。小学校の英語活動の教科化や低年齢化が検討されていますが、私は大賛成です。そして、学んだ英語を使わなくては身に付きません。「英語の日」や「英語使用時間帯」や「英単語表示環境整備」などを通して「使う」機会を充実したいものです。また、外国人留学生やフィリピンなどの外国人研修生は、英語が堪能ですので、共に活動する機会を設定して「外に出る」機会を増やしたいものです。
(写真は、今回参加者の市民会議の様子)
(2014年5月19日)