愛される学校づくり研究会

学校広報タイトル

★このコラムは、学校のホームページを中心とした学校広報の考え方について、15年以上学校サイトに関する研究を続けてきた国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の豊福晋平氏がわかりやすく解説します。

【 第6回 】広報体制の形成と維持

全国各地の学校ホームページを取材して改めて思いますが、学校側の運用体制は実に様々です。先生方にとっては、とかくお荷物扱いになりやすいホームページ運用。面倒仕事の押し付け合いにならぬよう、なおかつ、魅力的なコンテンツを途切れずに提供するために、どのような点に気を付けたら良いでしょうか。

担当者向けの技術講習だけでは不十分

教育委員会が企画開催する「学校ホームページ研修」の大半は、各学校の情報担当者対象で、しかも、その内容はもっぱら操作技術を扱うものがほとんどでした。
 学校ホームページが試行され始めた1994年頃は、ホームページサイトを管理運用するために専門的な知識スキルが必要とされたので、素人にとってはこれらが高いハードルとなりました。ひとしきり技術情報を扱うだけでも、多くの時間を費やさざるを得なかったのです。
 その結果、学校ホームページ研修と言えばHTMLやホームページ・ビルダーを扱う技術研修、という定番スタイルが各地に広まったのですが、技術的にホームページが作れる事と、組織的にホームページ運用が出来る事は、実は全く別の課題であるにも関わらず、後者に関してはほとんどケアされてきませんでした。
 昨今はCMS(Content Management System)やブログを活用して簡単に記事更新やサイト管理が出来るようになったのに、あいかわらず学校ホームページの活動が停滞しがちだとすれば、それは学校広報に対する組織的な合意と運用体制の形成が十分でないからだ、と言えます。

学校広報は学校経営課題のひとつ

筆者が教育委員会主催の学校ホームページ・学校広報の研修講義を引き受ける際は、「できれば管理職と情報担当者に同席していただきたい」とお願いしています。何故なら、学校広報は学校教育法(第43条)にも規定されているように、学校経営における比較的上位の課題であり、また、運用初期においては、管理職の意思決定と積極姿勢が重要な意味を持つからです。
 学校だよりや学級通信のように、刊行スタイルがある程度決まっているメディアは別として、未だ十分に学校組織に定着していない学校ホームページの場合は、まず、管理職が方向性や位置付けを明確にして課題意識を教職員間で共有すると共に、日々の運用に積極関与する(具体的には記事投稿する)ことが必要です。

管理職の積極関与がカギ

たとえば、情報担当者個人にホームページ運用を丸投げにすると、周囲からの協力が得られにくくなるので、負担過多で長続きしないうえに(異動されるとパッタリ更新が止まってしまいます)、どうしても記事内容は一教員からの視点に偏りがちになります。 
 実は、更新が日常化している学校ホームページには管理職が関わっていることがほとんどです。
 最もミニマムな形は管理職自身がスポークスマンとしての役割を果たす事ですが、学校としての姿勢や教育への信念といった事柄は、管理職でなければ踏み込んで書き得ない領域と言えるでしょう。何度も述べているように、学校広報の基本は「地味でベタな学校日常」をタイムリーに端的に伝える事ですから、学校だよりの巻頭言のように立派で長い文章である必要はありません(長い文章は読んでもらえないので)。むしろ、日々伝える短い文章の中に教育者としての思いをどれだけにじませるかがポイントといえます。
 外向けの学校広報はもっぱら管理職の仕事(だから一般教職員は関わらなくても良い)と思われないように、この時点で仕込んでおくべきことがいくつかあります。
 1つめは、教職員が自校のホームページを事ある毎に閲覧するきっかけを意図的に作ることです。それぞれの教員が全ては知り得ない様々な出来事や組織的なスローガンを知る手段となりうる事を認識してもらう必要があります。
 2つめは、各教職員の仕事を広く話題として集めては掲載する事です。たとえば、授業者が自分の授業の様子を記事にするのは簡単そうに見えて実はたいへんな事ですが、管理職目線で授業者の工夫点や特徴をまとめて紹介すれば、保護者へのアピールになるだけでなく、教職員にとっても大きな励みになるでしょう。

学校のすがたを立体的に伝える

管理職の率先する学校広報がある程度軌道に乗ったら、次は複数教職員が関わるチーム形成を働きかける段階です。たとえば学校向けCMSは、学校ホームページのチーム運用、迅速な掲載可否決裁が最大の売りですから、教職員に投稿用IDを配布して、持ち回りで書いてもらうような環境を整備します。
 書き手が増えれば一人あたりの負担が減るのは当然ですが、それ以上に多様な立場の書き手が増えることで、学校の様子がより立体的に描かれるようになります。とある小学校では、管理職以外に各学年の担任、栄養士さん、図書司書さん、児童も記事投稿に関わっており、毎日20回以上トップページが更新されますが、運動会のイベントひとつでも事前の準備や、児童会での活動、当日の様子などがそれぞれの視点から描かれるので、一見どこにでもありそうな行事であっても、閲覧者は多面的にかつ詳細に理解することが出来ます。これらは学校側にとっても後から振り返るための資料として活かせるというメリットがあります。

毎日欠かさない活動にする

別の機会で詳しく紹介しますが、この10年ほどは委員会活動やクラブ活動として、児童・生徒が学校公式ブログに記事投稿する「こども学校ブログ活動」が各地で広がり始めています。児童・生徒は初めから記事投稿に見合うだけの作文能力を備えている訳ではありませんから、先生の指導は不可欠なのですが、ある程度段取りと要点がつかめるようになれば、持ち回りで記事を書く活動が定着します。活動期ごとにしっかり引き継ぎがなされるようにすれば上級生が下級生を指導するので、仮に教員側に強力な推進役がいなくなっても、数年は活動が持続するケースが多いようです。
 教職員の持ち回り記事投稿の場合も同様に、毎日欠かさず続ける工夫をすることで持続的な取り組みにしたいものです。

(2014年9月1日)

豊福先生

●豊福 晋平
(とよふく・しんぺい)

国際大学GLOCOM主任研究員・准教授。専門は教育工学・学校教育心理学・学校経営。近年は教育情報化 (学校広報・学校運営支援)、情報社会のデジタルネイティブ・リテラシーに関わる研究に従事。1995年より教育情報サイトi-learn.jpを運用、2003年より全日本小学校ホームページ大賞 (J-KIDS 大賞) の企画および実行委員。