愛される学校づくり研究会

学校広報タイトル

★このコラムは、学校のホームページを中心とした学校広報の考え方について、15年以上学校サイトに関する研究を続けてきた国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の豊福晋平氏がわかりやすく解説します。

【 第4回 】4月中にぜひやっておきたいこと

新学期がスタートして数週間、そろそろ教室も落ち着いてきたところでしょうか。さて、春は何かと気忙しい季節ですが、学校ホームページに関する話題として、ぜひ今月中にやっておきたいことがあります。それは組織情報の更新です。

学校ホームページの情報更新は校務のなかでもダントツで負担感の大きな仕事とされていますが、日々の仕事に忙殺されると面倒臭い更新はとかく後回しにされがちです。進級・入学の大きな行事が終わってほっとする間もなく、大きな行事が続きますから、気付いたら夏休みまで延び延びになっていた、なんて笑えない話も聞きます。

では、実際各校はどのタイミングで年度初めの更新をしているのでしょうか?私が運営するi-learn.jpでは学校ホームページの更新状況を日々チェックしています。

学校広報4_図.jpg

図1は現在登録されている学校約4万件のうち2012年度最初に更新のあった日が4月1日から何日目であったかをまとめたものです(機械的に収集しているデータゆえ、誤差があります)。これによると、10日までに更新している学校は34.8%、半数以上はなんとか4月中には更新していることが分かります。あらためてデータをまとめてみると、学校としては結構健闘していると少し意外に思いましたが、読者のみなさんはどのように感じられたでしょうか。

組織情報は信用情報

私は日頃から「地味でベタな情報発信」を説いているわけですが、4月1発目に行うべき更新はふだんのベタ記事ではなく、組織人事・構成に関わる情報です。公立校の場合は、ほぼ例外なく年度の切り替わりで異動が発生します。数年おきには管理職の交代もあります。これをきちんと公表することがきわめて重要です。

様々な場面で外部とのコミュニケーションが欠かせない企業は、トップ人事の発令と同時に即情報を更新することは、もはや当たり前です。投資家や取引先にとってみれば、トップの交代は組織運営上の大変化ですから、迅速に周知しなければ信用問題に関わります。

企業と比べれば、学校のステークホルダ(利害関係者)は基本的に保護者・地域が中心で、学校だよりで告知すれば済むような範囲であること、企業投資家や取引先のようなシビアな関係がないので、学校ホームページの優先度はかなり低めになってしまいますが、これだけ世の中にインターネットが普及した昨今、一般社会人の目線から考えれば、学校だけ「情報が遅くても仕方ない」と特別扱いしてもらえる訳もありません。こうした細かな配慮を欠けば、いつの間にか学校の評判や信頼を傷つけてしまいます。

具体的に何を変えるのか

組織情報とはいっても、ではいつまでに何をいじれば良いでしょうか?

即日最低限必要なのは、管理職の交代に関わる発令の日付・氏名・異動先です(日付は年もお忘れなく)。ホームページにトップメッセージが掲載されている場合は、併せて新しいものへの差し替えが必要です。

次に重要なのは教職員名簿です。もちろん、公(おおやけ)の組織上配属や分掌が記載されていることがまず重要であって、住所や電話番号等の私生活に関わる事項はまったく不要です。
 名簿の公表には様々議論があることは十分承知していますが、J-KIDS大賞(全日本小学校ホームページ大賞)の選考審査基準でも、しつこく項目掲載し続けてきました。

児童生徒とは違い、教職員の所属情報は公共機関のアカウンタビリティ(説明責任)と組織に対する信頼に関わるもので、保護すべき個人情報とは違うと私は考えています。保護者にとってみれば、緊密なコミュニケーションを取る必要のある相手(先生)の情報が、学校ホームページに載っていないのは意図的隠蔽(何か意図があって載せていない)と同じですから、学校に対する大きなイメージダウンになることは間違いありません。たまに勘違いの営業電話が学校にかかってくるとか(苦笑)、そんな些細な理由で名簿掲載を止めるのは学校側の勝手ですが、むしろ、そのぶん失う組織信頼の方を心配すべきしょうね。

人事以外に更新すべきは、学校統計に関する情報です。こちらは4月中には学校基本調査として報告が完了しているはずですから、あわせて更新しておきましょう。

余裕がない場合は学校だより第1号でもよい

ふだんはブログをメインに更新する学校でも、組織情報までは簡単に更新出来ないケースが多いことでしょう。年度初めに配布する「学校だより」の第1号には、異動情報や教職員名簿を載せるのが通例ですから、忙しくて時間が十分とれない時は、第1号をPDF化して掲載してもとりあえずはOKです。PDF化は印刷したものをスキャンするのではなく、WORDや一太郎の文書ファイルから直接出力した方が良いでしょう。

(2013年4月22日)

豊福先生

●豊福 晋平
(とよふく・しんぺい)

国際大学GLOCOM主任研究員・准教授。専門は教育工学・学校教育心理学・学校経営。近年は教育情報化 (学校広報・学校運営支援)、情報社会のデジタルネイティブ・リテラシーに関わる研究に従事。1995年より教育情報サイトi-learn.jpを運用、2003年より全日本小学校ホームページ大賞 (J-KIDS 大賞) の企画および実行委員。