愛される学校づくり研究会

学校広報タイトル

★このコラムは、学校のホームページを中心とした学校広報の考え方について、15年以上学校サイトに関する研究を続けてきた国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の豊福晋平氏がわかりやすく解説します。

【 第15回 】学校広報と学校ホームページの成長段階 その2

前回は学校広報成長段階の第1段階と第2段階について説明しました。今回はさらに先の話です。日本国内で第3段階以上の実力を持つ事例はまだまだ少数ですが、一つ階段を上った学校にはどんな世界が見えてくるのか是非想像してみていただきたいと思います。

膨大な情報蓄積が宝の山に見えてくる

第2段階と第3段階の学校を隔てるものは、前提として地味でベタな学校日常の記事蓄積を豊富に持つことですが、もう一つ大事な条件は、蓄積された情報に積極的な価値を見出すか否かという事です。

ベタな情報の高頻度な発信体制が整うと、記事一本あたりにかける労力は減るので、どちらかといえば、記事を書き散らすような形になりがちです。ブログやCMS形式で運用するサイトの場合、一度サイトに記事を公開したら一段落で、後は振り返る余裕もなく過去ログの中に埋もらせてしまいます。しかし、これではトップページの新着記事一覧に記事が並んでいる間が賞味期限という事になってしまいます。何だかとてももったいないと思いませんか。

ふつう、過去記事は新着順に延々と記事をさかのぼって見ることになるので面倒臭いのですが、ブログ・CMSに限っていうと、豊富な検索機能を使って情報を意味のある固まりとして引き出すことができます。

たとえば、意味のある固まりとは、年月・期日・期間で(例:2014年)、活動や行事の名称で(運動会・学芸会・よみきかせなど)、所属学年・クラスで、それぞれキーワードタグやカテゴリを設定しておけば、クリック一つで記事を選んで一覧化してくれる訳です。

ひとつの行事に関して、複数の立場の人がいくつも記事を書いていれば、一覧に並ぶ記事はたいへんバラエティに富んだものになるでしょう。年度を超えてずっと記事掲載が行われていれば、今年の行事と昨年の行事はどこが違っただろうと比較することも簡単に出来ます。目にする記事はすべて学校に関わる人々が少しずつ積み上げてきた記録であり、歩みの軌跡であると考えれば、これはとても価値のあるものだと気付くでしょう。このように、かつては書き散らして忘れていたはずの記事が、突如宝の山に見えてきたら第3段階の扉を開けたことになるのです。

第3段階「説得」:学校への愛着とこだわりが表現される

第3段階には2つポイントがあるのですが、どちらにも共通するのは蓄積された記事群が、再編集されて新しい価値を産むことにあります。個々の記事がまとまりを持つときに、まずひとつめとして自然に産み出されるのは、学校への愛着・こだわり・誇りといったものです。

たとえば、学校特長を要覧で端的に表現するのは簡単な事ではありません。抽象的な言葉を並べても、どこかよそ行きでぴったりこないという経験は書き手も読み手もよく感じるところです。しかし、各記事に具体的なエピソードが表現されていれば、あいまいな記憶や抽象表現に頼らなくても、学校の特長を的確に捉えることが出来るようになります。

カテゴリやキーワードタグのみならず、集まった記事から特集を組んでみたり、要約・紹介文章を起こしてみたりすることで、編集を意識したページづくりをすれば訪問者の理解はより深まるでしょう。

学校評価を前提とした戦略的広報

第3段階ふたつめのポイントは学校評価への応用です。

教育関係者はもちろんのこと、学校に関わる保護者であれば、最近は学校評価のためのアンケートが半期や1年に一回の割合で行われていることをご存じでしょう。実は、学校評価は学校広報と深い関わりがあるのです。ごく簡単に説明するなら、「学校の事をよく知らねば、正しく評価することは出来ない」ので、学校実態をきちんと知るためには、信頼の置ける確かな情報源が必要だということになります。

もちろん、アンケート対象になる保護者や地域の人々(学校関係者)に期待されている評価とは、第三者評価のような専門的・監査的・診断的なものではありません。第三者評価は計画文書・状況報告書・財務諸表といったフォーマルな文書を必要とするのですが、これらの文章を読みこなすのは簡単なことではないからです。むしろ、学校関係者に求められる評価とは、半年・1年間に起こった具体的な出来事を振り返ったうえで、学校としての歩みの善し悪しを判断する事だと言えるでしょう。

ただし、膨大な記事群を評価用のエビデンス(証拠)として参照してもらうためには少々工夫が必要です。たとえば、学校の重点目標やアンケート項目にあわせて記事を選択表示させたり、あるいは、まとまった記事に対して説明書きや考察を追加したり、といった一手間を加え、アンケート回答用紙にも参照情報をしっかり明記しておけば良いでしょう。

このように、普段の学校日常を表した膨大な記事をエビデンスとしてログ化し、編集や考察を加える広報のありかたを、第2段階の日常広報と比較して戦略的広報と言います。戦略的広報では、学校組織としての経営姿勢や諸活動に対する意義付け・評価がより明確に問われるのは言うまでもありません。

(2014年11月10日)

豊福先生

●豊福 晋平
(とよふく・しんぺい)

国際大学GLOCOM主任研究員・准教授。専門は教育工学・学校教育心理学・学校経営。近年は教育情報化 (学校広報・学校運営支援)、情報社会のデジタルネイティブ・リテラシーに関わる研究に従事。1995年より教育情報サイトi-learn.jpを運用、2003年より全日本小学校ホームページ大賞 (J-KIDS 大賞) の企画および実行委員。