★新教育コラム「出会いこそが教師をつくる」開始にあたって
だれしも、教師人生に変化をもたらした、心に残る出会い(人、物、出来事など)があるといいます。このコラムでは、その出会いについてリレー方式で語っていただきます。
【第14回】「教師」という素晴らしい特徴を活かそう
〜株式会社Z会 理科課課長 寺西隆行〜
10/26(土)、マーケティング努力でアメリカで成功を収めたヒミオカジマさんの講演会&交流会を、教育関係者中心にお声かけして実施しました(※個人主催)。こちらの内容を、(株)KDDI勤務でICT教育について研究している野本竜哉さんが講演録にまとめてくださいました。
また、当日参加されていた教師が、Facebookで下記のような感想をよせてくれました。
「世界は言葉でできている」という番組がありましたが、まさにそういうことです。
現象から言葉が生まれる、という方向性もありますが、今の世界をどう認識し、自分の中にどう落とし込むかは、むしろ「言葉」という「イメージの牢屋(よくもわるくも)」から逃れることはできないし、それがすなわち「現象」となる、ということもあるわけです。
(中略)
ホテルの食材偽装問題に関しても、素材が嘘っぱちだらけであっても、そんなことは、食べている瞬間、あるいはその後も残るほのかな幸福感とは実は無縁だったということです。
なぜならばそれは、「高級ホテルの素晴らしい食事」という言葉を食べていたから。
でも、その言葉が「高級の皮をかぶった偽物」とわかったら、食べた言葉が変容してしまうわけです。
確かに、「世界は言葉でできている」のです。
偽装ホテルを弁護するものではありませんが、「言葉の力」はすごいものです。
教育者として、それを悪用するのではなく、その力の強大さを感じながらも、うまく使いこなさなければなりません。
「有名予備校講師の超有名講義」という言葉を食べて満足している高校生にも、素材本来の美味しさを伝えていくことも我々高校教員の一つの仕事なのでしょう。
「出会いこそが教師をつくる」のコラム第12回で「異質に触れる機会から気づきを。」というタイトルのコラムを書かせていただきましたが、上のコメントを寄せてくださった教師は、まさに「経営」や「マーケティング」という異質の世界の方に触れあう機会から、自らの教師の力量を伸ばすキッカケを得たといえると思います。
また、同じ第12回のコラム中に「(異質に触れるため)知人から紹介された機会を活かす」というヒントを書きましたが、この教師は“寺西が紹介するんだから行ってみようかな”という機会を見事に活かしてくださいました。もちろん僕にとっても嬉しいことです。
ここまで読んで、“自分はどうすれば…”と(漠然と)感じられた方もいらっしゃると思います。「誰かを紹介してくれる知人って、どうやって見つけるの?」と。
結論から先に申し上げます。「教師という素晴らしい特徴を活かしてください。」と。
まず僕の例から申し上げますと、特徴は
- 教育をテーマにする会社に勤めている。
- 難関校・難関大学の受験指導に長けた会社に勤めている。
- 幼児から大学生まで一貫した教育商材を扱った会社に勤めている。
- 数学教材の編集業務を7年間担当した。
- Webの広告宣伝業務を7年間担当した。
- 若年者に対する、ソーシャルメディア(facebookやLINEなど)の教育啓発活動に従事した経験あり。
などです。
「あれ?性格や能力的な強みが一つもない…」「全部職業的な特徴ばかり…」そう感じられたでしょうか?
それが特徴でいいんです。人間関係の「(異質な)つながり」を増やす時には、これまで従事した職業的な経験が、実は一番強みになるんです。僕の場合は、上記のような職業経験をネット上で開示することで、ほんとにびっくりするくらい有名な経営者から、「今の受験ってどうなってるんですか?」という漠然とした問いかけがあり、交流が始まること、何度も経験していますから。
皆さんのような教師であれば
- 担当している対象(小学生・中学生…)の教育について詳しい。
- 担当している教科について詳しい。
- 学校経営、学級経営の実情について詳しい。
- 教師の1日、1週間の時間の使い方について詳しい。
- 教師同士の親交について詳しい。
すべてが皆さんの特徴なんです。皆さんにとって「当たり前」のことであっても、皆さんとは異質な方から見れば、そんなことは誰も知らない上、誰もが興味を持っていることなんです。なぜなら、自ら「教育」を受けた体験は誰しもが持っていますし、多くの大人の立場である「保護者」しても関心を持ちやすい領域ですから。
そんな特徴を、ブログでちょこっと書いてみてください。Facebookでちょっとだけ自己開示してみてください。ネットではちょっと、というのであれば、教師仲間のつてを辿ってイベントに参加してみてください。それも難しければ是非「愛される学校づくり研究会」に入り、メンバーとの交流を深めましょう(笑)。貴方にしかない特徴にきっと気づき、知人の輪を広めてくれますから。
全くの余談ですが、大学時代に合コンしていたとき(笑)、ダントツで共通の話題になりやすく、場が温まったのが、こんな会話なんです。
「田中正造って小学時代にやった?」
「あーあの髭のおじいちゃん!ウケる〜」
「そうそう、スイミーなんてあるでしょ?」
「あったあった!(バンバン!と手を叩く相手)」
「“僕が目になろう!”(キリッ)」
「懐かし〜。」
皆さんは、普段からの職業体験で、異質な方の興味関心を惹きやすい、とても貴重な財産を取り扱っているんです。
蛇足ながら、普段の体験を愚痴っぽく語るのは避けましょうね。守秘義務に抵触しない「事実」をありのまま話す、話し方は時折笑顔交じりに、というのがポイントだと思います。
最後に。異質に触れ、相手から興味をもたれ、いろいろな問いを投げかけられることは、自らの無知に触れ、成長するキッカケになります。僕は今、小学生向けの教材の責任者ですが、所属している企業の立ち位置からすると、「今の大学受験を聞かれてもわかりません…。」とは言えません。だから普段から教育産業人のプロとして勉強し続けなければいけませんし、質問に十分に答えられない経験は新たな知識を得て視野を広げるキッカケにつながるわけです。
たとえみなさんが「小学1年生の担任」であっても、「イマドキの中学受験ってどんな感じなんでしょうか?」なんて質問に、簡潔に答えられなきゃいけません。それがプロの教師です。そして気負う必要はありません。「いっときより中学受験、中学受験と騒がれなくなりましたよ」なんて軽く答え、「へーそうなんですか」と、相手の「納得」を引き出せれば、それでいいんですから。そして「十分調べてなかったな…」とそのとき思えば、自宅に戻り、インターネットでささっと調べ、知らなかった知識を補い、もし(余りにも)間違った答えをしていたならば、その方にさっとメールで一本ご連絡。それだけで済むんですから。
(2013年11月11日)